6月29日から社会人野球日本選手権が始まりました。セガサミー野球部も出場権を勝ち取り、初戦は7月2日、NTT西日本と戦います。今回のコラムは試合直前の更新です。まずは関東最終予選のことを振り返りましょう。

 

 「栄光は一瞬、準備は一生」

 日本選手権の出場をかけた関東代表決定戦は6月3日、明治安田生命を相手に行われました。もうひと月近く前のことですが、ひとまず出場権を獲得できてホッとしました。もし出場を逃していたら、このコラムは3カ月くらいはお休みをいただいていたことでしょう(笑)。

 

 関東最終予選は当初、2回戦で日本製鉄かずさマジックと戦う予定でしたが、相手チームに新型コロナウイルス陽性者が出たために不戦勝となりました。翌日、いきなり明治安田生命と出場権をかけた一発勝負という形になりましたが、選手たちに浮ついたところもなく、準備万端で試合に入ることができました。

 

 だが、野球は何が起きるかわかりません。万全の体制で送り込んだ先発の草海光貴が、いきなり4失点。押し出しのフォアボールなどコントロールが乱れた印象ですが、決して草海のボールは悪くありませんでした。ただ、審判のクセなのか、少し高低に厳しかったようです。それで4点を失ったものの、相手投手もこの審判のクセに苦労したようで2回にセガサミーも満塁のチャンスをつかみ、同点に追いつきました。

 

 その後、4回に併殺の間に1点を失い4対5。しかし5回からマウンドに上がった横山楓が踏ん張り5回、6回と無失点で切り抜け、6回裏、中川智裕に2ランが飛び出し逆転しました。だが、しかし! 7回に再び1点を返され6対6の同点に。日本選手権の切符をかけた一戦らしい、取った取られたのシーソーゲームになりました。

 

 こういうときにはミスが出た方が負けるのが定石です。7回裏、相手の死球と2つのエラーで勝ち越すと、流れは完全にこちらに傾きました。相手からすれば追いついた直後のミスですから、流れを手放すことになりました。その後も1番の根岸晃太郎、代打・高本康平、5番・北阪真規のタイムリーが出て、この回一挙に6点。8回にも1点を加え13対6、コールド勝ちを収めました。

 

 序盤の失点を追いつき、さらに終盤は相手のミスを突き、勝ち越すことができました。2番手の横山はスカウトも大勢見に来ている中、持ち味であるパワーピッチを披露していました。少々コントロールはアバウトですが、それでも力強い球を投げ込み、相手をねじ伏せた印象です。ピンチになってもど真ん中にズバッと投げ込む気持ちの強さも見せてくれました。攻撃陣もつなぎの意識を持って、結果、大量点につながりましたね。

 

 セガサミーは去年、都市対抗でベスト4に入り、そして今回、5大会ぶりに日本選手権への出場を決めたことで、チームとしての成長を感じています。JABA大会では出場切符はとれなかったものの良い戦いをしていたし、今回のような一発勝負で勝ちきれるようになった。チームとして地力がついてきたな、というところです。

 

 とはいえ、まだまだこれからです。私はいつも「栄光は一瞬、準備は一生」と言っていますが、勝って兜の緒を締めよではありませんが、今回も日本選手権に向け、多くのチームや大学の協力でオープン戦を行い、準備を整えています。相手のデータも集め、対策を練り、やれることをやって日本選手権に乗り込みます。

 

 いつも言っていますが、やはりどんな大会でも初戦の入り、立ち上がりが重要です。相手のNTT西日本は去年の都市対抗でも戦い、しかも大原周作監督はPL学園(大阪)の後輩です。JABA京都大会に遠征したときには練習場所としてグラウンドを借りたこともあり、縁が深く、よく知っているチームです。トップバッターの酒井良樹、ドラフト候補の藤井健平、投手も浜崎浩大、吉川貴大と駒が揃っています。都市対抗は7対2でうちが勝ちました。今回、日本選手権は関西で開催ということで向こうには地の利があります。どんな試合になるのか楽しみですね。

 

 日本選手権の目標は、いつも言っていることですが「一戦必勝」、この積み重ねです。優勝の2文字を口にしないのは、当然、どのチームもそれを狙っているからです。ひとつひとつ勝っていくことが何よりも重要、そして大変なことですからね。とにかく初戦を勝ち、そしてその次と、勝利をひとつずつ積み重ね、東京へ戻ってきたいものです。応援よろしくお願いします。

 

 で、最後に古巣の広島カープについて触れておきましょう。新型コロナウイルス陽性者が出たり、コンディション的に難しいこともあったでしょうが、最近は林晃汰や法政の後輩・宇草孔基など若い選手がよくやっています。栗林良吏はルーキーながら抑えとして頑張っていますが、いかんせん勝ちゲームが少ないので投げる間隔が空いてしまうのが気がかりですね。

 

 こういうときほど選手たちには明るく野球をやってもらいたい。私が現役のとき、連敗中は「次よ、次」と切り替えてやっていましたが、今の選手もそうやって切り替えてやれているのかな、と思います。プロ野球は長丁場のリーグ戦だから、そうやって切り替えていかないと体も持たないし、メンタルだってダメージを受けます。

 

 そして気になるのは首脳陣です。選手は「次、次」と切り替えていけばOKですが、マスコミやファンの批判の矢面に立つ首脳陣、特に監督はそうもいきません。テレビに映る佐々岡真司監督を見ていると、私も同業者として痛いほど気持ちがわかります。こういうときに監督を支えたりサポートする体制はできているのでしょうか。その役目を担うのはコーチ陣、特にヘッドコーチですよね。監督のサポート体制の改善をお願いしたいものです、とカープOBとして一言申し上げておきましょう。

 

<このコーナーは毎月1日更新です>


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