来季こそ1部復帰を目指して 〜伊予銀行女子ソフトボール部〜
日本女子ソフトボールリーグ2部に所属する伊予銀行女子ソフトボール部。今季の目標は最低でも2位に入り、2年ぶりの1部復帰だった。しかし、リーグ開幕前にキャプテンと主力投手がともにヒザを痛めて戦線離脱したこともあり、8勝9敗、9位の成績に終わった。
来シーズンこそ、1部復帰を果たすためには何が必要なのか。後半戦を振り返りながら、チームの課題について大国香奈子監督に訊いた。
伊予銀行は前半戦、4勝5敗と大きく出遅れた。そこで、浮き彫りとなった体力不足を改善して後半戦に挑むと、ベテランの復調や若手の台頭などもあり、3勝1敗と好スタートを切った。大国監督も「このままの勢いで最終節の4試合は全勝を狙っていきます」と自信をのぞかせていた。
しかし、最終節にはずみをつけるためにも重要な大会とにらんでいた「秋田わか杉国体」で歯車が狂い始めた。1回戦の相手は大学生と社会人で混成された宮城県。「勝って当然の相手」と見られていたが、伊予銀行は0−3で完封負けを喫した。
「大会前、相手のデータを用意し、しっかりと準備していました。ところが、いざ試合になると、こちらが予想していなかったピッチャーが出てきたんです。ドロップボールでタイミングを外し、内野ゴロに打ち取るというピッチングに最後まで対応することができませんでした」
また、先発した高本ひとみ投手のピッチングも不安定だった。1、2回は無難に抑えたものの、3回、3番打者に先制タイムリーを許すと、続く4番には2ランを打たれた。高めに浮いたボールを狙われたのだ。
実は、リーグ戦と国体では使用するボールが異なる。実業団では国際大会と同じ黄色のボールだが、国体では従来の白色のボールが使用される。大きさは同じだが、白色のボールは黄色のボールに比べて縫い目が低く、軽い。そのため、高めに浮いてしまうのだ。
国体までの約1カ月、高本は白色のボールを使用して練習を積んだが、万全とまではいかなかった。
連敗からの学び
国体後、チームは再びリーグ戦に備え、練習を開始した。投手も黄色のボールに切り替え、ピッチング練習を再開。だが、投手陣全体がなかなか調子を取り戻すことができなかった。
「今、チームには活力が必要だ」
大国監督はケガで離れていたキャプテンの川野真代選手をスタメンに起用することにした。ヒザのケガは完治していなかったが、川野選手は期待に応え、今シーズン初打席で先制のタイムリーを放つなど、チームを盛り上げた。大黒柱が戻ってきたことでベンチに活気が戻り、徐々に打線もつながり始めた。
しかし、結果は東海理化(3対4)、島根三洋電機(1対3)、TOETECK(5対6)に3連敗。3つとも勝てる試合だっただけに、悔しさが募る。
「攻撃もクリーンアップはフライが多く、長打は期待できませんでした。だから、“星野ジャパン”のように全員でつなぐ攻撃をしようと。それが良かったんだと思います。
でも、ピッチャーは不安定な状態が続きました。失点はほとんどが先頭打者を四死球で出したことによるもの。野手にしてみれば、どれだけ得点しても“追いつかれてしまうかもしれない”という気持ちが拭えなかったと思います」(大国監督)
いつもは試合後に細かく指示を出す大国監督だが、3連敗を喫したTOETECK戦後はあえて何も言わなかった。すると、選手たちは自主的に自分たちだけでミーティングを開いたという。そこで彼女らが何を話し合ったのかは、大国監督も知らされてはいない。ただ、最終戦を前に「何とかしなければならない」という思いを選手自身が抱いていたことは確かだ。
翌日の湘南ベルマーレ戦は、それが如実に表れていた。まずは初回、4番・中田麻樹選手の先制3ランでリードを奪った。3回に一挙6点を奪われて逆転されたが、選手たちは決して諦めなかった。
3回途中からリリーフした外山裕美子投手がその後を無失点に抑えると、打線も奮起。5回に連続安打で同点とすると、続く6回には3番・矢野輝美選手がバックスクリーンへの特大アーチを放ち、2点を勝ち越した。最後は外山投手が三者凡退で締めくくり、最終戦を8対6の白星で飾った。
「これまでだったら、同点や逆転されると、“またダメか……”というムードが漂い始めていました。ところが、この試合ではそういうことは一切ありませんでした。ベンチでは “つないでいこう!”と声を出し合っていました。最後の最後に、ようやく自分たちのソフトボールというものがわかったようです」と大国監督。最後をいいかたちで終えることができ、来シーズンへの光明となったに違いない。
19日からは年末恒例の合宿が行なわれる。来春入行予定の選手たちも一緒に汗を流し、互いに刺激しあいながら、体力向上を図るのが目的だ。昨年までは3日間だったが、今年は24日までの6日間。「若手が多いため、早い時期からしっかりと体力を身につけたい」という大国監督の要望が受け入れられたかたちだ。力強くバックアップしてくれる会社の期待に応えるためにも、来シーズンこそは1部昇格を果たしたい。その思いを胸に、一丸となってチーム再建を目指す。伊予銀行女子ソフトボール部の2008年の戦いはもう始まっているのだ。
