信濃グランセローズの1年目は31勝35敗6分、3位という成績に終わりました。初代王者の座を狙っていたチームとしては、残念な結果です。しかし、シーズンを通して選手たちは非常にたくましく成長してくれました。技術はもちろんのこと、それ以上に精神的に強くなったと感じることがしばしばありました。監督としてそれが何より嬉しく、また無事にシーズンを戦い終えたことにほっとしています。
 選手たちにプロ意識が芽生え始めたと感じられるようになったのは、夏場あたりからです。シーズン中、私たちは中野市営野球場で練習していますが、ファンの人が見に来てくれることも少なくありません。その人たちに挨拶をしたり、手を振ったりと徐々に自分たちからコミュニケーションを図るようになったのです。これは「わざわざ自分たちの野球を見に来てくれた」ことへの感謝の気持ちの表れでしょう。「ファンあっての自分たち」なわけですから、来季はそのファンを少しでも多く喜ばせるためにも、優勝を狙っていきたいと思っています。

 さて、私たちが来季、優勝するために最も重要となるのが攻撃力です。チームの成績を見てみると、投手成績は防御率(4.15)、被本塁打(29本)、奪三振(371)、失点(370点)といずれもリーグ2位。四球が多いという課題はありますが、投手陣はよく頑張ってくれたと思います。
 また、来季2年目を迎える7人の投手は、悔しい思いをしている分、並々ならぬ思いで新しいシーズンに挑むことでしょう。きっと今オフに万全な準備をしてくるでしょうから、ある程度やってくれるだろうという期待を持っています。

 一方、打撃成績は打率(.271)と安打(647点)こそ富山サンダーバーズに次いで2位ですが、打点(287)、本塁打(29本)は3位。まだまだ力不足が否めません。具体的にはこれからとなりますが、来季はどのようにして攻撃力をアップさせるか、これが最大のポイントになるのではないかと考えています。

 11月21日のドラフト会議では捕手1人、内野手1人、外野手2人の合計4人の選手を指名しました。全員が長野県出身です。これは県内出身の選手を多く育てることで、地域密着を図りたいという球団側の方針です。

 全員に期待をしていますし、来春に大学を卒業する若手ばかりですから、これからどのように成長してくれるのか楽しみです。その中でも、トライアウトで見て印象に残ったのが捕手の中村一也(丸子実業−松本大学)です。ボールを捕る姿勢がよく、キャッチングは素晴しいものをもっています。まだ22歳と若いですし、場数を踏むことでプロとしてのインサイドワークを覚えれば、ググッと成長してくれるのではないかと期待しています。

 来季は6球団に増え、前後期の2シーズン制となります。1シーズン、36試合しかありませんから、今季のようにスタートでいきなりつまづいていては絶対に優勝はできません。とにかくスタートダッシュを成功させ、貯金をいくつつくれるかがカギとなります。

 選手たちは今、昼間は仕事をし、夜には各自ジムなどに通い、トレーニングに励んでいます。「来季こそ」という思いを抱きながら頑張っていますので、これからも応援よろしくお願いします!
 

木田勇(きだ・いさむ)プロフィール>:信濃グランセローズ監督
神奈川県出身。横浜商大高、日本鋼管を経て、80年にドラフト1位で日本ハムに入団。1年目に22勝8敗4セーブ、228奪三振、防御率2.28の成績を残し、新人王ならびにMVPに輝いた。その後、大洋(現横浜)、中日に移籍し、90年に引退。引退後は解説者、評論家として活躍。2007年より信濃グランセローズ監督に就任し、来季も続行することが決定した。


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 今年開幕した北信越BCリーグは、来シーズンより群馬、福井が加わり、6球団で運営されます。これに伴い、リーグ名も11月1日より「BCリーグ」と変更されました。
 そこで来年1月より同コーナーの名称を「BCリーグ戦記」に変更します。新潟アルビレックスBC、信濃グランセローズ、富山サンダーバーズ、石川ミリオンスターズに加え、群馬ダイヤモンドペガサス、福井ミラクルエレファンツの監督やコーチからの貴重なお話をお届けいたします!
 また、四国アイランドリーグも福岡、長崎が加わり、12月1日より「四国・九州アイランドリーグ」と変更されました。そこで第1、3月曜に配信している「野球お四国廻り」のコーナー名を同じく来年1月より「野球西国巡り」に変更します。こちらもどうぞお楽しみに!
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