安倍前首相の突然の辞任に続いて、民主党の小沢代表が辞意を表明した。「民主党はまだ力不足。次の選挙で勝つのは難しい」と大批判したが、小沢氏はわずか2日で翻意した。
 与野党激突と言われる中、党首会談の場では自民・民主の「大連立」というウルトラCが協議されていた。
 厳しい権力闘争を繰り広げる政治家たちの言動から、リーダーたる人間の資質について考えた。(今回はVol.2)
木村: 政治家である伊藤さんから見て、田中角栄と小泉純一郎という人物は、やはりほかの歴代の総理大臣と違いますか。

伊藤: うーん、僕は「ナマ角栄」を見てないから(笑)。田中元首相については正直よくわからないんですが、小泉元首相は実際に間近で見てきました。3回目の総裁選挙では、私は違う候補者を一生懸命に応援していましたから、敵方として、本宮さんや二宮さんが指摘する通り、「権力を奪い取るんだ」「自分の力で引き寄せるんだ」という、小泉さんの気迫を強烈に感じました。

木村: 小泉首相は権力闘争が好きそうな雰囲気がありますよね。

伊藤: もう大好きかもしれないですよ(笑)。とにかく政局をいかに動かして、自分の悲願であった「郵政民営化」を実現するかということのために行動したという見方もできます。

木村: 麻生氏は「落ちてくる」のを待っていた。一方の小泉首相は「俺が叩き落としてやる」という信念で行動した。そういったエネルギーの違いが、リーダーとしての条件なのでしょうか。

本宮: 落ちてくるのを待つのと、無理やり叩き落とすのとでは、ものすごく違うと思うんです。エネルギーと集中力において、比較にならないぐらいの差がある。僕は昔、「ナマ角栄」に会ったことがあるんです。
 取材のために4時間ぐらい話をしました。びっくりしたのは「わしは総理大臣をやったことがあるんだぞ。お前だって知ってんだろう」と、会うなり僕にこう言うんです。

全員: あははは!(爆笑)

二宮: そりゃ、誰だって知っていますよ(笑)

本宮: それと「お前は敵か、味方か」みたいなことを言うんです。「お前みたいなのが敵に回っても、俺は怖くもなんともないんだ」といきなり言われました。しかも、平気な顔をして大声で言うんです。病院の待合室みたいなところの奥から、あのオヤジのでデカいだみ声が響きわたるわけです。もう秘密なんかあるわけないですね、あの人は(笑)。

 ちょうど土光敏夫さんが臨調(臨時行政調査会)をやっていた時代ですから中曽根政権の頃です。僕が訪ねたときは、台風が日本列島を直撃した直後で、部屋に入ると田中さんは電話中だった。建設省(当時)だと思うんですが、役所に電話している。「おお、わかった! じゃあ、水道止めなくていいんだな!」なんて言っているわけです。「すいません、水道を止めるのを決めるのは田中さんなんですか?」と尋ねると「俺が決めている」と答えるんです(笑)。

(続く)

<この原稿は「Financial Japan」2008年1月号に掲載されたものを元に構成しています>
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