朝日新聞社が5月15、16日に実施した全国世論調査(電話)によると、東京五輪・パラリンピックの開催について、「中止」が最も多く43%、「再び延期」が40%、「今夏に開催」は14%という結果が出た。

 

 

 問題は、この数字をどう読むかだ。「再び延期」も五輪・パラリンピック肯定派にカウントすれば、54%が開催そのものには前向きととらえることができる。

 

 一方、開催時期を「今夏」に限定すれば、「再び延期」と「中止」を含め、否定派は83%と圧倒的多数を占める。ワクチン接種の遅れが、「今夏に開催」に暗い影を落としているようだ。

 

 では、いったいどこでボタンを掛け間違えたのか。

 

 周知のように昨年3月24日、安倍晋三首相(当時)、小池百合子都知事、森喜朗大会組織委員会会長(当時)、橋本聖子五輪・パラリンピック担当大臣(当時)、そしてIOCトーマス・バッハ会長らが参加した電話会議により、2020年東京大会の1年延期が決まった。

 

 実は安倍前首相と森前会長は、事前にふたりだけで打ち合わせを行っている。

 

 そこで安倍前首相から「1年延期の線でいこう」という話が出たという。

 

 この主張に森前会長は最初、疑義を呈した。

「コロナが終息しないこともありうる。2年は考えなくていいのか」

「いや、2年だったらやれないだろう。それに、その頃にはもうワクチンができている」

「総理がそこまで、おっしゃるなら……」

 

 電話会議で、安倍前首相が「人類がコロナに打ち勝った証として成功させる」と決意を伝えたところ、バッハ会長は「100%同意する」と応じ、1年延期が正式に決まったのである。

 

 歴史に“イフ”は禁句だが、最初から2年延期を主張していれば、日本側も、ここまで追い詰められることはなかったのではないか。1年延期は正しかったのか、間違っていたのか。後世の研究者や歴史家に判断を委ねるしかあるまい。

 

<この原稿は『週刊大衆』2021年6月7日号に掲載されたものです>

 


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