期待膨らむ若手の成長 〜伊予銀行男子テニス部〜
9月29日〜10月9日に開催された「第62回国民体育大会(秋田わかすぎ国体)」に愛媛代表として、若手二人の萩森友寛選手と植木竜太郎選手が出場した。準々決勝で第1シードの東京に負けを喫したが、その後の7、8位決定戦で愛知に勝ち、2年ぶりに入賞を果たした。「最低条件はクリアできた」としながらも、さらに上を目指す二人に3日間にわたる熱戦を振り返ってもらった。
(写真:「徐々に自分のテニスができるようになってきた」と植木選手)
「必死さが足りないんじゃないか?」
初戦終了後、植木選手は横井晃一監督にそう指摘された。初戦の滋賀との試合はシングルス2本で決めることができず、ダブルスに持ち込まれたものの、無事に2回戦進出を果たした。8ゲーム先取のシングルスでも8−5で植木選手は勝っている。しかし、本人も調子の悪さを感じずにはいられなかったという。
植木選手は日本大学から今年4月に入行した。大学とは全く違う生活環境の変化に植木選手は、少しとまどっていた。
「自分でも思うようなプレーができず、苛立っていたんです。社会人になれば、思う存分テニスをやっていた学生の頃のようにはいかないことはわかっていました。でも、実際には切り替えられていなかった。そのことを横井監督にズバリ言われ、改めて気持ちの問題が調子の良し悪しに表れていると認識しました」
実りある敗戦
翌日、2回戦が行われた。またもダブルスまでもつれたが、萩森・植木ペアは準々決勝へと駒を進めた。植木選手の調子はまだ本調子ではなかったが、気持ちは少しずつ高まっていった。そして迎えた準々決勝は、優勝候補の筆頭に挙げられていた東京との対戦となった。
植木選手のシングルスの相手は東海大菅生高の後輩、佐藤文平選手。佐藤選手は昨年、全日本学生選手権大会(インカレ)で優勝するなど早稲田大学進学後にメキメキと力をつけている。それでも植木選手にプレッシャーはなかった。1、2回戦よりも調子はよく、集中して試合に臨むことができた。序盤は互角に渡り合い、勝負はどちらに転ぶかわからない接戦となった。しかし、結果は8−5で佐藤選手に軍配が上がった。
「僕も佐藤も、実力的にはそれほど違いはありません。僕が負けた最大の原因は、技術うんぬんではなく、日々の努力の差だと思います」
植木選手は自分に言い聞かせるかのように、そう反省の言葉を口にした。
一方、萩森選手は伊予銀行男子テニス部のメンバーで唯一の愛媛県出身者だ。それだけに大学4年以来の出場に喜びと誇りを感じていたという。その並々ならぬ思いで挑んだ今大会、最も印象に残っているのは、やはり準々決勝の東京戦だ。
「結果的には僕も植木もシングルスで負けてしまいましたが、勝てるチャンスはありました。でも、相手にうまくかわされてしまったという感じ。思い切りの良さだけでは勝てないということを思い知らされましたね」
準々決勝で東京に負けを喫した二人は、翌日の5〜8位決定予備戦に臨んだ。相手は地元の秋田県。日本リーグで3度の優勝を誇る北日本物産に所属していた経歴をもつベテランペアだった。シングルスで植木選手が敗れたものの、萩森選手が3連続サービスエースを決めるなどタイブレークの末に勝ち、勝負はダブルスへと持ち込まれた。一時はサーブゲームをブレイクされ、2−4とリードを許すも、そこから挽回。試合はタイブレークへと突入した。だが、最後はポイント5−7で敗れた。
「この試合は勝てる試合でした。最後に取り切れなかったのは、やはりメンタル面の弱さだと思います」
植木選手はそう冷静に分析する。3時間50分の激闘の末、僅差で敗れた二人は、その悔しさを7、8位決定戦の愛知戦にぶつけた。「次の試合に勝つことだけを考えていこう」。そう言い合い、試合前に気持ちを切り替えた萩森選手と植木選手。横井監督からも「最後はダブルスに持ち込ませず、シングルス2本で終わらせよう」と檄を飛ばされた。両者ともに8−5でシングルスを勝ち、7位入賞を果たした。