(写真:来季に向けたトレーニングに精を出す選手たち)
来シーズンこそ、1部復帰を果たすためには何が必要なのか。後半戦を振り返りながら、チームの課題について大国香奈子監督に訊いた。
伊予銀行は前半戦、4勝5敗と大きく出遅れた。そこで、浮き彫りとなった体力不足を改善して後半戦に挑むと、ベテランの復調や若手の台頭などもあり、3勝1敗と好スタートを切った。大国監督も「このままの勢いで最終節の4試合は全勝を狙っていきます」と自信をのぞかせていた。
しかし、最終節にはずみをつけるためにも重要な大会とにらんでいた「秋田わか杉国体」で歯車が狂い始めた。1回戦の相手は大学生と社会人で混成された宮城県。「勝って当然の相手」と見られていたが、伊予銀行は0−3で完封負けを喫した。
「大会前、相手のデータを用意し、しっかりと準備していました。ところが、いざ試合になると、こちらが予想していなかったピッチャーが出てきたんです。ドロップボールでタイミングを外し、内野ゴロに打ち取るというピッチングに最後まで対応することができませんでした」
また、先発した高本ひとみ投手のピッチングも不安定だった。1、2回は無難に抑えたものの、3回、3番打者に先制タイムリーを許すと、続く4番には2ランを打たれた。高めに浮いたボールを狙われたのだ。
実は、リーグ戦と国体では使用するボールが異なる。実業団では国際大会と同じ黄色のボールだが、国体では従来の白色のボールが使用される。大きさは同じだが、白色のボールは黄色のボールに比べて縫い目が低く、軽い。そのため、高めに浮いてしまうのだ。
国体までの約1カ月、高本は白色のボールを使用して練習を積んだが、万全とまではいかなかった。
連敗からの学び
国体後、チームは再びリーグ戦に備え、練習を開始した。投手も黄色のボールに切り替え、ピッチング練習を再開。だが、投手陣全体がなかなか調子を取り戻すことができなかった。
「今、チームには活力が必要だ」
大国監督はケガで離れていたキャプテンの川野真代選手をスタメンに起用することにした。ヒザのケガは完治していなかったが、川野選手は期待に応え、今シーズン初打席で先制のタイムリーを放つなど、チームを盛り上げた。大黒柱が戻ってきたことでベンチに活気が戻り、徐々に打線もつながり始めた。
しかし、結果は東海理化(3対4)、島根三洋電機(1対3)、TOETECK(5対6)に3連敗。3つとも勝てる試合だっただけに、悔しさが募る。
「攻撃もクリーンアップはフライが多く、長打は期待できませんでした。だから、“星野ジャパン”のように全員でつなぐ攻撃をしようと。それが良かったんだと思います。
でも、ピッチャーは不安定な状態が続きました。失点はほとんどが先頭打者を四死球で出したことによるもの。野手にしてみれば、どれだけ得点しても“追いつかれてしまうかもしれない”という気持ちが拭えなかったと思います」(大国監督)
いつもは試合後に細かく指示を出す大国監督だが、3連敗を喫したTOETECK戦後はあえて何も言わなかった。すると、選手たちは自主的に自分たちだけでミーティングを開いたという。そこで彼女らが何を話し合ったのかは、大国監督も知らされてはいない。ただ、最終戦を前に「何とかしなければならない」という思いを選手自身が抱いていたことは確かだ。
翌日の湘南ベルマーレ戦は、それが如実に表れていた。まずは初回、4番・中田麻樹選手の先制3ランでリードを奪った。3回に一挙6点を奪われて逆転されたが、選手たちは決して諦めなかった。
3回途中からリリーフした外山裕美子投手がその後を無失点に抑えると、打線も奮起。5回に連続安打で同点とすると、続く6回には3番・矢野輝美選手がバックスクリーンへの特大アーチを放ち、2点を勝ち越した。最後は外山投手が三者凡退で締めくくり、最終戦を8対6の白星で飾った。
「これまでだったら、同点や逆転されると、“またダメか……”というムードが漂い始めていました。ところが、この試合ではそういうことは一切ありませんでした。ベンチでは “つないでいこう!”と声を出し合っていました。最後の最後に、ようやく自分たちのソフトボールというものがわかったようです」と大国監督。最後をいいかたちで終えることができ、来シーズンへの光明となったに違いない。
19日からは年末恒例の合宿が行なわれる。来春入行予定の選手たちも一緒に汗を流し、互いに刺激しあいながら、体力向上を図るのが目的だ。昨年までは3日間だったが、今年は24日までの6日間。「若手が多いため、早い時期からしっかりと体力を身につけたい」という大国監督の要望が受け入れられたかたちだ。力強くバックアップしてくれる会社の期待に応えるためにも、来シーズンこそは1部昇格を果たしたい。その思いを胸に、一丸となってチーム再建を目指す。伊予銀行女子ソフトボール部の2008年の戦いはもう始まっているのだ。
(写真:来季に向けたトレーニングに精を出す選手たち)