今回の白球徒然・HAKUJUベースボールスペースは、前回に引き続いてBCリーグ石川ミリオンスターズ(MS)の田口竜二監督の登場です。田口監督が2018年1月まで「プロ野球選手のセカンドキャリア」や「現役時代の思い出」などをテーマにして当コラムで連載記事を執筆していたのを読者の皆さんならご存知でしょう。昨季から白寿生科学研究所から出向という形で石川MSの指揮官の職に就いた田口監督。1年目の昨季を振り返りつつ、今季のビジョンについて伺いました。

 

 「駒にはなるな」

 さて、今回はまず石川MSの昨季、20年シーズンについてお話しましょう。開幕が遅れたこともあり、開幕当初はなかなか波に乗れませんでした。しかしシーズン後半はなかなかチームとして強さを発揮でき、8月、9月には5連勝も記録しました。

 

 投手陣では近藤俊太郎が先発の軸として活躍し、14試合に投げ6勝3敗。その他の先発陣も踏ん張ってくれましたし、さらにゲーム終盤はリリーフの龍谷晃議(28試合・1勝7セーブ・防御率2.43)がよく抑えてくれました。攻撃陣もチーム打率こそ2割5分9厘(リーグ10位)と高くはないものの、盗塁はリーグ2位の71個を記録するなど足を絡めた攻撃を見せるなど、シーズンが進むにつれて良いチームになりましたね。

 

 20年はコロナの影響でイレギュラーなシーズンだったので、今季が本当の監督としてのスタートだと思っています。新しく入った選手にも楽しみな存在が多くいます。

 

 注目選手をピックアップすれば、投手ではまず平成国際大出身の清水陽介。彼は身長186センチの右投げで、力のあるストレートが持ち味です。高卒では高田竜星。地元石川の遊学館高出身の右腕で、高校時代からNPB球団も注目していた存在です。昨秋のドラフトで指名されなかったことで、1年目からNPBドラフトの対象になるBCリーグの門を叩きました。

 

 新人捕手の植幸輔(高野山・和歌山)も楽しみです。彼は3年計画でNBPにいけるようにビジョンを立てています。捕手というポジションは経験が必要ですが、身長185センチの大型キャッチャー。ビジョンを明確に立て、ぜひNPBに進んでもらいたいですね。

 

 あと2年目の内野手・川崎俊哲もセンスがあり、NPBに近い選手だと思っています。昨季は打率2割8分5厘とよく打ち、BCリーグの野手の中では結構、レベルが高いと思っています。昨季はセカンドを守っていましたが、今季はショートで起用しようと考えています。1番ショートとして目立って、NPBスカウトの目に止まってほしいものです。

 

 今季から元オリックスの後藤光尊コーチが入ったので、後藤コーチには川崎をぜひ鍛えて、本気にさせてNPBに送り込んでもらいたい。後藤コーチについては、彼と実際に面談した際に選手に押し付けるのではなく、会話をして考えながらコーチしてくれることが確認できたので入閣してもらいました。

 

 先にあげた選手の他にもNPBへ行けそうな選手がいます。でも、他人から言われてやるようでは、上へは進めません。本人がビジョンを明確にし、自分から考え、自分で行動する。それがNPBへつながることになります。私は今季が2年契約の最終年ですから、選手にそういう心構えもみっちりと教え、身につけてほしいと思っています。

 

 独立リーグは社会に出てからの訓練でもあると私は考えています。自分たちで考えてやることが何よりも大切です、努力すればその分だけ結果につながります。「この子は社会に出ても大丈夫だな」と感じる選手と、そうじゃない選手では練習やプレーを見ていても差があるものです。

 

 現在、再び緊急事態宣言が出ている状況で、果たして開幕を無事に迎えられるのか気がかりですが、石川MSの選手には練習や必要なとき以外には外に出るなと言ってあります。無事に4月の開幕を迎えたいものですね。

 

 昨季のような変則日程にはなりませんが、それでも他地区との対戦はないようです。信濃グランセローズ、新潟アルビレックスBCといった他地区の強豪と対戦したかったんですが残念です。やはり強いチームと戦うのは指揮官としてもわくわくしますからね。

 

 今季の野球ですか? 昨季は投手については育てる意味もあり「あともう1イニング」と引っ張ることが多かったのですが、今季は早め早めの継投、ときには非情な投手交代も辞さないつもりです。

 

 攻撃面では昨季同様に「チャレンジ」です。選手にはいつも「シチュエーションを考えて自分たちでプレーしろ」と言ってあります。走るも良し、バントも良し、右打ちも良し、すべて選手が考えて実行してもらいたい。「監督やコーチの駒ではダメ」だと思っていますし、自分で考え、そしてチャレンジしないとグラウンドでは目立てません。目立たないとNPBスカウトの目にも止まらない。ミスに関しては怒らないので、どんどん今季も積極的なプレーにチャレンジしてもらいたいですね。

 

 石川のファンの皆さんもチームが勝てば嬉しいし、さらに石川MSの選手がNPB入りというニュースがあればさらに盛り上がります。優勝を目指すのはもちろん、秋のNPBドラフトで1人でも多くの選手の名前が呼ばれるように。選手がどう成長していくのか、監督の私はもちろんファンの皆さんもぜひ見ていてください。石川MSへの応援、よろしくお願いいたします。

 

1600314taguchi田口竜二(たぐち・りゅうじ)
1967年1月8日、広島県廿日市市出身。
1984年に都城高校(宮崎)のエースとして春夏甲子園出場。春はベスト4、夏はベスト16。ドラフト会議で南海ホークスから1位指名され、1985年に入団し、2005年退団。現在、株式会社白寿生科学研究所人材開拓グループ長としてセカンドキャリア支援を行なっている。20年、BCリーグの石川ミリオンスターズの監督に就任。21年も引き続き同チームで指揮を執る。

 

 

(取材・まとめ/SC編集部・西崎)


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