自在型フォームで広角に打ち返す! 〜横浜・吉村裕基〜
横浜の期待のホープ、吉村裕基選手がいよいよエンジン全開! 10日に行われたホームでのヤクルト戦で2回、今季初となるホームランをレフトスタンドへ放つと、5回には今度はライトへ2ラン。この日通算100号を放った東福岡高の先輩・村田修一選手とともに勝利の立役者となった。
その吉村選手を2月、編集長・二宮清純が横浜のキャンプ地、沖縄・宜野湾を訪れ、インタビューを行った。彼の野球へのこだわり、今シーズンにかける思いとは――。インタビューの一部を公開する。
二宮: 規定打席に達さずにホームラン26本というのはすごい!
吉村: 僕としては、ペース的にいえば30本はいけたかなと。
二宮: 後半、ちょっとペースが落ちましたね。
吉村: やっぱり欲を出すと、だめですね。チームの最下位が決まっていましたので、来ていただいているお客さんを喜ばしたいと思ったのが、空回りしてしまいました。
二宮: 当然、今季は昨季以上の成績を残したいと。
吉村: まぁ、そうですね。まずは規定打席に達した上で、昨年の数字を上回りたいです。
二宮: 具体的にに変えたい部分はありますか?
吉村: まずは三振の数ですね。ただ、三振が多いというのは自分で自覚していたのですが、やっぱり振り切るというのはなくしたくなかった。もう三振増えてもいいやという覚悟はありました。
二宮: 三振が多いのはパワーヒッターだから仕方ないとして、四球が少ないのが気になります。四球を増やしたら、打率も上がってくるのでは?
吉村: 初球から振っていくことが多いので、四球は滅多にないですね。選球眼がないから、何でもかんでも振っちゃう。
二宮: じゃあ、今年はもう少し四球を多くとらなくちゃ。
吉村: はい、そうしないと成長できないですから。
ボールを“潰す”
二宮: 僕が吉村選手のバッティングを見て思うのは、思いっきりがいいこと。それと、そんなに苦手なコースがないのかな、と。
吉村: まぁ、何でも振っちゃうところが弱点なんですけど(笑)。自分でも、あまり苦手と思うコースはないですね。
二宮: インハイもそれほど苦にしてないですよね。
吉村: 苦手なイメージはないです。そんなこと言ったら、ものすごいバッターみたいに思われちゃいますけど……。いつもレフトにホームランを打てればいいんですけど、広角に大きなのを打てたほうが、相手としては嫌かなと考えています。
二宮: 自分の中でイメージしているバッターは?
吉村: 僕は状況に応じていろんな選手をイメーするんです。例えば、ピッチャーが少し左の変則気味だったら、濱中治さんをイメージするとか、ちょっとタイミングが合わせづらいなぁと思ったら、元木大介さんとか…。
二宮: いろんな引き出しがあって、おもしろいですね。高校時代にイメージしたバッターは?
吉村: 新庄剛志さんや池山隆寛さんの打ち方をまねしたり、王さんの一本足打法をやってみたり。今も打ち終わったあと、バットをポーンと投げるクセがあるんですけど、それは新庄さんをイメージして小学校の頃にやっていたのが、そのまま染み付いてしまったものなんです。
二宮: 右の主砲として順調に成長していると思うのですが、バッティングがわかりかけたとか、このボールを打ったからこそ自信が出てきたとか、そういうきっかけは?
吉村: 昨年一年間、一軍にいて、相手チームのいいバッターを見ることができたことが大きかったですね。いいバッターって、みんな力が抜けてるんですよ。ブンブン振り回さない。福留孝介さんにしても、打席にヒュッて立って、ボールをスーッと見て、ジャッジして打つんですよ。いい選手は、どんなにパワーがあっても、ガツガツしていない。でも、僕はまだガツガツしてしまっているんです。
二宮: バッターによって、ホームランを打つ時のボールの捕らえ方って違うと思うんです。昔、王貞治さんに聞いたら、「ボールを運ぶ」って言ってました。門田博光さんは、「ボールを砕く」、掛布雅之さんは「ボールを潰してスピンをかける」と言ってたんですよ。吉村さんは?
