6月に入りメジャーリーグは粘着物質など異物を使用した不正投球に目を光らせている。

 

 

<この原稿は2021年7月19日号『週刊大衆』に掲載されたものです>

 

 ダルビッシュ有(パドレス)や大谷翔平(エンゼルス)もイニングの合い間に審判から入念な“身体検査”を受けた。

 

 不正が発覚した投手には退場に加え10日間の出場停止処分が科せられる。

 

 もっともメジャーリーグにおける“不正投球”は今に始まったことではない。その道の大御所といえば通算314勝でサイ・ヤング賞にも2回(1972年、78年)輝いているゲイロード・ペリーだろう。

 

 ペリーはスピットボールの名手で、ツバ以外にもワセリンやポマードなど、ありとあらゆる“異物”をボールにつけていたと自著『オレとスピッター』で告白している。

 

 さらには、こんな秘話も。

<ワセリン会社の社長にコマーシャルに使ってくれないか、と頼んでことがある。いつもその会社の製品を愛用していたからだ。ところが社長は、おれがワセリンを何に使っているかを知って驚いた。ワセリンはピッチングに使うものではない、といってことわられた>(『野球は言葉のスポーツ アメリカ人と野球』伊東一雄&馬立勝著・中公新書)

 

 同書には、こんな記述もある。

<スピット・ボールの禁止がいかに野球に劇的な変化を与えたかは、禁止前のベーブ・ルースのシーズン最高本塁打数が29本にすぎなかったのが、禁止された年に54本に跳ね上がったのでもわかる>

 

 近年、メジャーリーグは“投高打低”だ。今年4月終了時点で両リーグトータルの打率は2割3分2厘。2年前の2割5分2厘から大きく低下した。

 

「オーナーの多くは打撃戦を好む。2対1の試合よりは6対5の試合の方がお客さんが喜ぶからね。今年に入ってからのピッチャーの不正投球に対する規制強化には、そうした背景もあると思うよ」(MLBの元日本人フロント)

 

 いたちごっこのような気もするが……。

 


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