東京五輪でU-24日本代表はメダルまであと一歩のところまで迫りました。手に汗握る熱戦を披露してくれた選手たちには「お疲れ様です」と声を掛けたいところですが……一息つく間もなく9月2日からカタールW杯アジア最終予選がスタートします。初戦はオマーン代表(パナソニック吹田スタジアム)、第2戦は7日に行なわれる中国代表戦(中立地のカタール・ドーハ)。今後、五輪世代の選手たちがどれだけA代表に食い込めるのか注目です。

 

 GK・谷の急成長

 

 日本はアジア最終予選グループBでオーストラリア、サウジアラビア、中国、オマーン、ベトナムと同組です。東京五輪で若手が国際舞台で経験を積んだこともあり、最終予選は難なく突破できると思います。

 

 先日、この2戦に臨むメンバーが発表されました。五輪に出場した選手はオーバーエイジを含め9名。この中でGK谷晃生(湘南ベルマーレ)がA代表に初選出されました。今回の五輪で彼が一番成長したのではないでしょうか。自分の活躍が結果に表れたことで達成感があったはずです。

 

 準々決勝ではPKをセーブしました。あのセーブは谷自身にとっても、日本代表にとっても大きな意味を持ったビッグセーブでした。この五輪の経験から谷はプレーヤーとしてひとつ階段を上がりかけていると思います。

 

 僕は最終予選の初戦から谷の起用は「アリ」だと考えています。彼は今、乗りに乗っています。その勢いを森保一監督にはうまく利用してもらいたい。さらに、U-24代表とA代表のDFラインのメンバーはほぼ同じです(変更点は左サイドバックくらいでしょう)。連係面でも谷は何ら問題ない。森保監督が2つのチームを兼任していた意味が出てくるのはこれからです。

 

 海外組のJ復帰は日本サッカー第2章の始まり

 

 今夏、ヴィッセル神戸が大型補強を行いました。ブレーメンからFW大迫勇也、ニューカッスルからFW武藤嘉紀、フリーだったFWボージャン・クルキッチを獲得しました。大迫と武藤は早速リーグ戦に出場しています。

 

 大迫のプレーはやはりレベルが違います。ポストに入る前に相手DFに一度体を当てて優位な状況を作っています。こういった点が海外で戦えていたかどうかの差なのでしょう。皆さんも是非、大迫に縦パスが入る少し前を見てください。こういう選手がJリーグに復帰すると対戦するDFや一緒にトレーニングをする選手のレベルが上がります。大迫の復帰は日本サッカー界にとって大きな意味をもたらすでしょう。

 

 かつては有名な外国人選手を手本にしてきました。しかし、浦和レッズに復帰したDF酒井宏樹や大迫など日本代表のレギュラーが全盛期にJリーグに復帰し、手本を示すようになりました。これは日本サッカーの第2章のはじまりなのではないでしょうか。

 

●大野俊三(おおの・しゅんぞう)

<PROFILE> 元プロサッカー選手。1965年3月29日生まれ、千葉県船橋市出身。1983年に市立習志野高校を卒業後、住友金属工業に入社。1992年鹿島アントラーズ設立とともにプロ契約を結び、屈強のディフェンダーとして初期のアントラーズ黄金時代を支えた。京都パープルサンガに移籍したのち96年末に現役引退。その後の2年間を同クラブの指導スタッフ、普及スタッフとして過ごす。現在、鹿島ハイツスポーツプラザの総支配人としてソフト、ハード両面でのスポーツ拠点作りに励む傍ら、サッカー教室やTV解説等で多忙な日々を過ごしている。93年Jリーグベストイレブン、元日本代表。

*ZAGUEIRO(ザゲイロ)…ポルトガル語でディフェンダーの意。このコラムでは現役時代、センターバックとして最終ラインに強固な壁を作った大野氏が独自の視点でサッカー界の森羅万象について語ります。


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