実業団チームの日本一を決める「第22回テニス日本リーグ」の予選リーグが2007年12月6日〜9日(横浜国際プール)および2008年1月18日〜20日(荏原湘南スポーツセンター)で開催された。2年ぶりの決勝トーナメント進出を目指した伊予銀行男子テニス部だったが、惜しくも4位にとどまり、あと一歩のところで目標達成には及ばなかった。
 しかし、選手たちは精一杯戦い、実力を出し切った。次のシーズンに向けて得られたものもあっただろう。果たして、伊予銀行にとってどのような大会となったのか。大会期間中、選手を鼓舞し、支え続けた横井晃一監督に訊いた。
(写真:100%の力を出し切った伊予銀行男子テニス部)

「このままでは先(決勝トーナメント)は見えないぞ!」
 初日の試合後、横井監督から選手たちに檄が飛んだ。その日対戦した三井住友海上にはシングルス2本、ダブルス1本の3試合全て伊予銀行が勝ち、3−0で快勝していた。にもかかわらず、なぜ厳しい言葉を選手たちにかけたのだろうか。その理由を監督はこう語った。

「確かに3本とも勝つことができましたが、なんだかチームが一つにまとまっていないような感じを受けたんです。まだ初戦で本番はこれからという状況でしたから、『この結果に満足するな』と気を引き締めさせました」

(写真:植木選手の笑顔が好調さを物語っていた)
 翌日、その効果が早速表れた。
「いよぎん、先にリード!」
「ここで挽回しましょう!」
 試合が始まるとコート外の選手たちの気合いの入った声が次々と飛び交う。本気の戦闘モードに入った証だ。前日とは違う選手たちを目の当たりにした横井監督も「これならいける」と手応えを感じたという。

 試合も1本目のシングルス戦でキャプテンの日下部聡選手が逆転負けを喫したものの、植木竜太郎選手、そしてダブルスの湯地和愛、萩森友寛ペアがストレート勝ち。2−1でこの試合も奪い、2連勝を果たした。

 チームはますます勢いに乗り、翌日の鹿児島銀行戦は3本ともストレート勝ちでの快勝。負けなしで第1ステージの最終戦を迎えた。相手はプロ3人を率いるソニー。前々回大会では初優勝している強豪だ。

 結果はシングルス、ダブルス全て1セットも奪うことができず、3−0での完敗だった。しかし、新人の植木選手はプロの増田健太郎選手を相手に、1セット目はタイブレークにまでもちこむ接戦を演じ、大健闘を見せた。

「植木は試合になるとガッツを前面に出して戦うタイプで、勢いに乗るともう止まりません。それでもプロ相手にここまでやるとは、正直私たちも驚きました。もちろん、素質はいいものをもっています。それに加えてまだ1年目ですから、怖いもの知らずだったことが幸いしたのかもしれませんね」(横井監督)

 全力を尽くした選手に監督も納得

 植木選手の好調さは第2ステージに入っても続いた。第2ステージの初日、優勝候補の北日本物産に負けた伊予銀行は、2日目にイカイと対戦した。この試合に勝たなければ、同行の決勝トーナメント進出の可能性が消えるという大事な一戦だった。
 前日のミーティングでは横井監督から「壊れてもいいくらいの気持ちで戦え!」と檄が飛ばされた。
(写真:コート内外でチームを引っ張った日下部キャプテン)

 まずは好調の植木選手がシングルス戦に挑み、プロの久松亮太選手に6−4、6−2とストレート勝ちを収めた。続いて日下部選手も第1セットを6−3で奪い、伊予銀行勝利まであと1セットとなった。しかし、日下部選手は第2セットを1−6で奪われると、第3セットも3−6で落とし、逆転負けを喫した。

 結局、最後のダブルス戦に敗れた伊予銀行は2年ぶりの決勝トーナメント進出を果たすことはできなかった。最終戦となったリコー戦に2−1で競り勝った同行は前回同様4位となった。目標はあくまでも決勝トーナメント進出だった。だから結果に満足することはできない。しかし、横井監督の声には清々しさが聞いて取れた。

(写真:息の合ったプレーを見せた湯地・萩森ペア)
「今回、我々が負けた3チームはどれもプロ選手を中心とした強豪です。ランキングを見ても一目瞭然ですが、個人では勝てない相手ばかりです。でも、チーム力で戦う団体戦では私たちにも十分勝機はあるんです。
 プロは確かに強い。でも、我々は毎日の練習で顔を合わせ、お互いのいい所も悪い所も知り尽くしている。職場とテニスを両立させなければいけない苦労も分かり合える。だからチーム力なら我々は絶対に負けていません。大会前、選手たちには何度もそう言いました。だから彼らも強い気持ちで臨んだと思います。
 今回は予選リーグ4位という結果に終わりましたが、選手たちはみんな全力を尽くしました。今もてる力を100%出し切りました。もちろん結果に満足はしていませんが、選手たちの戦いぶりには納得しているんです」

 さて、4月からは新しく小川冬樹(神戸学院大)選手が加入することが決定している。小川選手は昨年9月に行なわれた全日本学生テニス選手権大会ではシングルスでベスト8に輝いた実力者だ。当然、彼が加入することで内部での競争が激しくなる。選手たち、とりわけ新人の植木選手にとっては後輩ができるという意味でも刺激となると横井監督はみている。それがチーム力アップにつながれば、という狙いなのだ。

 シーズン本番は4月からだが、次に向けて選手たちは既に再出発している。オフは体力が落ち気味になるため、練習では普段以上の筋力トレーニングを課す。さらに来月からは鳥取オープン、舞洲オープン、湘南オープンと遠征もこなす予定だ。
 来シーズンこそ、決勝トーナメント進出を果たしたい――。その思いを胸に、伊予銀行男子テニス部の戦いは既に始まっている。


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