吉村: 僕は、「潰す」ですね。僕の一番理想としているのは、ショートライナーが伸びていって、浮き上がっていって、スタンドに入る打球なんです。
二宮: バットの角度の入れ方っていうのは、意識してますか?
吉村: しています。斜め上ぐらいにバットを入れて、落とした瞬間に上げる、Vの字を描くような感じです。
二宮: 一番いいのは、逆台形がいいらしいですよ。いいバッターは、ボールがバットにくっついている時間が長い。それだけバットの力をボールに伝える時間が長いということだと思うのですが……。
吉村: なるほど。どれだけ粘れるか、下半身が重要なんでしょうね。
ハワードの衝撃
二宮: 将来的な目標は?
吉村: 今はまだ具体的にはありません。
二宮: メジャーリーグのような大舞台でやってみたいという気持ちは?
吉村: 最初は日本でしっかりやりたいと思っていましたが、いい選手がどんどん行くのを見ていると、自分も目標としてもたなければとは思いますね。
二宮: メジャーで興味のあるバッターはいますか?
吉村: 昨年、日米野球に出場させてもらったのですが、その時にライアン・ハワード(フィリーズ)を見て、「自分は今まで何やってたんだろう」って思いました。もう、レベルが違いすぎて……。僕なんか日本の一軍ピッチャーを苦労して打つのに、彼はいとも簡単にボンボン打つんですよ。体格が違うって言ったら、それまでなんですけど。あとは、デービッド・ライト(メッツ)。24歳と若いんですけど、すごいなぁと思いましたね。間接的ですけど、彼からもらったバットを部屋に飾っています。
二宮: さて、今年はレギュラシーズン3位までに入れば、プレーオフに出場できます。これまで以上に、より現実的に優勝を目標にできるのでは?
吉村: 一昨年は3位でしたが、僕が入団してから最下位が当然みたいになっています。でも、若い選手は揃っていると思うんですよね。僕も含めて、その辺がレベルアップできたら、脱皮できるんじゃないかなとは思っています。だから、石井琢朗さんや工藤公康さん、仁志敏久さんなど、優勝経験が豊富な選手がいるうちに、僕も経験させてもらいたいなと思っています。
<このインタビューの内容は『ビックコミックオリジナル』2007年4月5日号に掲載された内容を再構成したものです>
その吉村選手を2月、編集長・二宮清純が横浜のキャンプ地、沖縄・宜野湾を訪れ、インタビューを行った。彼の野球へのこだわり、今シーズンにかける思いとは――。インタビューの一部を公開する。
二宮: 規定打席に達さずにホームラン26本というのはすごい!
吉村: 僕としては、ペース的にいえば30本はいけたかなと。
二宮: 後半、ちょっとペースが落ちましたね。
吉村: やっぱり欲を出すと、だめですね。チームの最下位が決まっていましたので、来ていただいているお客さんを喜ばしたいと思ったのが、空回りしてしまいました。
二宮: 当然、今季は昨季以上の成績を残したいと。
吉村: まぁ、そうですね。まずは規定打席に達した上で、昨年の数字を上回りたいです。
二宮: 具体的にに変えたい部分はありますか?
吉村: まずは三振の数ですね。ただ、三振が多いというのは自分で自覚していたのですが、やっぱり振り切るというのはなくしたくなかった。もう三振増えてもいいやという覚悟はありました。
二宮: 三振が多いのはパワーヒッターだから仕方ないとして、四球が少ないのが気になります。四球を増やしたら、打率も上がってくるのでは?
吉村: 初球から振っていくことが多いので、四球は滅多にないですね。選球眼がないから、何でもかんでも振っちゃう。
二宮: じゃあ、今年はもう少し四球を多くとらなくちゃ。
吉村: はい、そうしないと成長できないですから。
ボールを“潰す”
二宮: 僕が吉村選手のバッティングを見て思うのは、思いっきりがいいこと。それと、そんなに苦手なコースがないのかな、と。
吉村: まぁ、何でも振っちゃうところが弱点なんですけど(笑)。自分でも、あまり苦手と思うコースはないですね。
二宮: インハイもそれほど苦にしてないですよね。
吉村: 苦手なイメージはないです。そんなこと言ったら、ものすごいバッターみたいに思われちゃいますけど……。いつもレフトにホームランを打てればいいんですけど、広角に大きなのを打てたほうが、相手としては嫌かなと考えています。
二宮: 自分の中でイメージしているバッターは?
