日本人選手が外国人選手の飛距離に驚き、目をパチクリさせるシーンはこれまで数え切れないほど見てきたが、その逆は初めてだ。

 

 

<この原稿は2021年8月2、9日合併号『週刊大衆』に掲載されたものです>

 

 7月9日(日本時間10日)、大谷翔平(エンゼルス)がマリナーズの本拠地T-モバイル・パークの右翼4階席に叩き込んだ33号は、自身メジャーリーグ2位となる463フィート(約141メートル)を記録した。

 

 ベンチでこのホームランを目のあたりにした同僚のジャスティン・アップトンは、まるでUFOでも目撃したような表情で頭を抱え、視線を宙に泳がせた。

 

「もうショーヘイがどれだけ飛ばしても驚かないよ」

 

 アップトンと言えば、これまで通算321本塁打を記録しているメジャーリーグを代表する強打者のひとり。オールスターゲームにも4回出場している。そのアップトンが「いったいどこまで飛ばすんだ」と呆けたような顔で打球を見送る姿に大谷のモンスターぶりが表れていた。

 

 463フィートという数値に首をひねった者もいる。エンゼルスのジョー・マドン監督は「あり得ない」と言下に否定した。もっと飛んでいる、というわけだ。「500フィート(約150メートル)は飛んでいた」という声もある。

 

 この5日前のオリオールズ戦、大谷は本拠地でヤンキース時代の松井秀喜が記録した日本人年間最多本塁打の31本に並んだ。

 

 調べてみると、松井が31号に到達するのに開幕から674打席を要しているのに対し、大谷はその半分以下の315打席。約10打席に1本の割合で本塁打を量産しているのだ。

 

 かつてイチローが「ショーヘイはこっち(MLB)でもホームランバッター。松井は中距離打者」と評した時には「これを聞いたら松井が気を悪くするんじゃないか」と訝しく思ったものだが、イチローの見立て通りだった。

 

 最大のライバルであるウラジミール・ゲレーロJr(ブルージェイズ)とは13日時点で5本差。進境著しい若手だが、まだ大谷の敵ではあるまい。

 


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