(写真:4月29日現在、50試合でスタメン出場を果たしている田代)

 B1チャンピオンシップ(CS)初戦が5月13日からスタートする。B1西地区4連覇を決めた琉球ゴールデンキングスは、ここまで全シーズン(新型コロナウイルス感染拡大の影響により、プレーオフなしの昨季は除く)CSに出場している強豪だが、リーグ制覇はまだない。初優勝を目指す琉球のキャプテン田代直希に抱負を聞いた。

 

――4月17日に西地区優勝を決めました。これでCS初戦、準決勝とホームで戦えます。

田代直希: 毎年、選手が入れ替わる中、西地区4連覇を達成することができました。今季はチーム内でコミュニケーションがよく取れた。「ハードワークする」というテーマに沿って、みんながそれを遂行できた。歩んできたプロセスが成果につながり、とてもうれしいです。

 

――ホームとなる沖縄アリーナが新設され、今月21日には初の公式戦が行われました。試合には敗れてしまいましたが、実際にプレーしてみて、いかがでしたか?

田代: まだこけら落としで、公式戦一発目のゲームということもあり、正直ホームという感覚はありませんでした。お客さんとの距離が近かったり、どの角度に目を向けてもお客さんがいることが新鮮だった。今はコロナの影響で半分しか入れられませんでしたが、“これが満員になったら日本一のアリーナに絶対なる”と感じましたね。

 

――「コートから最も遠い席」を意識してプレーしていると伺いました。

田代: そうですね。試合終了後にコートを一周する時も感謝の気持ちを込め、一番遠くまで手を振ることを心がけています。試合中は熱量や激しさを届けるのが、僕たちの仕事だと思っています。

 

――CSには4度目の出場となりますが、これまでファイナルに進んだことはありません。

田代: 初優勝への思いは強いのですが、まずは一戦一戦勝ち上がっていくことが大事です。優勝できる力があると自負しているものの、優勝を争うには東地区の強豪と比べるとまだ経験は浅いと感じています。

 

――ファイナルに勝ち上がるための課題は?

田代: 集中力が持続する時間が、東地区の強豪と比べて短い。理想は40分間すべてに集中していたいのですが、30分、20分しかできていない。細かく言えば、24秒ルールの間も15秒しか集中できず、最後の詰めの部分で気が緩んでしまうことがあります。勝っている試合は、その24秒間、そしてリバウンドまできっちり集中している。まだ自分たちの力をコントロールできていないと思います。

 

――琉球の強みは?

田代: ジャック(・クーリー)のリバウンド、ドウェイン(・エバンス)の得点力、並里(成)さんのオフェンスがうまく噛み合った時は、どこにも負けない自信はあります。あとはハードワーク。ここはシーズンの始めから柱にしてきました。

 

――ハードワークを求めるのは19-20シーズンの途中から藤田弘輝HCが就任してからでしょうか?

田代: 琉球の伝統として昔からあると思っています。藤田さんはひとつひとつの判断は選手に委ねてくれます。すごく情熱的で勝ちたいという気持ちが強い方です。「どうした方がいいと思う?」と選手と同じ目線になって考えてくれる。僕は接しやすいですし、藤田さんの常に謙虚で学ぼうとする姿勢は勉強になる。チームに対してもいい影響を与えてくれていると思います。

 

 背中を押せるリーダーに

 

(写真:持ち味であるドライブについては「個の能力ではなくチームメイトに生かされている」と語る)

――田代選手は昨季からキャプテンに就任しました。

田代: キャプテンになってから考え方が大きく変わりましたね。それまでは自分の価値観、常識に当てはめて考えるタイプでした。自分の物差しで人のことを測って、勝手にイライラしていました。それでは誰もついてきませんよね。だから相手がどんなこと考えているか、積極的にコミュニケーションを取るようにしました。そこから信頼も得られるようになった。キャプテンをやったことで勉強になったことはたくさんあります。

 

――“オレについてこい!”というキャプテンもいますが、田代選手は気配り、目配りをするタイプでしょうか?

田代: そうですね。僕が“オレについてこい!”と言っても、ついてくるのは1人いるかいないか(笑)。集団走に例えると、リーダーはどこを走ってもいい。常に先頭を走って引っ張るという人もいますが、僕は最後尾を走り、きつそうにしている選手がいれば「頑張るぞ」と声を掛けながら一緒に走るタイプ。少しでも背中を押せるようなリーダー、それを心がけていますね。

 

――インタビューなどで「できないことを口にすることは嫌い」とおっしゃっていました。

田代: それはキャプテンになったこととは関係なく、昔から思っていました。口ばっかりの人が嫌い。人に対して「ミスをするなよ!」と怒る人がミスすることだってある。そんなことを繰り返す人は「オマエの言うことなんて聞きたくない」と思われてしまう。筋が通っていないことが、すごく嫌いなんです。だから僕自身はできる範囲で努力していく。それで最終的に大きな目標に辿り着ければいいと考えています。

 

――現実的な思考はプレーにも表れていますか?

田代: そうだと思います。“自分にできることをやろう”とは常に考えていること。具体的には無理なプレーはせず、なるべく確率の高いシュートを選んでいます。

 

――“自分にできること”のひとつが、チームとしても大切にしているハードワークですか?

田代: もちろんです。僕はそこしかないと思っています。身体能力がズバ抜けているわけでもなければ、バスケットIQが高いわけでもない。そんな僕からハードワークを取ってしまうと何も残らない。幸い僕にはかつて古川孝敏さん(現・秋田ノーザンハピネッツ)、橋本竜馬さん(現・レバンガ北海道)という手本となるチームメイトがいた。その選手たちにハードワークとは何かを教えられ、今は土台となり標準装備となりました。だからハードワークするということが、僕にとっては絶対なんです。

 

――個人として今後の目標は?

田代: ベテランになっても40歳になってもチームの最前線にいるようなプレーヤーでいたい。練習からガンガン自分を追い込み、常に自分のベストを尽くす。若い選手たちに“あんなオッサンなのにすごいな。オレも頑張らなきゃ”と思わせるようなプレーヤーでいたいですね。

 

――最後に改めてCSへの意気込みをお聞かせください。

田代: レギュラーシーズンの残り試合を含め、あと1カ月ほどで今季は終わる。最後の最後までチームとしてハードワークしていけるかが、チームとしてもう一歩先のステージに進めるか否かのカギになると思います。キャプテンとして後輩たちの成長にも貢献したい。そのためにもチームとして、個人としてもハードワークを徹底していきたいと考えています。

 

田代直希(たしろ・なおき)プロフィール>

1993年6月24日、千葉県生まれ。ポジションはスモールフォワード。小学4年でバスケットボールを始める。東海大浦安高校、専修大学を経て、16年に琉球ゴールデンキングスに入団。2年目からスタメンに定着し、西地区制覇に貢献した。19-20シーズンからキャプテンに就任。身長188cm、体重90kg。背番号24。

 

(写真:©琉球ゴールデンキングス)

 

 BS11では「マイナビBe a booster! B.LEAGUEウィークリーハイライト」(毎週木曜22時~22時30分)を放送中です。次回の放送日は4月29日(木)。28日に行われた4試合から注目のゲームをご紹介します。是非ご視聴ください。


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