(写真:最後まで勝負の分からない手に汗握る熱戦を制したサントリーのメンバー ©JRFU)

 27日、ジャパンラグビートップリーグ第5節が行われ、愛知・パロマ瑞穂ラグビー場でレッドカンファレンスのサントリーサンゴリアスがトヨタ自動車ヴェルブリッツに39-36で競り勝った。前半8分にPGで先制を許すなど12-26で試合を折り返す。後半一度逆転したものの、終了間際に追いつかれた。それでもロスタイムにSOボーデン・バレットのPGで開幕5連勝。敗れたトヨタ自動車は開幕からの連勝が4でストップした。

 
 開幕から無傷の4連勝と好調のチーム対決は、最後の最後までどちらが勝つかわからない接戦となった。
 
 先制したのはトヨタ自動車。ペナルティーを誘い、前半8分にSOライオネル・クロニエのPGで先制すると、12分にもPGで加点した。
 
 サントリーも反撃を開始。14分にラインアウトモールからFLショーン・マクマーンがトライを挙げた。バレットがコンバージョンキックを成功し、7-6で逆転。さらに21分にはFLツイ・ヘンドリックのトライで突き放した。
 
 するとトヨタ自動車は26分にFL吉田杏のトライ。クロニエのコンバージョンで16-12と再びリードを奪う。34分にはWTB髙橋汰地をシンビン(10分間の一時退場)で失うが、1人少ない中でもサントリーを突き放した。
 
 35分、敵陣でFBウィリー・ルルーのショートパントにCTBマレ・サウがキャッチし、トライを挙げた。ここまでキック成功率100%のクロニエはコンバージョン、そして終了間際のPGも決めた。
 
 26-12でトヨタ自動車のリードで前半を終えた。だがトヨタ自動車はここまでの4節後半にスコアを落とす傾向にある。第1節と第4節は後半に限れば相手にリードを許していた。
 
 サントリーのキャプテンでCTB中村亮土はこう語った。
「試合前から『80分で勝ってればいい』と話していました。『前半は相手にプレッシャーをかけていた、これが後半に効いてくる。自分たちのコントロールできることを遂行しよう』と声を掛けました」
 
 トヨタ自動車は過去4試合に続き、この日もペースを相手に明け渡してしまった。後半4分と8分にトライを許し、そのうちの1本のコンバージョンを決められた。リードはわずか2点となった。
 
 11分にトヨタ自動車がPGで5点差に広げたものの、サントリーの勢いは止まらない。アタッキングラグビーを存分に発揮。魅せたのはバレットだ。敵陣中央やや左でボールを持つと大外のWTBテビタ・リーに絶妙なキックパス。リーはインゴール左隅に飛び込んだ。同点に追いついたサントリーは28分にツイが個人技で抜け出し、トライを挙げた。バレットのコンバージョンが決まり、7点勝ち越した。
 
 トヨタ自動車は36分に途中出場のWTB岡田優輝のトライなどで追いつくと、自陣でもボールをキープしながら前進を図った。「時間を稼ぐ考えは全くなかった」とサイモン・クロンHC。あくまで勝ち越しを狙う。敵陣へ蹴り出し、相手にボールを渡すことも良しとしなかった。
 
 どちらがペナルティーを犯せば、決勝のPGを蹴るチャンスを与えてしまう。「ディシプリンを持ってディフェンスをしよう」と、サントリーの中村は声を掛けたという。残り30秒でペナルティーを獲得したのはサントリーだった。蹴るのはバレット。ここまで風にも悩まされ、3本のコンバージョンを外していたバレットだが、決めるべくところで決めるのが千両役者たる所以か。
 
「落ち着いて自分のプロセスを信じて蹴れるように練習してきた」。勝敗を分けるキックはキャリアの中でも経験済みだ。ニュージーランド代表通算88キャップを誇る背番号10はボールをセットしながら、冷静にゴールを見つめていた。ゴールまでは40m以上の距離があった。右足から放たれたライナー性のボールはポストに弾かれたものの成功。39-36でノーサイドとなり、サントリーが全勝対決を制した。
 
 次節はここまで4連勝と好調のクボタスピアーズ(第5節は28日)。キャプテンのCTB中村亮土は「ベストな準備をすること。ノンメンバーも含めいい準備をしたい」と語った。
 
(文/杉浦泰介)