29日、東京パラリンピック5人制サッカー(ブラインドサッカー)が東京・青海アーバンパークで行われた。グループAの日本代表(世界ランキング12位)はフランス代表(同14位)と対戦。エース黒田智成(たまハッサーズ)、キャプテン川村怜(パペレシアル品川)が2ゴールずつ奪い、4-0で快勝した。日本は30日、同じく白星スタートを切ったブラジル代表(同2位)と戦う。

 

 パラリンピック初出場の日本が最高のスタートを切った。世界ランキングで上回り、今年5月のワールドグランプリで破っているとはいえ、フランスは2012年ロンドンパラリンピック銀メダルのチームだ。簡単な相手ではない。その相手に4ゴールで快勝した。

 

 日本は前半4分に先制点を奪う。黒田がドリブルでスルスルと相手をかわし、左足でシュート放った。ボールはゴール右に突き刺さり、1-0とリードを奪った。追加点も黒田。9分、敵陣でボールを奪うと、落ち着いてゴール左に決めた。

 

 黒田の突破力に手を焼いたフランスは19分にファウルを犯す。右サイドの位置で得たFKで黒田からボールを預かった川村が左足でシュート。ボールはディフェンスの股下を通過し、ブラインドとなったことでGKも止めることができなかった。

 

 前半を3-0で終えた日本は、後半も相手にペースを握らせなかった。フレデリック・ヴィルルに仕事をさせなかった。高田監督は「何もさせるな」と佐々木ロベルトにマークを命じ、見事に遂行してみせた。

 

 周到な準備がモノをいった。約1カ月前からコーチがフレデリックの特長を真似てプレースピード、テクニックに対応できるようトレーニングを積んできた。「最初はボコボコにやられていたが、だいぶ慣れてきた」と高田監督。それが功を奏したかたちだ。

 

 また日本代表は2019年からボイストレーナーをスタッフに招き、“声”を鍛えた。ブラインドサッカーはフィールドプレーヤーがアイマスクを装置する。そのため守備側はチェックにいく際、「ボイ」(スペイン語で『行く』)の掛け声が必要となる。黙って近付いた場合や、発声が認められなければ「ノーボイ」の反則を取られる。

 

 日本が4ファウルに対し、フランスが倍の8。フランスのファウルの約半分でレフェリーから「ノーボイ」とコールされていた。その点に注目していたこともあるかもしれないが、日本の選手からは「ボイ」の声がよく聞こえていた。

 

 後半7分にはPKを川村が決め、勝負を決めた。4-0の快勝。これ以上ないほどの髙田監督はベンチ入りメンバー全員をピッチに送り出すなど、初のパラリンピックを経験させた。次戦はリオパラリンピック王者のブラジルだ。当然ブラジル対策も講じてきたが、「彼らは想像の斜めをいく」と指揮官も警戒を緩めない。

 

 第一関門を突破した日本に立ちはだかる高く、厚い壁。日本の進化が試される一戦となりそうだ。

 

(文/杉浦泰介)