3月15日から中野市営球場で第1次キャンプが始まり、信濃グランセローズの2年目がスタートしました。現在は上伊那郡南箕輪村の大芝高原野球場に場所を移し、第2次キャンプを行なっています。
 昨年の今頃は、リーグも球団も創設1年目で全てが初めてのことだらけだったせいか、選手たちは比較的わきあいあいとしていました。ライバルというよりも友達感覚だったのです。

 ところが、今年は選手の顔つきが全く違います。特に2年目を迎えた選手たちは、レギュラーの座を掴もうと、それこそ目の色を変えて必死になってトレーニングに励んでいます。試合に出るためには、まずはチームメイトに勝たなければならないことをよくわかっているのでしょう。

 ですから、このオフもきちんと自分たちでトレーニングを積んできたようです。例えば昨季、リーグトップの防御率を誇った佐藤広樹(徳島インディゴソックス出身)は欠かさずランニングをしていたのでしょう。見るからに下半身がしっかりと鍛えられていました。また、昨季チーム一の勝ち星(10勝)をマークした涌島稔(高知ファイティングドックス出身)は少々太り気味だったこともあり、自ら5キロほど絞ってきていました。そのため、昨年以上に軽快な動きを見せてくれています。

 もちろん、新加入した1年目の選手たちも頑張っていますよ。でも、やはりシーズンを戦い抜いてきた2年目の選手に感じるような必死さはまだまだありません。キャンプではそれほど明らかではありませんが、おそらく開幕後、徐々に1年目と2年目の差がでてくるのではないかと思います。

 また、2年目の選手と一緒にトレーニングや実戦を積んでいく中で、1年目の選手たちが彼らから学ぶことは多くあるはずです。1年目の選手が台頭してくれば、2年目の選手も「負けていられない」という気持ちになり、さらにやる気を起こすでしょう。こうした相乗効果が、チームの底上げにつながるのではと期待しています。

 さて今季は、4人の投手が入団しました。高田周平(創価大学出身)、仁平翔(茨城ゴールドゴールデンクラブ出身)、米澤孝祐(徳島インディゴソックス出身)、込山勇人(松本大学出身)です。

 大学を卒業したばかりの高田は抜群の制球力があり、四球で自ら崩れるような心配はありません。創価大学ではリーグ戦での実績はほとんどないのですが、実際に見てみると、「なぜ大学時代には登板機会を与えてもらえなかったんだろう?」と疑問に思うほど、高い素質をもった投手です。身長178センチ、体重74キロと、まだ体の線は細いのですが、ヒジや肩が強く、故障とは縁遠い選手です。ですから、シーズンを通してフル回転してくれるのでないかと期待しています。

 20歳と若い仁平は、僕と同じ常総学院高校出身です。185センチの長身から投げ下ろす角度のついたストレートやカーブは打者にとっては打ちづらく、彼の最大の武器でもあります。しかし、彼はこれまでそれほど必死で努力をしてこなかったようです。高校時代のコーチに聞いても「あまり練習していなかった」とのこと。高校までは生まれ持ったセンスだけで十分やってこれたのでしょう。でも、プロではそうはいきません。しかし、逆に言えば、練習せずにこれだけのボールが放れるわけですから、今後、トレーニングを積んだらどれだけ伸びるのか、非常に楽しみな選手です。

 昨季までの2年間、同じ独立リーグの四国アイランドリーグ(現、四国・九州アイランドリーグ)の徳島インディゴソックスに在籍した米澤は昨季、一度も登板機会を与えられませんでした。そのため、今季にかける思いが強いのでしょう。自主トレから少し飛ばしすぎてしまい、キャンプに入ってから数日間、ブルペンに入ることができませんでした。彼は186センチ、93キロと見ためはがっしりとした体格なのですが、まだまだ下半身が弱い。鍛えれば、優に140キロは出るのではないでしょうか。これからの頑張り次第で、まだまだ成長できる選手です。

 最後に込山ですが、実は彼は投手としてではなく、外野手として獲得した選手です。しかし、左不足というチーム事情から、強肩で投手経験もある込山を投手にコンバートしました。彼はボールの出どころが見えにくいので、打者は非常に打ちづらいでしょうね。フォームもほとんど修正せずにそのままいけますから、下半身さえ鍛えれば貴重なサウスポーとして活躍してくれることでしょう。

 とはいえ、やはり柱となるのは昨季、先発の軸を担った佐藤、涌島、そしてチーム一の速球派・給前信吾(横浜商大高)の3人です。3人とも他の2人をライバル視し、互いに火花を散らしているようです。練習の態度や言葉からも、競争意識の高さがうかがい知ることができます。3人とも同世代ですから、「負けたくない」という気持ちが強いのでしょうね。僕も現役時代は同級生には絶対に負けたくないと思って頑張ったものです。そういう意識が出てきたということは、プロとしての自覚がでてきた証拠でもあります。

「今季のチームは強くなるな」。私は今、そう確信しています。

島田直也(しまだ・なおや)プロフィール>:信濃グランセローズピッチングコーチ
1970年3月17日、千葉県出身。常総学院時代には甲子園に春夏連続出場を果たし、夏は準優勝に輝いた。1988年、ドラフト外で日本ハムに入団。92年に大洋に移籍し、プロ初勝利を挙げる。94年には50試合に登板してチーム最多の9勝あげると、翌年には初の2ケタ勝利をマーク。97年には最優秀中継ぎ投手を受賞し、98年は横浜38年ぶりの日本一に貢献した。01年にはヤクルトに移籍し、2度目の日本一を経験。03年に近鉄に移籍し、その年限りで現役を引退した。日本ハムの打撃投手を経て、07年、信濃グランセローズのピッチングコーチに就任した。


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