23日、東京オリンピックの開会式が国立競技場で行われた。新型コロナウイルス感染拡大により、パラリンピックと共に初の延期となった今大会は、過去最多33競技339種目を実施。206の国や地域、団体が参加し、8月8日まで開催される。

 

「TOKYO!」

 2013年9月、アルゼンチン・ブエノスアイレスでIOCジャック・ロゲ会長(当時)が読み上げた瞬間、日本は招致レースに勝った。1964年大会以来、2度目の開催が決まった瞬間だった。

 

 この日から開催まで8年の歳月が経ち、本当にいろいろなことがあった。内閣総理大臣、東京都知事、大会組織委員会会長、JOC会長……。当時招致に関わった者は誰もその重職にいない。

 

 昨年3月、新型コロナウイルス感染拡大により、1年の延期が決まった。世界を襲うパンデミックはいまなお、終息の気配を見せていない。大会開催の是非を問う声が上がり、中止を求める意見も止んだわけでない。

 

 国民が不安と不満を抱えたまま、祭典は幕を開けた。21日からソフトボール、サッカー、この日はボート、アーチェリーが実施され、大半の競技と同様に無観客で開会式を迎えた。

 

 定刻通りの午後8時にスタート。招致から開催までの映像が流された。「21」からカウントダウンは始まり、国立競技場を舞台にパフォーマンスが披露された。その中心には看護士でボクサーの津端ありさがいた。

 

 彼女はコロナ禍の影響で世界最終予選が中止となったこともあり、選手としてオリンピック出場は叶わなかった。その津端を中心に、パフォーマーたちはコロナ禍でのアスリートの苦闘を表現した。

 

 オリンピック発祥のギリシャから入場し、続いて難民選手団、そこから3つの開催国(日本、フランス、アメリカ)を除く国や地域、選手団が五十音順に紹介されていく。BGMは『ドラゴンクエスト』『ファイナルファンタジー』などの人気ゲーム音楽。約2時間かけ、200を超える選手団がマスクをつけて入場した。

 

 日本選手団主将・山縣亮太(陸上)、副主将・石川佳純(卓球)による選手宣誓がされ、ドローンを駆使したパフォーマンス後に組織委員会の橋本聖子会長、IOCトーマス・バッハ会長のスピーチが行われた。天皇陛下による開会宣言。花火が打ち上げられた。

 

 福島からスタートした聖火は121日間の旅路を終え、この日東京に届けられた。柔道の野村忠宏氏、レスリングの吉田沙保里氏が聖火を持って入場。その火は野球の松井秀喜氏、巨人の長嶋茂雄名誉監督、福岡ソフトバンクの王貞治球団会長に繋がれ、医療従事者、パラトライアスロンで東京大会の代表に内定している現役パラアスリートの土田和歌子、東日本大震災の被災地3県(岩手、宮城、福島)の子どもたちへ。最後はテニスの大坂なおみが特設の聖火台に火を灯した。

 

 盛大な花火が打ち上げられ、東京オリンピックの開会式は終演となった。過去にない異例の大会がスタートした。

 

(文/杉浦泰介)