「結果には満足していない」と二人とも口を揃えて言うが、技術的にも精神的にも、彼らには意味深い大会となったことは間違いないようだ。
日本リーグへ向けて
(写真:日本リーグへ向けて大きな収穫を得た萩森選手)
11月8日からは全日本選手権大会が東京・有明テニスの森で行われた。シングルスでは日下部聡選手と萩森選手が予選で敗退したものの、ダブルスでは日下部・植木ペアと萩森・湯地和愛ペアがそろって予選を突破し、本戦に進出した。本戦では初戦で敗れたが、両ペアとも第1セットを奪われた後の第2セットは接戦に持ち込み、粘りを見せた。
「男子のダブルスでは、積極的に前に出て速い展開になることが多いんです。ところが、意外にも相手ペアが前で勝負せずに、雁行陣のままだったので、ゆったりとした流れになった。第1セットは、そのペースにとまどってしまいました。
今までならその悪い流れのままズルズルいっていたと思います。でも、第2セットに入る前に湯地さんと相手を変に意識せずに、とにかく自分らのテニスをしてサーブゲームをキープしていこう、と話し合いました。結局、最後は負けてしまいましたが、試合中に修正できたことは大きな収穫でした」
と萩森選手。この日本選手権も次へのステップアップとなったようだ。
伊予銀行が次に目指すのは12月6日から始まる日本リーグでの決勝トーナメント進出だ。この日本リーグで優勝し、日本一の座につくことは企業チームにとって、何にも代え難い名誉である。それだけに、この大会にかける思いはどのチームも強い。さらにプロ選手で構成されたチームもあり、非常にハイレベルだ。予選リーグを突破するのも容易ではない。
一昨年、伊予銀行は悲願の決勝トーナメント進出を果たした。今年は2年ぶりの決勝進出に向けて、横井監督をはじめ、選手たちは一様に燃えている。「しっかりと体調管理を整え、チーム一丸となって気持ちを高めていきたい」と語る萩森選手からは冷静さの中にも熱い思いが感じられた。
果たして伊予銀行男子テニス部は、今年1年間の集大成ともいえる日本リーグで実力を遺憾なく発揮することができるか――。1月に吉報が届けられることを期待したい。
(写真:「徐々に自分のテニスができるようになってきた」と植木選手)
「必死さが足りないんじゃないか?」
初戦終了後、植木選手は横井晃一監督にそう指摘された。初戦の滋賀との試合はシングルス2本で決めることができず、ダブルスに持ち込まれたものの、無事に2回戦進出を果たした。8ゲーム先取のシングルスでも8−5で植木選手は勝っている。しかし、本人も調子の悪さを感じずにはいられなかったという。
植木選手は日本大学から今年4月に入行した。大学とは全く違う生活環境の変化に植木選手は、少しとまどっていた。
「自分でも思うようなプレーができず、苛立っていたんです。社会人になれば、思う存分テニスをやっていた学生の頃のようにはいかないことはわかっていました。でも、実際には切り替えられていなかった。そのことを横井監督にズバリ言われ、改めて気持ちの問題が調子の良し悪しに表れていると認識しました」
実りある敗戦
翌日、2回戦が行われた。またもダブルスまでもつれたが、萩森・植木ペアは準々決勝へと駒を進めた。植木選手の調子はまだ本調子ではなかったが、気持ちは少しずつ高まっていった。そして迎えた準々決勝は、優勝候補の筆頭に挙げられていた東京との対戦となった。
植木選手のシングルスの相手は東海大菅生高の後輩、佐藤文平選手。佐藤選手は昨年、全日本学生選手権大会(インカレ)で優勝するなど早稲田大学進学後にメキメキと力をつけている。それでも植木選手にプレッシャーはなかった。1、2回戦よりも調子はよく、集中して試合に臨むことができた。序盤は互角に渡り合い、勝負はどちらに転ぶかわからない接戦となった。しかし、結果は8−5で佐藤選手に軍配が上がった。
