レッズ再建のキーマンは阿部勇樹
2021年シーズン開幕前に、浦和レッズが揺れている。
長年チームを引っ張ってきた柏木陽介がキャンプ中の規律違反によってチームを退団することになり、昨シーズンのチーム得点王レオナルドは中国1部・山東泰山への移籍が決定的だという。
徳島ヴォルティスを攻撃的なチームに仕立て上げてJ1に引き上げたスペイン人のリカルド・ロドリゲス監督を新たに迎え、金子大毅、明本考浩、小泉佳穂ら有望な若手が加わった一方で、中心的な存在になっていた橋岡大樹がベルギー1部シント・トロイデンにレンタル移籍。青木拓矢、長澤和輝ら実力者も離れた。チームが変換期にあるなか、ここに来て10番とエースが同時に抜けるダメージは決して小さなものではないだろう。
だがレッズには頼れる男がいる。39歳の阿部勇樹だ。
今季、4シーズンぶりにチームキャプテンに復帰した。キャプテンにはこれからのレッズを引っ張る選手がふさわしいとの考えもあるだろうが、ターニングポイントのシーズンになるゆえに阿部の力が必要とされたのだ。
「チームが良いときはそんなに心配する必要がない。逆にチーム状況やスタジアムの雰囲気が良くないときには、(自分が)出ていかなきゃいけない。良くないことがない限りは、あんまり仕事はないんです(笑)」
4年前、沖縄キャンプでインタビューをしたことがある。キャプテンの仕事について尋ねた際に、彼はそう語っていた。
チームが良いときはそのままで、良くないときは率先して出ていく。
彼の言葉に、あのシーンが自然と思い起こされた。
2015年シーズン、公式戦で3連敗を喫してサポーターからブーイングを受けると、彼は「ひとつ勝とう!一緒に戦おう」と声を張り上げて理解を求めようとした。目を真っ赤にして訴えていく彼の叫びが、レッズを取り巻くすべての人たちをひとつにした。
彼は言葉を続けた。
「チームのために戦わなきゃいけないし、そうなるように持っていくようにしなきゃいけない。先頭に立って引っ張るか、後方にいてはぐれないように支えるかどちらなのかと言えば僕は後者のタイプだし、それが合っている。先頭に立って引っ張っていこうとしてくれている選手は何人かいますからね。
誰もが試合に出たいと思っているなかで、最初に出るのは11人だし、ベンチメンバーを含めて18人しかいない。チームがひとつになって勝っていかないと、目指すものに対してみんなで向かうことができない。だからその雰囲気も気をつけて見ていかなきゃいけないというのはあります。誰が元気ないかっていうのは毎日顔を合わせていれば結構分かったりしますから」
後方からチームを眺め、ひとつになるために束ねていく。それはピッチにおける彼の役割とも似ているのかもしれない。
疲れを知らないタフガイ。阿部にはそんなイメージがある。
J1連続フル出場139試合は、フィールドプレーヤーでは中澤佑二に次ぐ2位。ジェフユナイテッド千葉時代、イビチャ・オシム監督のもとオールコートでの2対2などハードなトレーニングを日々こなすなかで、頑丈なフィジカルとメンタルを手にした。
近年は出場数が徐々に減っていき、昨季はプロ入り後、自身最少となるリーグ戦3試合の出場にとどまっている。だがロドリゲス監督は徳島時代、若手の芽を伸ばすだけでなくベテランを重用してきた実績がある。戦術理解度や適応能力は誰もが知るところ。その意味では阿部にもチャンスはあると言えよう。
開幕戦は2月27日、ホームの埼玉スタジアムでFC東京を迎える。
変換期にあるレッズが“ロドリゲススタイル”を身につけるにはある程度、時間も必要になってくるだろう。大事なことは指揮官を信じ、ひとつになって進むことだ。阿部を中心にまとまっていくことがレッズ再建のカギとなるに違いない。