2月26日の金曜日に川崎フロンターレ対横浜F・マリノス戦を皮切りに2021年のJリーグがスタートしました。本格的には27日、28日からJリーグが始まります。僕が今季、注目しているのは鹿島アントラーズ、名古屋グランパス、FC東京の3クラブです。

 

 アントラーズはアントニオ・ザーゴ監督が就任2年目を迎えました。昨季後半からかつてのアントラーズの良さとザーゴが表現したいサッカーがうまくミックスされました。どちらかと言えば、選手がザーゴ監督の戦術を理解したというより、ザーゴ監督が以前のアントラーズの良さをよく理解し、うまく織り交ぜて印象があります。ジーコテクニカルディレクターとも話し合いを重ねたようですから。今年は移籍による大きな戦力ダウンもありません。開幕から波に乗って欲しいですね。

 

 選手個人で言えばFW上田綺世は大注目です。得点王を狙えるくらいの能力があると思います。上田は近い将来、日本代表に定着する実力もあります。アントラーズに残り続けて頑張って欲しいですが、海外移籍も夢ではないポテンシャルを秘めています。また、GK沖悠哉にも注目です。昨季、レギュラーを掴み、経験を積みました。実は彼のお父さんとは同級生で住友金属同期入社なんです(笑)。彼の両親はバレーボールをやっていたこともあるのでしょうか。沖はボールの落下点の読みや予測が速い。この素質は両親から受け継いだものなのかなぁ、なんて思いながら彼のプレーを見ていますよ。

 

 名古屋は補強が目立ちましたね。代表経験者で言えば浦和レッズからMF長澤和輝、川崎フロンターレからMF齋藤学、セレッソ大阪からFW柿谷曜一朗を獲得しました。マッシモ・フィッカデンティ監督の戦術をどれだけ理解できるかで、ひょっとしたら優勝も見えてくるのでは? と思っています。昨シーズン、リーグ最少失点(28失点)を記録していますから、今季はどれだけ得点を上乗せできるかにかかっている。補強もその意図が見えますね。特に、柿谷には2年連続オファーを出していたほどです。柿谷としてもこれは嬉しいでしょう。望まれての移籍ですし、環境も変わり、彼の生き生きとしたプレーがJリーグに華を添えてくれるでしょう。

 

 FC東京は長谷川健太監督のもと、堅実なチーム作りで昨季はルヴァンカップを制しました。彼がFC東京で指揮を執るようになり、タイトルを獲れたのは大きな自信となったはずです。球際を激しく戦うのが長谷川監督のスタイルです。浦和からボランチの青木拓矢を引き抜けたのは大きい。長谷川監督が勝つための方程式をクラブに経験させ、選手たちも自信を深めているはず。ガンバ大阪時代に多くのタイトルを獲った長谷川監督についていこうと思うでしょう。

 

 この3つの中で優勝候補は? と問われるとアントラーズを推します。22試合終了あたりまでにリーグの中でも頭ひとつ抜けた順位につけていないと、優勝は難しいかな……。それくらい今の川崎Fは強いですね。鬼木達監督ばかりに良い思いをさせないように、アントラーズをはじめ他クラブには頑張って欲しいものです。

 

●大野俊三(おおの・しゅんぞう)

<PROFILE> 元プロサッカー選手。1965年3月29日生まれ、千葉県船橋市出身。1983年に市立習志野高校を卒業後、住友金属工業に入社。1992年鹿島アントラーズ設立とともにプロ契約を結び、屈強のディフェンダーとして初期のアントラーズ黄金時代を支えた。京都パープルサンガに移籍したのち96年末に現役引退。その後の2年間を同クラブの指導スタッフ、普及スタッフとして過ごす。現在、鹿島ハイツスポーツプラザの総支配人としてソフト、ハード両面でのスポーツ拠点作りに励む傍ら、サッカー教室やTV解説等で多忙な日々を過ごしている。93年Jリーグベストイレブン、元日本代表。

*ZAGUEIRO(ザゲイロ)…ポルトガル語でディフェンダーの意。このコラムでは現役時代、センターバックとして最終ラインに強固な壁を作った大野氏が独自の視点でサッカー界の森羅万象について語ります。


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