第130回 SCスタッフの白球コラム「国際試合の難しさと地の利」

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 東京オリンピックが23日に開幕し、今週28日からはいよいよ侍ジャパンの初戦(ドミニカ共和国戦・福島)が行われます。

 

 今回の五輪野球には6カ国が参加し、金メダルを争います。北京以来、実施競技として復活した野球ですが、次回パリでは実施されず、その次のロスでの開催も見通せない状況です。すなわち、これまで野球で金メダルのない(公開競技自体は除く)侍ジャパン(野球日本代表)にとって、最初で最後の金メダル獲得のチャンスです。


 さて、国際試合の前によく囁かれるのが「何が起こるかわからない」という言葉です。一体、なぜ国際試合はそうした不確定要素に左右されるのでしょうか。侍ジャパンのテクニカルディレクターで、2016年には中学生以下のU15野球日本代表を率いた鹿取義隆さんに聞きました。16年、福島県いわき市で行われたU15ワールドカップでは、準優勝しました。

 

「国際試合はまず審判の問題があります。U15のときはキューバなど参加国が2人ずつの審判を連れてきて、対戦のないチームの試合をジャッジします。だが、国によって基準がまちまちだし、何よりも語学力優先で選ぶから、レベルは……。微妙なボークをとられたり、ストライクゾーンもバラバラ。まあでもそれにカッカしてもしょうがないので、切り替えたりアジャストすることが求められますね」

 

 さらに、国際時代では「待ち」も重要になるといいます。

 

「U15ワールドカップは10日間で9試合という超過密日程でした。こうなると雨などで日程順延が難しいので、雨が止むまで待機することになります。何よりも日程消化が優先されるので、選手のメンタルを保ったりするのが難しかったですね」

 

 では、今回の侍ジャパンはどうでしょう。

 

「私は侍のテクニカルディレクターですが、今回の人選には関わっていません。その上で述べるとすれば、稲葉篤紀監督は先発、抑えの区別なく継投で戦っていくという意思を感じます。まあ、それは国際試合の定石でもあります。短期決戦ですから、打たれたら代える、点を取られたら代える。試合展開によっては次々と投手を繰り出す、そのあたりのベンチとブルペンワークが勝敗をわけることになりそうです」

 

 最後に鹿取さんは侍ジャパンの追い風として「地の利」をあげました。

 

「日本の夏は我々が想像する以上に海外チームには応えます。U15のときも中米のキューバ、ベネズエラ、メキシコといった暑さに強いイメージのあるチームの選手たちも"湿気がやばい"と、何人かが体調を崩していました。結局、日本は負けてしまいましたが、実は優勝したキューバもエースが本調子じゃなかったそうです。なんでもあまりの暑さにホテルの空調を利かせすぎて、体調不良になったと後から聞きました。まあ天を味方にするわけじゃありませんが、今回も地元で行われるということは、侍ジャパンにとって願ってもないアドバンテージです。ぜひ、悲願の金メダルを獲ってもらいたいものですね」

 

 金メダルをかけた侍ジャパンの戦いは28日正午にプレーボールです。

 

(取材・文・まとめ/SC編集部・西崎)

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