来季の巨人の隠し玉なのか、それともでくの坊なのか?
最速100マイル(約161キロ)を誇るという身長201センチ、体重100キロの大男アンディ・シビーロ(31)が巨人の入団テストを受けるため宮崎キャンプに合流した。
シビーロは今季所属していたメキシカンリーグのティファナではクローザーとして30試合に登板、4勝1敗13セーブ、防御率1.83の好成績を残している。
無名の大男と聞いて思い出すのが1995年、ヤクルトを日本一に導いたテリー・ブロスだ。ブロスは身長205センチ、体重102キロ。2階から投げ下ろすような角度のあるストレートと来日後に覚えたスライダーが持ち味だった。後にフォークも加わった。
ブロスはヤクルトに入団した1年目、いきなり14勝5敗、防御率2.33という好成績をあげ野村ヤクルトの日本一に貢献した。最優秀防御率のタイトルも獲得した。
このブロスをうまくリードしたのがキャッチャーの古田敦也だった。
日本シリーズはヤクルトとオリックスの間で行われた。オリックスのリードオフマンはイチロー(マリナーズ)だ。
当時のオリックスの勝ちパターンはイチローが出塁し、盗塁もし、得点を重ねるというものだった。ヤクルトの野村克也監督は初戦の先発にブロスを立てた。ブロスの球威でイチローをねじ伏せようと考えたのだ。
この作戦がまんまと図に当たった。イチローはブロスに4打数1安打と抑えられた。ヤクルトは初戦を5−2で取り、その余勢を駆って4勝1敗でシリーズを制した。
してやったりの表情で古田は語ったものだ。
「ブロスの高目のボールは角度があるから、どうしてもバッターはアゴが上がり気味になってしまう。それが彼の持ち味なんです。だからその特性をうまく引き出してやろうと。
速い球で胸元を突いたのはフライでアウトを取るため。低目のボールを叩きつけられての内野安打というのは、打たれたピッチャーが一番ガックリきますからね。できれば、それは避けたかった」
シビーロが実際に100マイルのボールを投げるのかどうか知らないが、2階から投げ下ろすような角度のついたボールはバッターには脅威である。アゴが上がれば打撃フォームを崩す原因になりかねない。
新聞報道によればシビーロはストレートの他にスライダーやチェンジアップも操るという。大男に似合わぬ器用さも持ち合わせているようだ。
そうそう、大男だからといって、不器用と決め付けるわけにはいかない。
巨人OBで後にプロレスラーとして大活躍したジャイアント馬場(故人)さんは209センチの大男だ。だが、絵筆を持たせれば玄人はだし、卓球も上手だった。性格的にも繊細な人だった。
<この原稿は07年11月25日号『サンデー毎日』に掲載されたものです>
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