セルティックパークが古橋亨梧を育てる

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 早くもセルティックサポーターの心をがっちりと掴んでいる。

 横浜F・マリノスで“超攻撃サッカー”を展開してきたアンジェ・ポステコグルー新監督が指揮するスコットランド1部セルティックに、今夏ヴィッセル神戸から移籍した日本代表の古橋亨梧は開幕2戦目、ホームでのダンディーFC戦(現地時間8日)でハットトリックを達成した。

 

 いずれのゴールも古橋の持ち味がよく出ていた。

 中央から右サイド裏にパスが出されると同時に逆サイドから全速力でニアに向かった彼はクロスに右足で合わせてまず1点目。続いては左サイドからのグラウンダーのクロスに対し、ニアに向かうふりをして相手の逆を取って滑り込んでゴール。そして筆者のお気に入りは次の3点目だ。中央からスルーパスと出てくると踏んでスプリントし、パスを受け取ってゴール右隅に流し込んだ。

 ヴィッセルで何度も見た光景だ。

 アンドレス・イニエスタをはじめチームメイトからボールが出てくると信じて、後ろを振り返ることなく前へと向かってゴールを量産してきた。動き出しが早く、迷いなくトップスピードで出ていくため相手を置き去りにしてしまう。たとえパスが出てこなくても、その動き出しを何度も繰り返すため、相手としたらやっかい極まりない。

この「味方を信じるスプリント」こそが、古橋の最大のストロングポイント。信じて走ってゴールを決めれば、味方も自分を信じてくれる。セルティックでもチームメイトからの信頼が高まっていることは容易に感じ取れる。

 

 ホーム、セルティックパークに集うサポーターはスタンディングオベーションで古橋を称えていた。この光景を見て、15年前をつい思い出した。セルティックで今なお愛される中村俊輔である。

筆者もセルティックパークで中村の試合を取材したが、サポーターが醸成するスタジアムの雰囲気は最高だった。6万人のスタジアムが埋まり、セルティックのゴールが決まれば地鳴りのような歓声が響き渡る。

 

 中村から聞いたことがある。

「(イタリアの)レッジーナのときはホームの試合で点を取られるとスタンドは“何やってんだ”みたいな雰囲気になる。でもセルティックパークは違った。チームがミスしようが、点を取られようが、必ず自分たちに勇気や自信を植えつけてくれるような雰囲気をつくってくれた。

強く印象に残っているのがループシュートを決めたダンディー・ユナイテッド戦(現地時間2006年12月26日)。0-2とリードされても、誰かがいいプレーしたら拍手が起こって“いけるよ、いけるよ”と背中を押されて選手が乗っていく感じになった。どんなチームでもセルティックパークではやりづらそうにしていたし、ホームのアドバンテージは大きいと感じた」

 そう、まさにチームの背中を押していた。

 古橋の試合を見ていて、その伝統は変わることなく受け継がれていると感じた。

 

 中村はこんなことも語っていた。

「勢いに乗れるプレーをしていければ、ファンも乗ってくる。大胆なプレーもできる。それがセルティックパークで戦える利だった」

 8月15日のリーグカップ決勝トーナメント1回戦のハーツ戦でもゴールを挙げて勝利に貢献。これで公式戦5ゴール目となった。

 中村が2005年7月にレッジーナから移籍したときは27歳。ここからマンチェスター・ユナイテッド戦の直接FK2戦連発など伝説をつくってきた。

 グラスゴーに本拠を置くセルティックの創設は1887年。130年以上の伝統を誇る、言わずと知れたスコットランドの名門である。本拠セルティックパークでプレーすることが成長を呼び込むことにもつながる。

 古橋は海外挑戦が遅くなったとはいえ、まだ26歳。セルティックパークの力を借りながら、中村に負けない活躍をぜひ見せてほしいものだ。

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