東京オリンピック卓球は29日に、女子シングルス3位決定戦、伊藤美誠(スターツ)(日本)対ユー・モンユー(シンガポール)が行われ、伊藤が4-1で勝ち、銅メダルを獲得した。日本女子史上初の五輪シングルスメダルとなった。

 

 伊藤と3位の座をかけ戦うことになったユーは準々決勝で石川佳純(全農)に4-1で勝利し、長くシンガポールのエースとして活躍してきた。第1ゲーム、伊藤はユーのショットに苦戦し、レシーブしたボールがネットにかかるなど、ゲームの主導権を奪えない。結局、11-6で先行を許してしまった。


 続く第2ゲーム。伊藤とユーは互いのサーブでポイントをキープしながら、主導権を握ろうと探り合いが続く。伊藤は8-8と同点の場面から強烈なレシーブでユーを圧倒。11-8とゲームポイントをタイに戻した。

 

 第3ゲームではユーの先行を許したものの、伊藤は中盤からサービスで立て直し、8-7と逆転。そこから連続してポイントを奪い10-9とリード。連続してオーバーとなったユーは首をかしげるも多く、結局、このゲームは伊藤が取り、ゲームカウント2-1とリードした。

 

 第4ゲームに入り、伊藤は左右にボールを散らす広角打法でユーを翻弄し、ゲームをリードする。8ー5と順調にゲームを進めていたが、途中、フォアのストレートがオーバーするなど、ユーに8-7と1点差に詰められる。ここで伊藤がタイムアウトを取り、流れを変えた。タイムアウトの後、連続してポイントを奪い、10-7。さらにポイントを奪い、11-7と第3ゲームをダッシュ。これでゲームカウント3-1とし、銅メダルまであと1ゲームに迫った。

 

 第5ゲームはユーが序盤、先行した伊藤を逆転する場面もあったが、4-2と伊藤が再びゲームの主導権を握ったところで、ユーがタイムアウトを取った。どうにか流れを変えたいとのユーの策だったが、伊藤は動じなかった。強烈なフォアハンドでポイントを奪い、5-2。さらにポイントを重ね7-2から、レシーブがネットインとなり7-3。流れは完全に伊藤に傾き、連続してポイントを奪って9-4。伊藤のサービスがユーのオーバーを誘い、ついにマッチピントを迎えた。

 

 ここで2連続でポイントを許した伊藤だったが、最後は冷静にサービスを決め、11-6で勝利。日本女子初のシングルスメダルとなる銅メダルを獲得した。

 

 日本卓球界の歴史に貴重な一歩を記すメダルとなったが、伊藤本人は目に涙を浮かべ、「これは悔し涙です」と複雑な心境を語った。

 

「ここで勝ったことは嬉しいけど、正直、悔しさの方が大きいかと思います。今大会を過ごしていく中、今回はサーブレシーブが良くなってはいたが、全体が良い段階で試合に臨めなかった。準決勝で負けた後もいろんな方々に励ましてもらい、気持ちは切り替えられました。でも、正直言うと、まだs準決勝の悔しさが……」


 伊藤が本当の笑顔を見せるのは、この後、団体戦で中国に雪辱を果たしたときとなる。

 

 

(文/SC編集部・西崎)