第257回 井上尚弥はバンタム級世界王座を統一できるのか? 今後の展望を読み解く!

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(写真:圧倒的な強さでバンタム級最強への道を突き進む井上)

「4団体の王座を統一してバンタム級最強を証明したい!」

 6月19日(現地時間)、米国ラスベガス・ヴァージンホテルのリングでマイケル・ダスマリナス(フィリピン)に3ラウンドKOで完勝しWBAスーパー、IBF世界王座を防衛した後、井上尚弥(大橋)は改めてそう口にした。

 

「4団体王座統一」とは、WBA、WBC、IBF、WBOすべてのベルトを手に入れること。

この偉業を果たしたボクサーは、ミドル級のバーナード・ホプキンス(米国)、クルーザー級のオレクサンドル・ウシク(ウクライナ)ら過去に6人しかいない。井上がこれを成し遂げればバンタム級では初、日本人としても初の快挙となる。

 

 井上は現在、WBAとIBFの2団体を制している。「最強」を証明するために手に入れようとしているは残り2本のベルト、WBCとWBOの王座だ。

 

 4団体王座統一の機会は、年内にも訪れるかと思われた。

 8月14日(現地時間)にWBC王者のノニト・ドネア(フィリピン)とWBO王者ジョンリル・カシメロ(フィリピン)が対戦することになっていたからだ。ここでWBC、WBO両王座が統一され、その勝者と井上のマッチアップが固まっていたのである。

 

 だが、そうは事が運ばなくなった。

 ドーピング検査を積極的に受けようとしなかったことを主な理由に、ドネアがカシメロとの対戦を拒否し試合は中止に。カシメロは同日に、キジェルモ・リゴンドー(キューバ)と対戦することとなった。

 

 WBCとWBOのバンタム級王座が統一される機会は失われた。

 よって井上は今後、両団体の王者と順に闘い、4団体王座統一を目指すことになる。

 マッチメイクのパターンはいくつか考えられるが、まずは年内にWBC王者であるドネアとの再戦に臨む可能性が高いのではないか。

 

 一昨年11月、さいたまスーパーアリーナ『WBSS(ワールド・ボクシング・スーパーシリーズ)決勝戦』で両雄は拳を交えた。結果は、11ラウンドにダウンを奪った井上が判定勝ち。だがこの一戦は、プロ転向後全勝の井上がもっとも苦しんだ闘いでもあった。

 再戦もまた、白熱の好勝負になるだろう。

 

 最強決定戦は来春か!?

 

(写真:ドネアとの初対戦となった一昨年11月のWBSS決勝は激闘だった)

 ここで勝利したならば、井上は来年の春あたりに、カシメロvs.リゴンドーの勝者と「4団体王座統一」をかけて大勝負の舞台に上がることになるか。

 

 いずれが相手でも興味深い。

 

 井上とカシメロは、以前からSNS上で舌戦を展開。

「イノウエは、モンスターなんかじゃない。本当のモンスターは俺だ。奴は俺のことを恐れて逃げ回っている臆病者だ!」と発信するカシメロに対して、井上は先日、こう返した。

「もう大口は叩けないでしょう。ドーピング検査を回避する奴に闘う資格はない。お疲れでした」

 因縁があり、ともに一撃必倒の強打を誇る。スリリングな闘いとなろう。

 

 また、すでに40歳でピークを過ぎているとはいえ、リゴンドーがカシメロを破る可能性も十分にある。2000年シドニー、2004年アテネと2大会連続で五輪金メダリストに輝いていた彼の実力は折り紙つきだ。特にデフェンス能力の高さには目を見張るものがある。これまでに井上が闘ったことのないタイプの完成度の高い選手。「井上vs.リゴンドー」も観てみたい。

 

 ここまで記したのは、現時点での井上にとっての理想的なファイトスケジュールだ。

 大手プロモーション、トップランク社と契約を結んでいるとはいえ今後のマッチメイクが順調に整うとは限らない。

 

 プロボクシングのマッチメイクは実に難しい。魑魅魍魎とした部分もある。

 ドネアではなく、先にカシメロvs.リゴンドーの勝者と対峙することになるかもしれないし、上手く話がまとまらない場合は、井上がスーパー・バンタムに階級を上げ4階級制覇を目指すことになるかもしれない。

 

 日本ボクシング史上最高傑作・井上尚弥の究極の闘い「4団体王座統一戦」が、来年早々に実現することを切に願う。

 

近藤隆夫(こんどう・たかお)

1967年1月26日、三重県松阪市出身。上智大学文学部在学中から専門誌の記者となる。タイ・インド他アジア諸国を1年余り放浪した後に格闘技専門誌をはじめスポーツ誌の編集長を歴任。91年から2年間、米国で生活。帰国後にスポーツジャーナリストとして独立。格闘技をはじめ野球、バスケットボール、自転車競技等々、幅広いフィールドで精力的に取材・執筆活動を展開する。テレビ、ラジオ等のスポーツ番組でもコメンテーターとして活躍中。著書には『グレイシー一族の真実 ~すべては敬愛するエリオのために~』(文春文庫PLUS)『情熱のサイドスロー ~小林繁物語~』(竹書房)『プロレスが死んだ日。』(集英社インターナショナル)『ジャッキー・ロビンソン ~人種差別をのりこえたメジャーリーガー~』『伝説のオリンピックランナー“いだてん”金栗四三』『柔道の父、体育の父 嘉納治五郎』(いずれも汐文社)ほか多数。

連絡先=SLAM JAM(03-3912-8857)

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