(写真:昨季はキャプテン1年目。リーグ連覇に大きく貢献した)

 日本女子ソフトボールリーグは9月4日から後半戦がスタートする。3連覇を狙うビックカメラ高崎BEE QUEENは5日、神奈川・大和スタジアムでHonda Rivertaと対戦。昨季の決勝カードが後半開幕節から実現する。そこで今回は東京オリンピックで金メダルを獲得した日本代表のファーストのレギュラーで、前半戦首位に立つビックカメラ高崎のキャプテン内藤実穂に後半戦に向けた意気込みを訊いた。

 

――オリンピック初出場となった東京大会で、日本代表の一員として金メダルを獲得しました。

内藤実穂: 小さい頃からオリンピックに出るというのが私の夢でした。その舞台に立てたことは本当に幸せなこと。自分の力だけで来れたわけではないので、周りの人たちへの感謝の気持ちが大きいですね。

 

――2019年に千葉で行われた世界選手権を大舞台を経験しましたが、オリンピックは格別な緊張感がありましたか?

内藤: 私の場合、世界選手権はレギュラーではありませんでした。オリンピックがレギュラーとして臨む初めての大きな国際大会だったので、正直緊張するかと思っていましたが、ガチガチになることもなく、いい状態で試合を迎えられました。

 

――初戦のオーストラリア戦、3回裏2死二塁の場面で勝ち越し2ランを放ちました。

内藤: 前の打席でフォアボールを選んでいたので、ボールはよく見られていましたし、あとは思い切り打つだけでした。打った感触は良かったのですが、ホームランという確信はなかった。フェンスが日本リーグよりも高かったので、“フェンスに当たるかな”と思っていました。

 

――内藤選手の活躍で初戦をコールド勝ちした日本は、決勝に進むために、その後も負けられない戦いが続きました。

内藤: その緊張感はありましたが、自分は年齢的にも若い方だったので、先輩方が思い切りプレーできる環境をつくってくれたと感じています。それに私は、どちらかというとプレッシャーのある局面の方が力を出せるタイプだと思っています。

 

――4勝1敗で2位に入り、進んだ決勝でアメリカと対戦しました。アメリカの1番ヘイリー・マクレニー選手は決勝まで打率6割4分3厘と非常に当たっていました。初回、内藤選手は先頭のマクレニー選手の強烈な打球を見事に捕球しました。

内藤: 野手同士でポジショニングの確認を事前に行い、バッターのスイングやバッテリーの配球を見ながら、打球がどこにくるかを1球1球予測していました。速い打球ではありましたが、いいところで守れていたと思います。

 

――1回はバッテリーエラーでピンチになりましたが、その後のカバーリングで失点を防ぎました。6回には奇跡的なゲッツーが飛び出すなど試合を通してラッキーな部分もあった?

内藤: 「運も実力のうち」という言葉がありますが、そう感じさせる部分もあったのかなと思います。6回のプレーに関しては(サードの山本)優さんが速い打球に対し、きっちり反応できていたから生まれた。あのまま抜けていたら1点につながっていたと思います。

 

 ベストディフェンス賞

 

(写真:高校卒業後、一塁手に転向し、代表のレギュラーまで上り詰めた)

――日本の堅い守備が13年ぶりの金メダルをもたらしました。宇津木麗華監督も「日本の守備は世界ナンバーワン」と語っていました。

内藤: この5年間、私たちは守備を基本としてやってきたんです。合宿の時からチーム全体で「ノーエラー」を意識していましたし、監督からも「日本のいいところは守備」とずっと言われてきました。練習のノック1本1本に緊張感がありました。その積み重ねの結果、オリンピックでノーエラー。本当に良かったと思います。

 

――中でも内藤選手は、守備を評価され、大会のベストディフェンス(最優秀守備選手)賞に輝きました。

内藤: とてもうれしいです。ベストディフェンスと聞くと、二遊間や外野手が選ばれる印象がありました。そういうところを見てくれる人がいるのはうれしい。ファーストは地味に見えるかもしれませんが、私は好きなポジションです。

 

――高校時代までは投手で、ビックカメラ高崎に入ってから野手に転向しました。

内藤: はい。転向したばかりの頃はファーストの守備が全くできませんでした。本当にゼロからのスタート。最初はボールが怖く、泣きながらノックを受けたり、うまくできずに何回も練習から外されることもありました。コツコツ積み重ねてきたことでオリンピックという舞台で結果を出せた。ベストディフェンス賞というかたちで、その点を評価していただいたことは“やってきて良かった”と思いましたし、“努力は裏切らないとは、こういうことなんだな”と実感しましたね。

 

――日本リーグHPに掲載されているプロフィールには「注目して欲しいプレー」の欄で、「攻めの守備、攻撃」とあります。オリンピックでも攻めの守備を意識していた、と?