「僕も佐藤も、実力的にはそれほど違いはありません。僕が負けた最大の原因は、技術うんぬんではなく、日々の努力の差だと思います」
植木選手は自分に言い聞かせるかのように、そう反省の言葉を口にした。
一方、萩森選手は伊予銀行男子テニス部のメンバーで唯一の愛媛県出身者だ。それだけに大学4年以来の出場に喜びと誇りを感じていたという。その並々ならぬ思いで挑んだ今大会、最も印象に残っているのは、やはり準々決勝の東京戦だ。
「結果的には僕も植木もシングルスで負けてしまいましたが、勝てるチャンスはありました。でも、相手にうまくかわされてしまったという感じ。思い切りの良さだけでは勝てないということを思い知らされましたね」
準々決勝で東京に負けを喫した二人は、翌日の5〜8位決定予備戦に臨んだ。相手は地元の秋田県。日本リーグで3度の優勝を誇る北日本物産に所属していた経歴をもつベテランペアだった。シングルスで植木選手が敗れたものの、萩森選手が3連続サービスエースを決めるなどタイブレークの末に勝ち、勝負はダブルスへと持ち込まれた。一時はサーブゲームをブレイクされ、2−4とリードを許すも、そこから挽回。試合はタイブレークへと突入した。だが、最後はポイント5−7で敗れた。
「この試合は勝てる試合でした。最後に取り切れなかったのは、やはりメンタル面の弱さだと思います」
植木選手はそう冷静に分析する。3時間50分の激闘の末、僅差で敗れた二人は、その悔しさを7、8位決定戦の愛知戦にぶつけた。「次の試合に勝つことだけを考えていこう」。そう言い合い、試合前に気持ちを切り替えた萩森選手と植木選手。横井監督からも「最後はダブルスに持ち込ませず、シングルス2本で終わらせよう」と檄を飛ばされた。両者ともに8−5でシングルスを勝ち、7位入賞を果たした。
「結果には満足していない」と二人とも口を揃えて言うが、技術的にも精神的にも、彼らには意味深い大会となったことは間違いないようだ。
日本リーグへ向けて
(写真:日本リーグへ向けて大きな収穫を得た萩森選手)
11月8日からは全日本選手権大会が東京・有明テニスの森で行われた。シングルスでは日下部聡選手と萩森選手が予選で敗退したものの、ダブルスでは日下部・植木ペアと萩森・湯地和愛ペアがそろって予選を突破し、本戦に進出した。本戦では初戦で敗れたが、両ペアとも第1セットを奪われた後の第2セットは接戦に持ち込み、粘りを見せた。
「男子のダブルスでは、積極的に前に出て速い展開になることが多いんです。ところが、意外にも相手ペアが前で勝負せずに、雁行陣のままだったので、ゆったりとした流れになった。第1セットは、そのペースにとまどってしまいました。
今までならその悪い流れのままズルズルいっていたと思います。でも、第2セットに入る前に湯地さんと相手を変に意識せずに、とにかく自分らのテニスをしてサーブゲームをキープしていこう、と話し合いました。結局、最後は負けてしまいましたが、試合中に修正できたことは大きな収穫でした」
と萩森選手。この日本選手権も次へのステップアップとなったようだ。
伊予銀行が次に目指すのは12月6日から始まる日本リーグでの決勝トーナメント進出だ。この日本リーグで優勝し、日本一の座につくことは企業チームにとって、何にも代え難い名誉である。それだけに、この大会にかける思いはどのチームも強い。さらにプロ選手で構成されたチームもあり、非常にハイレベルだ。予選リーグを突破するのも容易ではない。
一昨年、伊予銀行は悲願の決勝トーナメント進出を果たした。今年は2年ぶりの決勝進出に向けて、横井監督をはじめ、選手たちは一様に燃えている。「しっかりと体調管理を整え、チーム一丸となって気持ちを高めていきたい」と語る萩森選手からは冷静さの中にも熱い思いが感じられた。
果たして伊予銀行男子テニス部は、今年1年間の集大成ともいえる日本リーグで実力を遺憾なく発揮することができるか――。1月に吉報が届けられることを期待したい。