19日現在、25本塁打、57打点とパ・リーグの2冠王に輝いている楽天・山崎武司選手。5月17日の日本ハム戦では、1試合3発の離れ業を演じるなど、そのパワーには目を見張るものがある。38歳にして、なお進化し続ける山崎選手に当サイト編集長・二宮清純がインタビューを行なった。その一部を公開する。
二宮: 今年はもう絶好調ですね。こうなったら40本くらいいけるんじゃないですか?
山崎: いや、40本と言われると、正直、まだいまいち自信はないんですよね。96年に(本塁打王を)獲ったときは、「50本くらいいくんじゃないかな」という気持ちで打っていたんですけど、今はそこまでの自信はありませんね。

二宮: 今年の好調の一番の理由は何ですか?
山崎: 根本的に言ったら、キャンプがうまくいったことですね。僕は2軍からスタートだったのですが、選手のほとんどが1軍に行っていて、2軍は人数が少なかった。だから、好きなことを好きな分だけ練習できたんです。内容の濃いキャンプが送れたということがよかったんじゃないかなと思っています。

二宮: 野村監督になって2年目。「ID野球」とかよく言われていますが、実際にはどうですか?
山崎: みんな、野村監督は難しいこと言うと思ってると思いますけど、野球に関してはすごく単純明快なんです。だけど考えさせられる。監督はよく「考えて、野球をやれ」と言うのですが、最初は僕も含めて選手全員がどうしたらいいのかわからなかった。でも、ここにきてようやく理解し始めたかなという感じです。
 例えば、自分なりに考えた末に真っすぐを待つというのなら、待てばいい。たとえそれが外れて三振しても、お手上げで帰ってきていいから、という考えなんですよ。だから三振の多い僕も、思い切って(バットを)振ることができるんです。

二宮: 楽天1年目、当時監督の田尾さんにバッティングの指導をしてもらったとか。
山崎: はい。僕はそれまで、極端なことを言ったら来た球をドーンと打ちたいという感じだったんです。ところが、それでは変化球に対応できない。それで、田尾さんに「後ろ足に重心を残して打て」と言われたんです。20年近くやってきたことを覆すのは、かなりの勇気が必要だったのですが、限界を感じてもいたので、本気で取り組んでやってみようと決心したんです。最初は詰まってばかりいて不安で仕方なかった。試合中も、ピッチャーと勝負しているというよりも、自分のフォームと戦っているような感じでした。時間はかかりましたが、コツを掴んだらレフトだけではなく、ライトにも打てるようになりました。

二宮: 両リーグでホームラン王になれば、史上3人目の快挙です。
山崎: 結果的にそうなれば、嬉しいですけどね。でも、個人のタイトルにはあまり興味はありません。とにかく勝って、みんなと喜びを分かち合いたいということだけです。

二宮: プレーオフ進出の可能性も出てきました。
山崎: そうですね。僕はまだ日本シリーズに一度も出場したことがないんです。中日でリーグ優勝した99年も、シリーズ前に骨折してしまっているので。ですから、プレーオフに出ることで少しでも日本シリーズ出場のチャンスを得たいと思っています。


<このインタビューの内容は『ビックコミックオリジナル』2007年7月5日号に掲載される予定です>