内藤: もちろんです。守備で消極的になってしまうとダメなんです。ソフトボールは野球と比べても塁間の距離が近いので、一瞬の判断がすごく大事になります。攻めたプレーができないとチームに勢いもつかないと思っています。攻めの守備は自分の中で意識していることですし、オリンピックでもそれができたことは良かった。

 

――さて、後半戦開幕節はHondaとの対戦となりました。昨季、決勝トーナメントでで優勝を争ったチームです。今季からは元同僚の糟谷舞乃選手もプレーしています。

内藤: 彼女とは同学年で仲が良く、いいライバル。でも特別意識することはありません。Hondaさんは長打力のあるチームで、ホームランを打てるバッターが揃っている。手強い相手です。

 

「自分のことよりチーム」

 

――前半戦を振り返って8勝3敗という成績はどう捉えていますか?

内藤: 前半戦で3敗は多かったと感じますが、この経験を後半戦に繋げていかないと意味がない。どのチームが相手でも油断はできないので、気を引き締めて後半戦に臨みたいです。

 

(写真:昨季はリーグベストナインに選出。勝負強いバッティングには定評がある)

――後半戦に向けての意気込みを。

内藤: 自分のことよりチームが勝つことが最優先です。それに数字ばかり見てしまうと、私はうまくいかないタイプ。チームが勝つためにプレーしていくことで、その結果が数字に表れればいい。目標はもちろん優勝ですが、一戦一戦しっかり戦っていきたい。

 

――チームの強みは?

内藤: 常に優勝を期待されているチーム。勝ちに対する執念が強い。最後まで諦めないところがウチの強みなのかなと思います。

 

――昨季からはキャプテンを務めています。

内藤: ウチは年齢層が幅広く、選手のレベルや経験値も異なるので、それをひとつにまとめるのは難しい。ただ、チームには心強い先輩たちがいますし、試合になればひとつの目標に向かってまとまれるので不安に感じてはいません。私はできる限り、若手にどう考えているか意見を聞くようにしています。

 

――座右の銘はありますか?

内藤: 「今を大切に」。私が若い時に当時コーチだった岩渕(有美)監督から贈られた言葉です。その言葉をグラブに刺繍したり、今も大切にしています。

 

――プレーヤーとしての理想像は?

内藤: 私は北京オリンピックを見て、“オリンピック選手になりたい”“日本代表に入りたい”という夢をもらった側でした。今度は夢を与える側にならないといけない。私のプレーを見て、“ソフトボールをやってみたい”と思ってもらえるような選手になれればと思っています。

 

――今後のキャリアについては、どう考えていますか?

内藤: 今は目の前のことしか考えていません。私はソフトボールしかできない。自分が悔いなく終われるまで現役を続けたいと思っています。

 

内藤実穂(ないとう・みのり)プロフィール>

1994年4月26日、大阪府生まれ。小学1年でソフトボールを始め、佐賀女子短期大学付属佐賀女子高校では2度のインターハイ準優勝。2013年、ルネサスエレクトロニクス高崎(現ビックカメラ高崎)に入団。20年よりチームの主将を任され、日本リーグ連覇に貢献した。同年のベストナイン(一塁手)にも選ばれた。日本代表では18年世界選手権に出場し銀メダルを獲得。今年の東京五輪では主に上位打線を任され、一塁手のレギュラーを張った。最優秀守備選手賞に輝くなど、攻守で活躍し、金メダル獲得に貢献した。内野手。右投右打。身長162cm。

 

(写真:ビックカメラ高崎提供)

 

 BS11では後半開幕節の中から注目のビックカメラ高崎BEE QUEENvs.Honda Riverta戦を放送します。オンエアは9月5日(日)19時。東京オリンピックで活躍した選手たちのプレーも必見です。是非ご視聴ください。

※放送内容は中止、または変更になる可能性がございます。


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