29日、東京パラリンピック車いすラグビー競技最終日が東京・国立代々木競技場第一体育館で行われた。世界ランキング3位の日本代表は3位決定戦で同1位のオーストラリア代表を60-51で下した。日本は2016年リオデジャネイロパラリンピックに続き、2大会連続の銅メダルを獲得。決勝は世界ランキング4位のイギリス代表が同2位のアメリカ代表を53-49で破り、初の金メダルを手にした。

 

 前日の準決勝でイギリスに敗れ、初の決勝進出を逃がした日本。悲願の金メダルには届かなかったものの、自国開催のパラリンピックで勝って大会を終えるか、負けて終わるかでは雲泥の差があろう。

 

 日本は池透暢(日興アセットマネジメント)、池崎大輔(三菱商事)、若山英史(静岡銀行)、今井友明(三菱商事)の4人がスタメンで起用された。先制点はキャプテン池がトライを挙げ、日本をオーストラリアが追いかける展開となった。

 

 日本は池、池崎のハイポインターが活躍。池崎は9トライ。池は池崎とのホットラインでトライを何度も演出した。さらに2人は守備でも貢献し、オーストラリアを突き放す。相手エースのライリー・バットには9トライを許したが、17-14とリードして第1ピリオドを終えた。

 

 第2ピリオドは13得点と第1ピリオドよりペースを落としたが、オーストラリアの反撃を11点で抑えた。池、池崎、ベテランの島川慎一(バークレイズ証券)を中心に安定した好守が光った。

 

 第3ピリオドで突き放し、45-36と勝利を大きく手繰り寄せる。第4ピリオドは15-16と1点詰められたものの問題なかった。60-52で快勝。リオパラリンピックでは準決勝で敗れた相手に、今大会2勝を挙げた。

 

 2大会連続の表彰台は十分に立派な成績だが、日本の選手たちは満足していない。池崎は「自分の中では悔しい結果。いろいろ方の恩返しがブロンズ。申し訳ない」と語った。リオパラリンピックから金を目指した5年間。キャプテン池の言う「僕は負けたつもりはない。イギリスにもアメリカにも勝てると思っている」は負け惜しみではあるまい。

 

 1次リーグ3連勝の快進撃に加え、この日の3位決定戦の内容を見ると、金メダルを狙えるチームだった。しかし決勝進出はできなかった。「パラの舞台でやられたらパラの舞台で返す」と池崎。リベンジの舞台は3年後、花の都パリである。

 

 金メダルは準決勝で日本を破ったイギリスが輝いた。エースのジム・ロバートが決勝でも7トライの活躍。決勝まで1試合平均20.3トライの実力を遺憾なく発揮した。ハイポインターのアーロン・ピップスも6トライを挙げ、援護した。アメリカを第1ピリオドから突き放し、15-12とリードした。

 

 過去2度パラリンピックを制し、リオパラリンピック銀のアメリカも意地を見せる。第2ピリオドで差を詰め、第3ピリオドに追いついた。第3ピリオド終了時点では1点差だったが、最後はイギリスが追撃を振り切った。シドニーパラリンピックで正式競技に採用されて以降、メダルすら届かなったラグビーの母国が、ついに頂点に立った。

 

(文/杉浦泰介)