この夏、列島はオリンピック一色に染まっています。日本選手団のメダルラッシュを横目に、セガサミー野球部は秋の大一番、都市対抗野球大会の出場権を勝ち取るべく、練習やオープン戦でレベルアップを図っています。まあ、暑さの中ですのでオーバーワークにならないようにしながら、充実したメニューをこなす日々です。今回のコラムは6月29日から行われていた社会人野球日本選手権のことを振り返りましょう。

 

 「その場所で咲け!」

 初戦は7月2日、NTT西日本と戦いました。相手の大原周作監督はPL学園の後輩で、昨年の都市対抗野球でも対戦しました。試合前には挨拶に来てくれて、非常にスポーツマンシップあふれる人物です。互いに知っている仲であり、大原監督としてはちょっとやりにくい部分もあったんじゃないでしょうか。

 

 さて、この試合の先発は陶久亮太が務めました。昨季まで抑えとして活躍していた彼を先発させたのは、修羅場で投げていた経験を買ってのことです。順当なら草海光貴を投げさせるところですが、草海は立ち上がりに課題があるので、陶久を先発に抜擢しました。

 

 3回か4回まで行ってくれれば良いと思っていましたが、5回途中まで投げてくれました。3点は取られましたが、きつい場面で投げていた経験が生きたのでしょう、ベンチの期待以上の好投を見せてくれましたね。

 

 それに応えるように攻撃陣も2回に3点を奪い、3回には澤良木喬之、北阪真規のアーチ攻勢もあり、序盤はうちのペースで進みました。ですが、中盤以降はNTTが巻き返し、8回を終わって5対5の同点。タイブレークも視野に入れていましたが、土壇場、9回表2死から1番の根岸晃太郎がタイムリーを打ってくれて勝ち越し。なんとか初戦をものにすることができました。

 

 出場を決めてからこの初戦まで間が空いていたこともあって、選手たちの調整がどうかと心配していた部分はありました。しかも、この日は小雨が降り、グラウンドコンディションも決して良くはありませんでしたが、その中でよく勝てたと思っています。

 

 さて2回戦は日本新薬戦。ここの先発は草海と決めていました。相手ピッチャーも良い出来でしたが、初回、澤良木の2ランで先制し、それを最後まで守りきりました。見事な完封でしたよ。これは草海と須田凌平のバッテリーが相手の打者をよく研究して、試合に臨んだ結果でしょう。草海も完封したことで今後にもつながっていくことでしょう。

 

 そして準々決勝の相手は、昨年の都市対抗で戦い、そして敗れたHondaです。うちとしてはリベンジマッチとして臨み、選手たちも「今度こそは」と意気込んでいました。実際、向こうの開田成幸監督は「やりにくかった」と言っていました。

 

 先発は横田哲で、準々決勝は彼を投げさせようと決めていました。セガサミーが日本選手権で準優勝(14年)したときの主戦投手で、今年に入って球の威力が戻ってきており、この試合でも右打者のインサイドへズバッと攻める強気なピッチングで、Hondaに得点を与えませんでした。5回からは横山楓をマウンドに送り、彼は持ち味である150キロの力のあるボールでHonda打線をねじ伏せました。横田、横山の2人で被安打は4ですから合格点ですよ。

 

 一方、打つ方は6安打でチャンスは築いたものの、文字通りあと1本が出ず、ホームが遠かった。そして都市対抗と同じく延長に入り、タイブレーク。1死満塁からの選択打順でしたが、4番の澤良木、5番の北阪が連続して空振り三振に倒れ、無得点。その裏、マウンドは石垣永悟に任せました。1つアウトは取りましたが、次のバッターにライト前に弾き返され、サヨナラ負け。抑えてほしかったというのが正直なところですが、高めに外そうとした球がやや真ん中に入り、それを痛打されました。

 

 最後のプレーになったこのライト前の当たり、一瞬「ライトゴロか!」と思いました。ライト植田匡哉は打球が来る前から、「自分のところに転がってきたら……」と準備していたようですが、ファースト根岸晃太郎は、外野に飛んだ瞬間に「あ、やられた」と思ってしまったのでしょう。植田のファーストへの送球、試合後にいろんな人から「タイミングはアウトだったね」と言われました。根岸を責めるプレーではありませんが、でも、最後の最後まで、ゲームセットの瞬間まで様々な場面を想定してプレーすることが大切です。リーグ戦のプロと違い、社会人野球は1つの負けで終わるわけですから。

 

 ベスト8進出ということで、よく戦ったと言えます。セガサミーは良いチームになっていると胸を張れますが、でも大きな大会で優勝するためにはプレーの細部にわたって、さらなる精度が求められます。セガサミーらしい豪快な野球は貫きながら、凡事徹底、細かい部分にも気を配り、秋の大一番を迎えたいと思っています。

 

 この後は大学チームや他地区企業とのオープン戦を行い、その中で新しい戦力が出てきてもらいたい。プロと違い、足りないから補強ではなく、今いる選手の伸びしろで補わなければなりません。日本選手権では飯田大翔、舘和弥と2人の若い(ともに22歳)投手をベンチに入れていました。大差をつけた試合があれば投げさせたかったけれど、どれも僅差の試合だったのでそれは叶いませんでした。これからのオープン戦で彼らには出てきてもらいたいですね。

 

 あと、森井絃斗は今季、なかなかコンディションが整いませんが、今回もチームに帯同してくれて、打撃投手など裏方を買って出るなどチームのために尽くしてくれました。そうした気持ちが嬉しいですね。また復調し、秋に向けて戦力になってもらいたいものです。

 

 選手たちにはいろいろ言っていますが、何よりも「明るく野球をやろう」と。メジャーリーグで大活躍の大谷翔平君のように、はつらつとしたプレーを見せてもらいたい。当然、「大谷のようになれ」と言っても体格や素質に差があるので、同じことはできません。でも、いつも言っているのは「自分たちが置かれた場所で咲いたら良いんだからな」と。

 

 さて、セガサミーが8強で終えた日本選手権は、大阪ガスが2大会連続で優勝を飾りました。選手、関係者の皆さん、おめでとうございます。そして、大阪遠征では練習場を貸していただきありがとうございました、と。

 

 最後に現在、行われているオリンピックの野球について。参加しているのはわずか6カ国で、日本以外は決してトップレベルの選手が代表に入っているわけではありません。そうした状況で侍ジャパンは感動的でインパクトのある戦いを見せられるの、かと少し心配です。最近、野球の話題といえばエンゼルスの大谷君一色です。侍の皆さんには是非、大谷級のインパクトを、日本中に与えてもらいたいものです。私もテレビ桟敷から応援していますが、さてどうなりますか……。

 

 

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