キャンプインから半月がすぎました。23日までは今治でキャンプを行っています。今年の愛媛のテーマは“走る”。走塁技術の向上をチームの課題として掲げています。

 昨年、愛媛は前後期とも2位に終わりました。優勝した香川との差は何だったのか。それが走塁の差だったことは間違いありません。昨季、愛媛の盗塁数はリーグワーストの74。対する香川は約2.5倍の171盗塁を決めました。盗塁のみならず、相手のスキを突いて次の塁を奪う姿勢や、その判断の部分で香川には遅れをとりました。

 ベンチからは「(盗塁)行ける時は行け」と常に指示を出していたにもかかわらず、選手たちが走れなかったのは技術と勇気がなかったから。3年間で打つ、投げる、捕るといった基本はかなりレベルアップしました。しかし、走塁面ではまだまだ改善の余地があります。

 そこで、まず今シーズンは陸上の指導者をお招きして、選手たちのランニングフォームを見直しました。この今治キャンプでは大洋、巨人で活躍した屋鋪要さんに臨時コーチをお願いします。盗塁王3回の実績を持つ足のスペシャリストから、ぜひ走りのコツを盗んでほしいと思っています。

 あとは積極的にチャレンジするのみ。失敗を恐れず、今年はどんどん選手を動かしていくつもりです。もちろん単に試合の中だけでなく、攻守交代時にも全力疾走でスピードあふれる姿をファンのみなさんにお見せすることを誓います。

 新チームは現時点で昨年からの残留組が9名、新入団選手が11名。開幕までに、一緒に練習を行っている11名の育成選手の中から、さらに5名程度を登録する予定です。あえて最初の登録メンバーを絞ったのはプロとしての厳しさを出したかったから。アイランドリーグに入って満足しているような選手は要りません。現在、登録メンバーに入っている選手でも、内容次第では育成扱いに“降格”させることも考えています。愛媛で野球をしているのは何のためなのか。各自で自問自答しながら、1日1日、全力でプレーしてほしいのです。

 今シーズンは福岡レッドワーブラーズ、長崎セインツの2球団が増え、九州遠征が加わります。九州には八幡浜からフェリーを使うか、しまなみ街道から広島、山口を経由して陸路で行くか。いずれにしても長時間移動は避けられません。未経験のことが増えるだけに、何が起こるかわからないシーズンになるでしょう。

 戦力的にはディフェンディングチャンピオンの香川が安定しているとはいえ、扇の要である堂上隼人のレッドソックス行きが決まれば、その穴は大きいはずです。チームメイトの浦川大輔、荒木康一が移籍した福岡などの九州2チームもしっかり補強をしています。愛媛は新人が多いだけに、チームとして急成長を遂げるか、逆に歯車が噛み合わなくなるか。シーズンが始まってみなくてはわからない面があることは事実です。

 それでも移動を考えれば、四国に来る回数の多い九州2球団のほうが大変でしょう。もちろん1年目のチームに負けるわけにはいかないという意地もこちらにはあります。最終的には、いかにこのキャンプで体力をつけ、1年間戦える準備を整えるかがポイントになるのではないでしょうか。

 梶本達哉がオリックスに育成入団し、選手たちには身近な目標ができました。1年間、一緒にプレーしていた残留組は特に目の色が変わっています。愛媛は1年目が4位、2年目3位、3年目2位――。残るは頂点しかありません。優勝、そして秋のドラフト指名。僕自身も監督としての進退をかける意気込みで1年間、戦い抜きます。愛媛のみなさん、今シーズンもご声援よろしくお願いします。

沖泰司(おき・やすし)プロフィール>: 愛媛マンダリンパイレーツ監督
 1961年1月5日、松山市出身。松山商、明治大を経て社会人のスリーボンドで頭角をあらわし、チームの主軸を務める。86年ドラフト4位で内野手として日本ハムファイターズに入団。90年の退団までに投手以外のポジションは全てこなし、ユーティリティプレーヤーとして活躍した。アイランドリーグでは初年度に愛媛マンダリンパイレーツのコーチを務め、2年目からは監督に就任。07年シーズンは前後期ともチームを2位に押し上げた。



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