東京オリンピックボクシング女子フェザー級決勝が3日、東京・両国国技館で行われ、入江聖奈(日本体育大)がネスティー・ペテシオ(フィリピン)を判定で下し、金メダルを獲得した。ボクシング競技で日本女子初のメダル獲得となった。

 

 2012年ロンドンオリンピックから採用された女子ボクシング。ロンドン、リオデジャネイロとオリンピック出場すら叶わなかった日本勢に新たな歴史を刻んだ。入江は女子フライ級の並木月海(自衛隊)と共に初出場を果たした入江が、初勝利、初のメダル獲得、そして初の金メダルをもたらした。

 

 1回戦、2回戦、準々決勝と勝ち上がってきた。ボクシングは3位決定戦を行わないため、女子初の表彰台が確定した。準決勝で19年世界選手権銅メダリストを破り、決勝進出。決勝の相手ペテシオは19年世界選手権を制している難敵だ。ただ直近の対戦、昨年3月のアジア・オセアニア予選では勝っている。

 

 笑顔でリングインする入江。青コーナーが入江、赤コーナーがペテシオだ。ゴングが鳴ると、リーチで勝る入江は自らの距離で左ジャブを刺す。時折、コンビネーションも入れて有効打を稼ぐ。一方のペテシオは接近戦を仕掛ける。距離が詰まった場面でもボディを打ち込み、入江を削りにいった。最初の3分間が終了すると、ジャッジ5人全員が10-9で入江を支持した。

 

 第2ラウンド、ペテシオは序盤から前に出て攻勢を仕掛ける。押され気味だった入江も徐々に自分の距離感を取り戻し、着実にパンチを当てにいく。このラウンドはジャッジ1人が入江に10-9をつけ、残り4人が9-10とした。トータルスコアでは1人が20-18、残り4人が19-19。勝負の行方は最終ラウンドへ。

 

 最後の3分間は「無我夢中で覚えていない」という入江。「(ボクシングを続けてきた)13年間を出せるように頑張りました」。左ジャブと右ストレートの組み合わせで、間合いをコントロールした。一方のペテシオはクリンチが目立つなど疲れが見えていた。ゴングが鳴り、両者は互いを称え合う。

 

 ジャッジの採点は5-0で青。勝利を知った瞬間、入江はリング上で飛び跳ねて喜んだ。女子としては初の戴冠だ。日本女子チームの愛称は、入江と並木が考えたというブルーローズ・ジャパン。花言葉は「夢はかなう」である。入江は「金メダル」という幼き頃からの夢を叶え、笑顔を咲かせた。

 

 好調の日本勢は、並木と男子フライ級の田中亮明(中京高教員)が準決勝に進出し、2人のメダル獲得も既に決まっている。1大会最多の2個のメダルを手にしたロンドンオリンピックを超える最多記録更新は確実だ。

 

(文/杉浦泰介)