(写真:僅差でファイナルを制し、賞金3000万円を手にしたROYALBRATS)

 日本発のプロダンスリーグ「第一生命 D.LEAGUE」のCHAMPIONSHIP(CS)が東京ガーデンシアターで行われた。レギュラーシーズンの上位4チームで争われたCSは、2位のavex ROYALBRATS(エイベックスロイヤルブラッツ)が1位のFULLCAST RAISERZ(フルキャストレイザーズ)とのファイナルを制し、初代王者に輝いた。

 

 今年1月に開幕したD.LEAGUE。9チームによる6カ月間の戦いが幕を閉じた。初代王者の称号と賞金3000万円を獲得したのは、ダンサー・振付師として活躍するRIEHATAが率いるROYALBRATSだった。

 

 CSは各ジャッジの合計点によるポイント制のレギュラーシーズンと異なり、1対1の投票制。ジャッジ8名プラスオーディエンス投票による9票のうち支持者が多いチームが勝利となる。セミファイナル第1試合はROYALBRATSが総合3位のSEGA SAMMY LUX(セガサミールクス)を6対3で下した。続く第2試合はRAISERZが総合4位のKOSÉ 8ROCKS(コーセーエイトロックス)を6対3で破った。

 

 ファイナルに勝ち上がったのは、HIPHOPのROYALBRATSとKRUMPのRAISERZ。レギュラーシーズンの総合順位1、2位を争った両チームだ。各ラウンドの順位によるポイントの合計点は96対94で、RAISERZが勝者となったが、実は合計獲得ポイントは1008.5で並んでいた。ジャッジポイントはRAISERZが801.5に対し、ROYALBRATSが784.5。オフィシャルアプリ会員による投票からなるオーディエンスポイントはROYALBRATSが224.0とRAISERZの207.0を上回っていた。

 

(写真:ディレクターのRIEHATA<中央手前>を中心に纏まったダンスを披露)

 ハーフタイムショーとして催された2組のゲストパフォーマンス、LUXと8ROCKSによる3位決定戦を終え、ファイナルのゴングが打ち鳴らされた。先にパフォーマンスをしたのはROYALBRATS。セミファイナルに続き、チームディレクターRIEHATAがSPダンサーとしてSHOWに参加した。青と銀を基調とした衣装を纏い、勝負に挑んだ。RIEHATAを中心に緩急をつけたHIPHOPダンスを披露。8人がシンクロしつつも、RIEHATAの存在感は際立った。彼女のスター性を生かしたSHOW。RIEHATAを師と仰ぎ、集ったチームの成り立ちが表現されているようだった。最後は横一列に並び、両手を突き上げた。

 

 後攻のRAISERZは賭けに出た。チームディレクター兼ダンサーのTwiggz“JUN”の号令の下、手を叩き、地面を踏み鳴らす。自らの肉体を打楽器とした。音楽に合わせて踊るのが通常のSHOW。曲はチームのオリジナルもあれば、有名な楽曲を使用する場合もある。音楽にダンスを乗せることで、作品の世界観が広がり、その魅力は膨れ上がる。その武器をあえて捨てたのだ。「ダンス自体が身体言語による音だと思う。その音と自分たちの声でどこまでやれるかを勝負したかった」とJUN。チームのベースとなるKRUMPを最大限に表現するために音楽を省く選択をしたのだろう。緊張感を漂わせた静寂の中、8人のダンサーたちが力強いストンプで音と熱量を会場に響かせた。最後は飛び上がって、「RAISERZ!」と叫んだ。

 

 両チーム約2分ずつのパフォーマンスが終わり、運命のジャッジが下された。ヴィジョンに映し出されたジャッジの名前が記されたパネル。それが勝者の色に染まっていく。青はROYALBRATS、赤がRAISERZだ。青、青、赤、青、赤、青、青、赤、赤。5対4の僅差でROYALBRATSに軍配が上がった。青を推したジャッジの秋元康は「素晴らしいファイナルを目撃できたことを光栄に思います。最後まで迷いました」と判定を振り返った。放送作家、作詞家、プロデューサーを務める日本エンターテインメント界のヒットメーカーが先に言及したのはRAISERZについてだ。

「置きにいくパフォーマンスであれば結果は違っていたかもしれない。だけどあえて難易度の高いことをやったところが、これからのD.LEAGUEを予感させるものだった」

 

(写真:RAISERZは鍛え上げた肉体を駆使し、音を打ち鳴らした)

 この点は同じくROYALBRATSを支持したダンス&ボーカルグループTRFのダンサーSAMも「決勝はチャレンジだった。王道でいけば、もしかしたら結果は変わっていたかもしれない」と言い、こう続けた。

「ストンプというリズムキープの難しいダンスで攻めてきた。そこがRAISERZの漢気。ただ観ている時に鳥肌が欲しい。そこでリズムが崩れる部分があると引っかかってしまう」

 2人のジャッジはRAISERZの姿勢を高く評価しつつも、その戦略が敗因にもなったと見る。勝ったROYALBRATSに対してはSAMが「今日の準決勝、決勝は自分たちのいいところを出してきたのがわかった」と称えたように、正攻法で“SWAG”(ヤバイ、カッコイイ)を表現した。振付を担当したRIEHATAが「誰かに勝つことではなく自分に勝つしかない」と貫いた信念で栄冠を勝ち取った。

 

 半年間の戦いを終え、D.LEAGUEを立ち上げた“カリスマカンタロー”こと神田勘太朗COOは「『ダンサーがスーパースターになる時代をつくりたい』と言い続け、ここまで来られました。これからが本番」と言い切った。

「小さい子たちがダンサーに憧れ、みんながダンスを観るのを当たり前の環境にする。ダンスはスポーツだけでなくアート、カルチャー、いろいろな文脈があり、それらをミックスできる新世代のもの。ダンスは日本が世界一の力を持っていても知られることがなかった。だから僕はたくさんの人に知ってもらえる場をつくりたかった」

 

 ダンサーが輝ける舞台となったD.LEAGUE。来季は今年11月に開幕。新規参入の2チームが加わり、11チームで争う。神田COOは「これからは皆さんと共に成長していかないと、ダンスシーンは下に潜ってしまう」と気を引き締め、こう誓った。

「毎年良くしていきます。Dリーガー、関係各社、スポンサーの皆様に僕たちはダンスで恩返しをしていく。これから10年、20年、100年続いていくように頑張っていきます」

 

(文/杉浦泰介、写真/©D.LEAGUE 20-21)