(写真:自身が歩む今後の道筋について語った五郎丸氏 ©ヤマハ発動機ジュビロ)

「後悔はひとつもない」
 晴れやかな顔がすべてを物語っているようだった。14日、今季限りでの現役引退を表明していた五郎丸歩氏が記者会見を開き、今後への想いを語った。

 

「35年間という長い時間で、ラグビーという競技を通じて多くの方々と出会い、多くの仲間とプレーしてこれたことを幸せに思います」
 ジャパンラグビートップリーグ(TL)ではヤマハ発動機ジュビロのみでプレー。五郎丸氏はベストフィフティーン5回、得点王とベストキッカー3回受賞した。積み上げた1282得点はTL最多記録だ。ジャパンの初キャップは早稲田大学在学中の2005年4月。15年W杯イングランド大会ではバイスキャプテンとして、優勝候補の南アフリカを破るなど3勝を挙げるジャパンの躍進に大きく貢献した。

 

 TL開幕前の昨年末に今季限りの現役引退を表明した。12月の会見時点では「全くの白紙。自分の役目を終えた後に考えたい」と話していた自身のセカンドキャリアを明かした。
「22年1月に開幕する新リーグでヤマハ発動機が新設するプロクラブにおいて、事業化、または地域貢献の象徴として、私もクラブの一員としてやっていきたいなと思っております」

 

 新リーグへの参入のため、ヤマハ発動機は新会社を設立する。ヤマハのユニホームを脱いだばかりの五郎丸氏は7月1日付けで新会社のスタッフに就く。「新会社がラグビー界に新たな風を吹かせる。そこに自分の人生を乗せて、ともに成長していきたい」。新クラブのチーム名などは6月23日に発表される。五郎丸氏の役職名については、本人によれば「7月上旬」に明らかになるという。

 

(写真:現主将の大戸<左>から花束を贈呈された ©ヤマハ発動機ジュビロ)

「この会見を聞いて、アンバサダー的な立場のイメージを持たれるかもしれませんが、私はクラブの一員として、プロ化に向けて静岡に住み、関わっていく。ずっとお世話になります」と静岡“残留”を明言した。
「先日、新社長の山谷(拓志)さんとお話をさせていただく中で、このクラブの魅力を改めて感じ、このクラブにしかできないことが必ずあると思いました。また、その可能性を叶えてくれるだけの環境が静岡県にはあると確信しております。監督やコーチといった指導者、現場サイドではなく、マネジメントサイドの方で活躍していけたらと思い、このクラブ、この地を選びました」

 

“残留”の決め手は「単純に静岡、ヤマハ発動機が好きなのが大きな理由」と述べ、まちの魅力について、こう説明した。
「エコパスタジアムを聖地化しようという県の動き。ラグビーに対して熱を持って取り組まれている。プロ化に向けてのサポートは他の県にはない魅力を出せるのが静岡ではないかと思っています」

 

 現役時代からマネジメントについては関心を持っていたという五郎丸氏。目指す道の先にはクラブ経営者があるのか。
「新社長からは『飾りではなく、しっかりとクラブ経営を学んでほしい』と言われました。まずはチケットから売り、社長になれるまでの実力を、しっかりつけていきたいと思います」
 日本ラグビー界に多大な貢献を果たしてきた男が、新たな旅路に向かう。

 

(文/杉浦泰介)