さて、9月からカタールW杯アジア最終予選がスタートしました。日本代表は初戦でオマーン代表と戦い、2戦目は中国代表と対戦しました。そして10月はサウジアラビア代表とオーストラリア代表と対戦します。9月の戦いをどう10月に結びつけるか、語りたいと思います。

 

 オマーン戦は自分たちのかたちをうまくつくれず、0-1で敗戦しました。もう負けられない中国戦は1-0と勝利しましたが「何とか勝った。結果だけだな」という内容でした。

 

 10月7日、アウェイで同組2位のサウジアラビア戦の前までにDFラインの再構築をしたいです。リーダーのDF吉田麻也を中心にボランチ、サイドバックとの関係のすり合わせが必要です。ボランチが積極的にボール奪取に行ったら、どのように後ろはカバーに入るか。オマーンのように逆サイドはほぼ捨てるといったことも参考になると思います。ポジショニング、連係面の再確認の時間がほしいですね。後手を踏み、マークがズレてしまうとDFとDFの間のギャップを使われてしまう。これは絶対的に避けるべきです。

 

 オマーンからヒントを得てもいい気がしますね。逆サイドの相手アタッカーは敢えて捨てて中央を固める。仮に逆サイドに振られてもオートマティックにマークを受け渡せれば、それほど怖くはありません。逆サイドに敵がいると、認識したうえで敢えて捨てているのと、認識せず逆サイドに振られるのとではわけが全然違います。これは7日のサウジアラビア戦だけでなく12日のホーム・オーストラリア戦やそれ以降に関しても言えることです。上位を争う相手ですから、ここできっちりと勝ち星を積み重ねたいところです。

 

 人選に関しても1つ。僕は引き続きGK谷晃生(湘南ベルマーレ)に期待しています。あと、前線こそ思い切ってどんどん若手を使っていいと思うんですよねぇ。ボランチですがMF田中碧(デュッセルドルフ)も出場機会を掴んでいます。先を見据えても招集できるのであればぜひ起用してもらいたいです。ひとつ上の世代ですがフランス2部・トゥールーズに移籍したFWオナイウ阿道の調子が良さそうです。プレー時間を与えても面白いのではないでしょうか。

 

 Jリーグの3位争い

 

 Jリーグに目を向けましょう。1位川崎フロンターレ=勝ち点78、2位横浜F・マリノス=同66。ここはもうアジアチャンピオンズリーグ(ACL)出場はかたいでしょう。注目はACLプレーオフに出場できる3位争いです。3位名古屋グランパス=同57、4位ヴィッセル神戸=同54、5位浦和レッズ=同54、6位鹿島アントラーズ=同53。現実的なことを考えて、チャンスがあるのはこのあたりでしょうか。

 

 得点ランキングトップ50を見てみましょう。3位から6位のクラブの中で最も多い人数がランクインしているのがアントラーズの5人(FW上田綺世=11得点、MF荒木遼太郎=9得点、土居聖真、犬飼智也、町田浩樹=5得点)です。得点源がひとつでなく分散していることがうかがえます。秋以降、ひとつの星を落とすとダメージは大きいです。満遍なくどのポジションの選手も得点できるのはひとつの強みではないでしょうか。

 

 最後にですが、9月10日に日本サッカー協会は創立100周年を迎えました。諸先輩たちが紡いできてくれた歴史があるから迎えられたものだと思います。そこに僕も携われていることを嬉しく思います。やはり93年のプロ化は忘れられません。日本サッカーの父と言われているデットマール・クラマーさんのお話も何度も伺っています。今ではW杯常連国となれているのも先人たちのおかげです。感謝申し上げます。

 

●大野俊三(おおの・しゅんぞう)

<PROFILE> 元プロサッカー選手。1965年3月29日生まれ、千葉県船橋市出身。1983年に市立習志野高校を卒業後、住友金属工業に入社。1992年鹿島アントラーズ設立とともにプロ契約を結び、屈強のディフェンダーとして初期のアントラーズ黄金時代を支えた。京都パープルサンガに移籍したのち96年末に現役引退。その後の2年間を同クラブの指導スタッフ、普及スタッフとして過ごす。現在、鹿島ハイツスポーツプラザの総支配人としてソフト、ハード両面でのスポーツ拠点作りに励む傍ら、サッカー教室やTV解説等で多忙な日々を過ごしている。93年Jリーグベストイレブン、元日本代表。

*ZAGUEIRO(ザゲイロ)…ポルトガル語でディフェンダーの意。このコラムでは現役時代、センターバックとして最終ラインに強固な壁を作った大野氏が独自の視点でサッカー界の森羅万象について語ります。


◎バックナンバーはこちらから