日本サッカーにとって2021年も重要な1年になる。

 U-24代表は今夏に延期された東京オリンピックが控えており、A代表は3月からカタールワールドカップのアジア2次予選が再開する。無事に突破できれば9月からアジア最終予選が始まるというスケジュールだ。

 

 猛威を振るう新型コロナウイルスの感染拡大下にあってはこの先が読めない状況ではあるものの、準備を進めておかなければならない。

 

 直近で言えばアジア2次予選は3月25日、日産スタジアムでミャンマー代表と、続いて30日にアウェーでモンゴル代表と戦う。この期間、U-24代表は国内で強化試合を行なうことになっている。

 

 A代表は公式戦のため海外クラブに対しても選手招集の強制力を行使できるとはいえ、日本政府は水際対策を強化している。スポーツ選手の自主隔離期間などまだ見えてこない部分はあるものの、欧州に戻る際もルールに従わなければならず、選手に大きな負担を強いる可能性がある。所属クラブでの出場機会に影響することは避けたいところだ。

 

 ミャンマー戦、モンゴル戦まであと2カ月しかない。事態の好転を願ってギリギリまで判断を待つ一方で、森保一監督はオール国内組で臨むパターンをコーチと協議しているようだ。2次予選は現在4連勝中でトップを走っていて、油断は禁物と言えども余裕はある。欧州組にこだわるよりは、国内組にチャンスを与える2連戦でもいいのではないかと個人的には思う。

 

 モンゴルから帰国後の自主隔離期間を考慮すれば、同じクラブから何人も招集するのは難しい。案をまとめたうえでJリーグと調整をしていかなければならない。オール国内組で行くかどうか早めに決断したほうがいろいろと対処しやすいように感じている。

 

 2020年のA代表はオール海外組で10、11月と欧州で活動しているが、オール国内組で臨むとなると2019年12月の東アジアE-1選手権以来となる。そのときは東京五輪世代を含めた構成であったが、もし3月の2連戦をオール国内組で戦うとなると東京五輪世代に対してはU-24代表の強化試合とメンバーを振り分けていかなければならない。比重が大きいのはアジア2次予選。招集の制限はおそらくあるにせよ、そうなれば年齢関係なく森保監督が考える国内最強のメンバーをA代表で編成すると考えていい。

 

 海外組ばかりに目が行きがちだが、Jリーグの選手たちもこれまでA代表に名を連ねてきたメンバーが多い。先のロシアワールドカップのメンバーである昌子源(ガンバ大阪)、山口蛍(ヴィッセル神戸)、大島僚太(川崎フロンターレ)ら、さらには昨シーズン、ケガなく好調を維持した清武弘嗣(セレッソ大阪)、ポルトガル1部ポルティモネンセから清水エスパルスに復帰した森保ジャパンの正GKを務める権田修一もいる。森保監督がサンフレッチェ広島で3度リーグ制覇に導いた中心選手、青山敏弘も昨年はケガに泣かされることもなくハイパフォーマンスを見せた。

 

東京五輪世代の国内組に目を移すと、成長著しい選手が目立つ。ルーキーイヤーで大ブレイクを果たし、フロンターレの独走優勝に貢献した三笘薫やリーグ後半戦に入ってゴールを量産した上田綺世(鹿島アントラーズ)、ルヴァンカップ決勝でも活躍した渡辺剛(FC東京)らがいる。

 

 ただオール国内組で編成する場合、けん引役となるようなリーダー的な存在がほしいところ。

 その役割で言えば、ジーコジャパン時代の小笠原満男(現在は鹿島アントラーズのアカデミーアドバイザー)を思い出す。代表でキャプテンマークを巻いてきたわけではないが、海外組に対する対抗心がチームメイトの発奮を呼び込んでいた。

 

 筆者がスポーツ新聞社の記者時代、2006年のドイツワールドカップを前にインタビューしたことがある。小笠原は当時27歳。ジーコジャパンは海外組が招集されると優先して起用される印象があったものの、国内組の存在感を示すことで風穴を開けた。その中心にいたのが小笠原だった。

「欧州から(選手が)来れば、出られなくなる。世間から見たらそういった選手たちが来たら、見たいというのは分かります。(試合に)出る出ないはジーコが決めることだし、悔しさはあるけど、そこから頑張ればという気持ちがあった。何かしなきゃいけないという思いがあって、グラウンドで結果を出すのはもちろんだけど、合宿でも走りひとつ、シュートひとつでも大事にしようと思ってやった。何か自分でアクションを起こさないと変えられないというのがあったんで。出た時間が少しでも、結果を出していくしかなかった。その積み重ねで、状況が少しずつ変わっていった」

 

 ターニングポイントとなったのが2005年2月、ドイツワールドカップアジア最終予選、初戦の北朝鮮戦だった。海外から呼び戻した中村俊輔、高原直泰が控えに回り、国内組の11人がスタメンに名を連ねたのだ。小笠原はこの試合で、先制ゴールを挙げている。

 ドイツワールドカップでは1勝もできずにグループリーグ敗退に終わったものの、国内組の発奮がジーコジャパンの競争力を高め、チーム力を高めたのは言うまでもない。

 

 今や国内組は少数派に転じ、リーダーも不在だ。

 しかし見渡してみれば候補者はいる。昌子、山口、清武、そして権田あたりは経験値も十分に積んでおり、チームを引っ張っていくにふさわしい存在だと言えるのではないだろうか。

 

 オール国内組で臨む2連戦となれば、それはそれで楽しみが広がる。A代表の底上げを図る意味でも、活気をもたらす意味でも。


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