第126回 SCスタッフの白球コラム「怪物を生む”和式”な生活様式」
大船渡高(岩手)時代に高校生最速の163キロをマークした“令和の怪物”こと佐々木朗希投手(千葉ロッテ)がついにプロデビューを果たしました。
5月16日、本拠地の埼玉西武戦でプロ初先発した佐々木投手は5回で107球を投げ、被安打6の4失点(自責点2)。試合は6対6で引き分け、勝ち負けはつきませんでした。
この試合、佐々木朗希投手の最速は2回、コーリー・スパンジェンバーグ選手に投げた154キロでした。侍ジャパンの強化委員を務める鹿取義隆さんは「160キロは出なかったけど、150キロ台を1軍マウンドで常時出すんだからたいしたもんですよ」と怪物のデビュー戦を称えました。
以前、佐々木投手のすごさについて球界OBや評論家に聞いたことがあります。広島や巨人で活躍し、巨人で投手コーチを務めた理論派・川口和久さんはこう語っていました。
「佐々木君の長所はフォームを見ればわかる。ノーワインドアップから左足を大きく上げて、そこから遠くへ踏み出している。あれだけ足を高く上げられるのは、体の筋肉バランスが良いということ。また踏み出しの大きさは股関節周辺の柔らかさの証明ですね」
さらに川口さんは続けました。
「なぜ、佐々木君はあれだけ柔軟な股関節を手に入れたのか。それは彼が岩手出身だからでしょう。たぶん畳で暮らし、トイレは和式だったに違いありません。アハハハ」
最後は川口さん流のジョークで締めくくりましたが、畳や和式トイレという「和」の生活はプロアスリートを生む土壌になっているのかもしれません。以前、スポーツコミュニケーションズの編集長・二宮清純がPL学園の元監督、中村順司さんにインタビューした際、中村さんはこう語っていました。
「野手が捕球からスローイングに移るに際し、一番大切なのは右足の踏み込み。これができていればグラブを持った左手をしっかり出せる。きちんと捕球できればスローイングにも移りやすい。もちろん打球を追いかける時はつま先に体重がかかりますが、捕球の時は右足のかかとから入ってしっかり踏み込む。つま先に体重がかかったままでは、きちんと投げられませんから」
中村さんはPL時代も練習で相撲のそんきょの姿勢をとらせていたといいます。その中村さん、近年、少年野球の指導をした際、こう驚きました。
「近頃の子供はそんきょの姿勢がとれないんです。ボールを捕るときに“低く、低く”と教えるときに効果的なんですが、股関節やかかとが硬いのか、うまくしゃがめないんですね。そういえば生活様式の変化なのか、子供たちの中には和式トイレで用をたせない子もいるんですよ」
中村さんは吉村禎章さん、桑田真澄さん、清原和博さん、立浪和義さん、片岡篤史さん、野村弘樹さん、橋本清さん、宮本慎也さん、坪井智哉さん、今岡誠さん、松井稼頭央さん、サブロー(大村三郎)さん、福留孝介さんら多くのプロ野球選手を育ててきました。
その中村さんの言葉は軽くはありません。生活様式の変化はプロ野球選手をはじめ、未来のアスリートにどんな影響と効果をもたらすのでしょうか。
(文・まとめ/SC編集部・西崎)