非常にうれしいニュースが届きました。御存知の通り、クローザーの小林憲幸が、千葉ロッテから育成選手としてドラフト指名を受けました。今シーズンは前後期ともに最下位を独走し、ファンの皆さんには申し訳ない思いでいっぱいでしたが、最後にいいお知らせができて良かったです。

 小林は今シーズン、開幕前にマメを潰して出遅れました。調整不足の上に課題の制球力がままならず、本人にとっては苦しい1年だったでしょう。監督就任以来、小林には上体に頼らず、下半身を使って投げるようにアドバイスしてきました。彼の上半身に力が入っているのは投球動作を見なくてもわかります。なぜなら投げる瞬間に大声を出しているから。これは余分なところに力が入っている証拠です。

 それでも小林はMAX149キロのストレートが投げられる素質があります。下半身主導で腕のしなりを使って投げれば、それほど力まなくてもキレとスピードのあるストレートが投げられるはずです。

 シーズンも終盤を迎え、小林のフォームは徐々に良くなっていました。ラスト5試合、僕はすべてのゲームで小林をマウンドに上げました。試験的に2イニング、3イニング放らせた日もあります。それまでの小林は制球が定まらず、バランスが少し崩れると四球を連発していました。ところが、それはだいぶ改善されていました。宮崎のフェニックス・リーグでも、まずまず結果を残しましたし、帰ってきてからもブルペンでいい投球を見せていました。

「これは来季クローザーとして、もう1年頑張れば楽しみだな」
 そう思った矢先の朗報でした。現在使える持ち球は直球とフォークのみ。どこまで上のレベルで通用するか心配な面もあります。ただ、小林の直球に可能性を感じて、ロッテが指名したことは間違いありません。NPBで刺激を受けつつ、ストレートに磨きをかければ、150キロ以上出せる能力を彼は持っています。

 まだ育成選手ですから当面は1日も早く支配下登録を勝ち取ることが大切です。小林にとっては今まで以上に大変な道のりかもしれません。それでも彼は徳島球団初のNPB選手。ぜひ僕たちの代表として、千葉マリンスタジアムで活躍してくれることを楽しみにしています。

 今回、育成指名であるにもかかわらず、地元メディアの皆さんの前で会見を開き、多くのファンの皆さんに祝福していただきました。これは本当にありがたいことです。
 僕は初めてドラフト会議が行われた1965年、広島から2位指名を受けました。時代が違うといえばそれまでですが、僕は翌日の新聞をみるまで、自分が指名されたことを知らなかったのです。所属していた四国鉄道局(現JR四国)では都市対抗にも出ましたし、産別(日本産業対抗野球大会、現在の日本選手権)にも出場しました。スカウトから声をかけてもらったこともあり、それなりにプロ入りを意識する立場にありました。

 迎えた当日、どこからも連絡はありません。その年のドラフトは堀内恒夫(甲府商高−巨人)や木樽正明(銚子商高−東京)ら好素材が揃っており、僕はてっきり指名されなかったと思い込んでいました。広島から電話をもらったのは、新聞で自分の名前を発見して、しばらく経ってからのこと。当然、記者会見などは開かれません。連絡をもらった僕はまだいいほうで、下位指名の選手は自分から問い合わせないと、そのままほったらかしにされていたようです。

 今年は小林も含めてリーグ全体では6選手がNPBの門をくぐることになります。夢への近道として、このリーグに対する評価は高まっています。来季のクローザーとして考えていた小林が抜け、退団や移籍もあって、現状、徳島には投手が数名しか残っていません。最下位チームがこれ以上、戦力ダウンしては来季も同じ結果を繰り返してしまいます。23日から始まる合同トライアウトでは、即戦力で将来が楽しみな投手をたくさん見つけたいですね。ワクワクするような素材にめぐりあえることを楽しみにしています。

白石静生(しらいし・しずお)プロフィール>:徳島インディゴソックス監督
 1944年5月22日、徳島県出身。鳴門高から四国鉄道管理局(現JR四国)を経て、66年、ドラフト2位で広島に入団。左の本格派投手として69年に11勝、70年には13勝をマークした。当時、外木場義郎、安仁屋宗八、大石弥太郎とともに先発の4本柱を形成していた。75年に阪急に移籍。77年、78年の日本シリーズで1勝ずつを挙げている。81年限りで引退。16年間の通算成績は394試合、93勝111敗、防御率3.81。引退後は徳島に戻り、全国野球振興会(日本プロ野球OBクラブ)の徳島県代表幹事や徳島中央シニアの監督を務め、野球の底辺拡大に力を注いでいた。06年10月より徳島インディゴソックスの監督に就任。

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