さる22日(日本時間23日)に86歳で世を去ったハンク・アーロンは、 23シーズンに及ぶメMLBでのキャリアのうち21シーズンをブレーブス(ミルウォーキーとアトランタ)でプレーしている。MLB歴代2位の通算755本塁打のうち733本がブレーブス時代のもの。その中にはベーブ・ルースが保持していた714本のMLB記録に並んだもの、抜き去ったものも含まれている。

 

 ニックネームである“ハ(ン)マー”の由来は“ハマリング・ハンク(ぶったたきのハンク)からきている。ドナルド・デイビッドソンという球団職員が名付け親で、自著『ハンク・アーロン自伝』(佐山和夫訳・講談社)によると<ニューヨークのある新聞は、「ぶったたきのハンクがバルコニーを突き抜けるような当たりを放った」と報じた>ことが契機になったという。

 

 25日付けの本紙に、気になるニュースが紹介されていた。<「ブレーブス」のチーム名をアーロン氏の愛称ハンマーにちなんだ「ハンマーズ」に変更するようファンがSNSで呼び掛けているとAP通信が報じた>

 

 どんな内容なのか、と調べてみたら、以下のようなものが見つかった。「これは本当に偉大なアイデアだ」「ブレーブスは絶対にハンマーズに改称すべき」「最高の選手への偉大なオマージュ」等々。

 

 近年、米国のプロスポーツではチーム名の改名が相次いでいる。NFLのワシントン・レッドスキンズは「赤い肌は先住民(インディアン)差別だ」との批判を受け、昨年7月、チーム名を変更すると発表した。

 

 ブレーブスも「インディアンの勇者」に由来しており、チームロゴには斧がデザインされている。ファンが重低音の声を響かせながら、手斧を上下に振り下ろす「トマホーク・チョップ」は迫力満点で、観戦名物のひとつになっている。

 

 それを「野蛮な応援」で「差別を助長する」と言われれば、部外者として返答に窮するが、チーム名も含めてそれが文化として根付いているのであれば、再考の余地もあろうかと思う。

 

 自伝によると、アーロンの父親は息子の功績を顕彰しようと生まれ故郷であるアラバマ州モービルの議会が黒人街にハンクの名を付けようとした際、<黒人地区だけではなくて、モービル市全体の意思を表す方法が取られるべき>と考え、反対したという。ブレーブスかハンマーズか。泉下のアーロンは何を想う……。

 

<この原稿は21年1月27日付『スポーツニッポン』に掲載されたものを一部再構成しました>


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