シーズン前半の大舞台である社会人野球日本選手権に向けた関東最終予選がいよいよ始まります。その意気込みを語る前に、前回のコラム締め切り後の4月末と5月に行われたJABA京都大会、同九州大会のことに触れておきましょう。

 

 考えながら戦うということ

 まずは京都大会から。予選リーグで急遽、2チームが出場を取りやめたために、パナソニックと勝った方が決勝トーナメント進出という一発勝負になりました。

 

 この試合では森井絃斗を先発に立てましたが、相手に先取点を奪われる苦しい展開でした。でも打線がパナソニックの先発・與座健人を序盤から攻略し、特に4回に代打の政野寛明がいいところで打ってくれて勝ち越し。序盤で3点、その後も追加点を奪って、6対1で勝利しました。セガサミーはバッティングチームなので、どこでどう点をとるか、チャンスをいかにものにするかが大事になってくるんですが、この試合はそれが発揮できたゲームでしたね。

 

 決勝トーナメントに進み、準決勝は三菱重工Westと対戦。重要な一戦として先発・草海光貴に託しましたが、制球が定まらず、いつもの彼らしいピッチングではありませんでした。本来なら予選リーグが3試合あって、そこで投げられたんですが、それが1試合だったのでこの準決勝がぶっつけとなってしまった。そのあたりで調整に影響が出たのかなと思っています。

 

 相手はサウスポーの森翔平。彼もドラフト候補に上がる注目の投手ですが、もっと良いと思っていたんですが、このときは本調子ではないようでした。互いに四球を与える苦しいピッチングで、そうなるとゲームは点を取った取られたの展開になります。

 

 8回を終えたところで7対10と、ほぼ負けゲームでしたが、9回表に1点を返して8対10、なおも満塁の場面で3番・中川智裕がツーベースを打ちました。ここまで3三振ですから、本人も思うところは当然あったことでしょう。それがよいところで打ち、11対10と逆転。「よっしゃ、あとは裏を締めくくるだけ」と、陶久亮太をマウンドへ。ところが、陶久が四球でランナーを出し、その後はエラーも絡み、サヨナラ負けでした。

 

 ひっくり返したところまでは立派ですが、こうしたゲームを勝ちきれないのが、まだまだチームの弱み、課題だと思っています。あと一歩でミスが出ては上の舞台に行けば行くほど、勝てなくなります。投手なら四球、野手は送球を含めエラーをしないようにしていくしかない。反省というのは後手後手なので、「じゃあ次はどうするのか」と考え、対策をすることが大事です。

 

 この三菱重工West戦の最終回がチームの流れを変えたポイントでしたね。野球は選手にもチームにもバイオリズムというか波があります。それが京都大会を境に、底に行ってしまいました。まあこれは言い訳になってしまいますがね。

 

 そうして迎えた九州大会。初戦で西部ガスに1対7に敗れました。先発の森井はコンディション不良もあって2死から失点するなど、彼の良さが出ませんでした。一方、相手の村田健は右のサイドハンドで、キャリアもあってうまいピッチングをしていました。それを崩せず、こちらは牽制死などもありコールド負け寸前でしたが、7回に1番・根岸晃太郎がソロホームランを放ち、なんとか最終回まで戦えました。根岸もこの日は3三振と苦しんでいましたが、あそこで打てたのはさすがという感じです。

 

 村田のうまさにやられた格好で、野球の鉄則である流れを引き寄せることができませんでした。相手のペースでズルズルといって、本来の力を出せませんでしたね。その後、日本製鉄大分に1対2、東海理化に0対3。九州大会は3連敗で終わりました。Hondaもこの九州大会で3連敗しましたが、社会人の短い大会は本当に戦い方が難しい。強いチームというのはこうした短期決戦でもちゃんと力を出せる。そういう風にコンスタントに力を出していけるチームになれるように戦っていきたいですね。

 

 打者は相手ピッチャーのペースでのらりくらりとかわされる中でも、球筋を見極め、3回打席に立っているんだから、1回は逆方向に狙い打つとか、そういう対応力が必要になってきます。考えながら野球をやることが大事ですね。

 

 野球は3回ずつ序盤、中盤、終盤があります。その中でも立ち上がりは守備、攻撃ともに難しい。そこをどううまく入るかは永遠の課題でありますが、その中で相手の球筋、さらには審判のクセまでも感じ取って、試合中に修正していく。それが勝ちにつながることになります。

 

 セガサミー野球部は力的には全国でも自信を持って戦えるものを持っています。去年の都市対抗ベスト4でそれを証明しました。社会人日本選手権の関東予選、セガサミーの初戦は6月2日、日本製鉄かずさマジックが相手です。社会人野球は相手のデータが少ないのですが、その中でもやれることをすべてやって、必ず出場を勝ち取りたいと思っています。

 

 力をどれだけ出せるかは、試合までの準備にかかっています。相手のことを研究する、いわば「転ばぬ先の杖」。そしてやることをきちんとやるという「凡事徹底」。このミックスでもって関東予選を勝ち抜きたいと思っています。

 

 この大会では西村僚太、本間諒が出られず外野の層が薄くなりますが、政野を入れるなどしてカバーしていきます。まあプロ野球と違って社会人野球というのはいる選手でやっていくしかありませんからね。プロ野球では新型コロナウイルスの影響で広島などは大変なことになっていますが、こっちはこっちで頑張っていくしかありません。

 

 とにかくいつも言っていることですが、このご時世に野球をやらせてもらっていることに感謝し、会社の恩に報いるために選手一丸となって頑張ります。最後に個人的な意見をつけくわえておけば、コロナ禍でアスリートは窮屈な思いをしていることでしょう。そんな中でオリンピックを開催するのはどうなんでしょうか、というのが正直なところです。早く大手を振ってスポーツやレジャーが楽しめる、そういう世の中が戻ってきてくれることを祈ります。皆さんも日々、お気をつけてお過ごしください。

 

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