吉村: 僕は状況に応じていろんな選手をイメーするんです。例えば、ピッチャーが少し左の変則気味だったら、濱中治さんをイメージするとか、ちょっとタイミングが合わせづらいなぁと思ったら、元木大介さんとか…。
二宮: いろんな引き出しがあって、おもしろいですね。高校時代にイメージしたバッターは?
吉村: 新庄剛志さんや池山隆寛さんの打ち方をまねしたり、王さんの一本足打法をやってみたり。今も打ち終わったあと、バットをポーンと投げるクセがあるんですけど、それは新庄さんをイメージして小学校の頃にやっていたのが、そのまま染み付いてしまったものなんです。
二宮: 右の主砲として順調に成長していると思うのですが、バッティングがわかりかけたとか、このボールを打ったからこそ自信が出てきたとか、そういうきっかけは?
吉村: 昨年一年間、一軍にいて、相手チームのいいバッターを見ることができたことが大きかったですね。いいバッターって、みんな力が抜けてるんですよ。ブンブン振り回さない。福留孝介さんにしても、打席にヒュッて立って、ボールをスーッと見て、ジャッジして打つんですよ。いい選手は、どんなにパワーがあっても、ガツガツしていない。でも、僕はまだガツガツしてしまっているんです。
二宮: バッターによって、ホームランを打つ時のボールの捕らえ方って違うと思うんです。昔、王貞治さんに聞いたら、「ボールを運ぶ」って言ってました。門田博光さんは、「ボールを砕く」、掛布雅之さんは「ボールを潰してスピンをかける」と言ってたんですよ。吉村さんは?
吉村: 僕は、「潰す」ですね。僕の一番理想としているのは、ショートライナーが伸びていって、浮き上がっていって、スタンドに入る打球なんです。
二宮: バットの角度の入れ方っていうのは、意識してますか?
吉村: しています。斜め上ぐらいにバットを入れて、落とした瞬間に上げる、Vの字を描くような感じです。
二宮: 一番いいのは、逆台形がいいらしいですよ。いいバッターは、ボールがバットにくっついている時間が長い。それだけバットの力をボールに伝える時間が長いということだと思うのですが……。
吉村: なるほど。どれだけ粘れるか、下半身が重要なんでしょうね。
ハワードの衝撃
二宮: 将来的な目標は?
吉村: 今はまだ具体的にはありません。
二宮: メジャーリーグのような大舞台でやってみたいという気持ちは?
吉村: 最初は日本でしっかりやりたいと思っていましたが、いい選手がどんどん行くのを見ていると、自分も目標としてもたなければとは思いますね。
二宮: メジャーで興味のあるバッターはいますか?
吉村: 昨年、日米野球に出場させてもらったのですが、その時にライアン・ハワード(フィリーズ)を見て、「自分は今まで何やってたんだろう」って思いました。もう、レベルが違いすぎて……。僕なんか日本の一軍ピッチャーを苦労して打つのに、彼はいとも簡単にボンボン打つんですよ。体格が違うって言ったら、それまでなんですけど。あとは、デービッド・ライト(メッツ)。24歳と若いんですけど、すごいなぁと思いましたね。間接的ですけど、彼からもらったバットを部屋に飾っています。
二宮: さて、今年はレギュラシーズン3位までに入れば、プレーオフに出場できます。これまで以上に、より現実的に優勝を目標にできるのでは?
吉村: 一昨年は3位でしたが、僕が入団してから最下位が当然みたいになっています。でも、若い選手は揃っていると思うんですよね。僕も含めて、その辺がレベルアップできたら、脱皮できるんじゃないかなとは思っています。だから、石井琢朗さんや工藤公康さん、仁志敏久さんなど、優勝経験が豊富な選手がいるうちに、僕も経験させてもらいたいなと思っています。
<このインタビューの内容は『ビックコミックオリジナル』2007年4月5日号に掲載された内容を再構成したものです>