26日、東京オリンピック体操競技男子団体が有明体操競技場で行われた。予選1位の日本代表は262.397点で2位に入り、銀メダルを手にした。金メダルを獲得した2004年アテネオリンピックから5大会連続の表彰台となった。金メダルは262.500点のROC(ロシアオリンピック委員会)。前回銀メダルのロシアは組織的なドーピング問題によりROCとして参加している。3位には2大会連続で中国が入った。

 

 日本は北園丈琉(徳州会)、橋本大輝(順天堂大)、萱和磨(セントラルスポーツ)、谷川航(セントラルスポーツ)というオリンピック初出場4人で連覇を目指した。

 

 2日前の予選では262.251点でライバル中国、ROCを上回ってトップ通過。過去5大会で3度優勝(日本は2度)の中国が予選2位で決勝を同組で回った。各種目3人の合計得点で競う決勝は、4人全員が出場し、上位3位のスコアが反映される予選とは違い、ミスが許されない緊張感が増す。

 

 第1組となる日本と中国は床運動(ゆか)、あん馬、つり輪、跳馬、平行棒、鉄棒の順に演技をした。中国の1人目が着地で手をつくミスがあり、13.166点と得点を伸ばせなかったのに対し、日本は北園、橋本、谷川の3人が安定した演技を披露。全員がほぼノーミスで14.500点以上をマークした。第1ローテーションを終え、日本はトップに立った。

 

 第2ローテーションはあん馬。日本はここでも3人全員がミスのないパフォーマンスを見せた。主将の萱が14.566点で勢いをつけると、橋本(14.800点)と北園(14.200点)も続いた。第2ローテーション終了時点では日本と中国を抑え、第2組に入ったROC(ロシアオリンピック委員会)が1位に躍り出た。2位は0.273点差で日本、3位には1.441点差で中国が入った。

 

 第3ローテーションのつり輪をあまり得意としてない日本は、目立ったミスこそなかったものの、ここで順位を3位に落とす。第4ローテーションの跳馬で盛り返したものの、ROCと中国が得点を伸ばしたため、その差は開いた。トップROC、2位・中国とは3点以上の差をつけられた。

 

 残り2種目で追い上げを図りたい日本は、第5ローテーションの平行棒でその差を詰める。萱と北園が15.000点と高得点。谷川も14.666点でまとめ、通算218.597点とした。トップは依然としてROCだが、その差は1.271点。射程圏に入って最終ローテーションの鉄棒を迎えた。

 

 まずは萱の演技。ミスなく技を繋ぎ、最後の着地こそ少し乱れたが14.200点をマークした。ゆかで最終ローテーションを迎えたROCとの差をわずかに詰める。続く日本人最年少18歳の北園が力強いパフォーマンスでG難度のカッシーナ、E難度のコールマンと離れ技を決めた。着地は後ろに小さく一歩下がる程度にまとめた。

 

 ジワリジワリと差を縮め、2位・中国と0.464点、トップROCとは0.537点だ。日本の最終演技者はエース橋本。19歳の大学2年生は予選、鉄棒で唯一15点台をマークしている。大逆転は十分に可能性がある。ミスは許されず、最高のパフォーマンスが求められる場面で橋本は期待に応えた。カッシーナ、コールマンの離れ技を次々と決める。フィニッシュの伸身新月面宙返り下りの着地をビタッと決めた。冨田洋之、内村航平といった体操NIPPONのエースたちが見せてきた痺れるような着地。エースの系譜が継がれていくのを感じさせた。

 

 ROCの最終演技者がゆかを終えた。あとは2人の得点を掲示されるのを待つだけだ。まずは橋本。15.100点――。まずは中国をまくり、2位に浮上した。ROCが14.562点以下なら日本が金メダルだ。14.666点――。ROCの選手団が歓喜に沸いた。日本は0.103点差で連覇を逃した。

 

 惜しくも頂点には届かなかったが、日本の美しい体操は表現できた。主将の萱は「やり切ることができ、清々しい気持ち。悔しさもあるんですが、全員がミスなく演技を繋ぐことができたことは価値がある」と胸を張った。リオデジャネイロオリンピックで金メダルを獲得した後、世界選手権では中国、ロシアの後塵を拝し、銅メダルが続いていた。再び世界の頂点への視界は開けた。

 

 18歳の北園は「銀メダルは一生忘れない。パリの向けての課題。次は金メダルを獲るしかない」と次を見据えた。19歳の橋本は「0.1(の差)はすごく重みがある。またパリに向けて頑張っていきたいです」と気を引き締めた。2人は2日後、個人総合決勝に出場し、金メダル獲得に挑む。

 

(文/杉浦泰介)