(写真:五十嵐を始め経験豊富な選手が加入。東地区の台風の目となれるか)

 今季のB1は、群馬クレインサンダーズと茨城ロボッツの昇格組が加わり、22チームで覇を競う。昨季B2を制した群馬は、新潟アルビレックスBBからPG五十嵐圭、横浜ビー・コルセアーズからSFアキ・チェンバースらを獲得し、B1チームにも見劣りしない戦力で激戦の東地区に臨む。B1最年長となった41歳、元日本代表の五十嵐に話を聞いた。

 

――B.LEAGUEは6季目を迎えました。リーグ初年度からプレーしていますが、開幕を迎える心境に変化は?

五十嵐圭: シーズンを迎えるまでの準備は基本的に変わりませんが、チームを移籍しましたから“新たなスタート”という気持ちは強いですね。

 

――地元・新潟から移籍した経緯をお聞かせください。

五十嵐: 限られた現役生活の中、「チャレンジしたい」という部分が一番大きかった。私自身、この年齢(41歳)で他チームからオファーをいただけると思っていませんでした。それは素直にうれしかった。もちろん新潟には思い入れがありますし、移籍の決断は正直迷いました。群馬の吉田真太郎GMからチームのビジョンを聞いた時に“面白そうだ。挑戦してみたい”と思ったことが決め手となりました。

 

――加入後の群馬の印象は?

五十嵐: チームとしては初のB1ですが、私を含め多くの選手たちがB1を経験しています。私自身、新潟にいた時から彼らとは対戦経験があります。特徴なども分かっていましたし、練習を重ねていくごとに相互理解は深まっていると感じています。チームとしての完成度はまだまだですが、シーズンを通して成長していければいいと思っています。

 

――チームの課題は?

五十嵐: 得点力のある選手が揃っていますが、オフェンス力だけではB1で勝ち続けることができません。ディフェンス面でのレベルアップが必要になってくると思います。

 

――PGとして、コート上でチームをまとめる役割も担っています。

五十嵐: PGは「コート上のHC」と言われるように重要なポジションであることは長年やってきてわかっているつもりです。PGの指示、ゲームメイクが勝敗のカギを握る。それを背負う難しさ、怖さはあります。まだ楽しむまでの余裕はないのですが、良い判断ができるようにプレーしたいと思っています。

 

「年齢は関係ない」

 

五十嵐圭(いがらし・けい)1980年5月7日、新潟県出身。中央大-日立-トヨタ自動車-三菱電機-新潟アルビレックスBB。今季より群馬クレインサンダーズに入団。新潟時代の18-19シーズンには中地区優勝に貢献した。03年に日本代表デビュー。アジア選手権(03、05、07、09年)、世界選手権(06年)に出場した。身長180cm、体重70kg。ポジションはPG。背番号7。

――魅せるプレーは意識していますか?

五十嵐: 自分たちがプロ選手である以上、“魅せるプレー”を求めるファンやブースターの皆さんもいます。しかし、自分自身に余裕がなければ、そういうプレーは試合で出せない。派手なプレーを狙っているわけではなく、“魅せる”ことが自然とできるようにと、トレーニングに励んでいます。

 

――得点やアシストなど、スタッツにこだわりはありますか?

五十嵐: 特別こだわることはありませんが、目標設定はしています。試合ごとに得点、アシスト数などの目標を掲げ、自分がそれをクリアできれば、チームが勝つ確率も上がる。それに1試合1試合、目標を掲げることで自分のモチベーションにも繋がると思っています。

 

――今季はリーグ最年長となりました。

五十嵐: コートに立てば“年齢は関係ない”と思っています。ただこうやって取材などで「リーグ最年長」と言われると、“年をとったんだな”と改めて感じますね。観ている人たちに“五十嵐、年をとって衰えたな”ではなく“まだまだやれる”と思っていただくためにはコートで示すしかない。

 

――プレースタイルも変わってきましたね。

五十嵐: 若い頃は自分自身でボールをプッシュし、スピードを生かすことを意識していました。ただそれ一辺倒ではダメだという経験もしてきた。いろいろな経験をしてきたことで、自分からガンガン仕掛ける時と、そうではない時のバランスが取れるようになりました。つまり“要領良く”プレーできるようになった気がします。

 

――インタビューでは「まだまだうまくなれる」と、おっしゃっていました。

五十嵐: その思いがなければ、私は引退しています。現役でやっている以上は、“もっと勝ちたい”“もっとうまくなりたい”という気持ちがある。だからこそ、今季の移籍も決断しましたし、その思いがなくなってしまったら、自分は引退する時だと思っています。

 

――今季の目標は?

五十嵐: チームとしては優勝。そのために、まずは東地区で勝ち上がり、CSに進まなければいけません。過去5シーズンの経験で、それは簡単な目標でないことは分かっています。チームには能力の高い選手が揃っていますので、PGとしてうまく使いながら、プレーで引っ張っていきたいと思います。

 

 チームをひとつに

 

笠井康平(かさい・こうへい)1993年8月12日、香川県出身。青山学院大-四国電力-名古屋ダイヤモンドドルフィンズ。20-21シーズンより群馬クレインサンダーズに入団。全試合に出場し、B2優勝&B1昇格に貢献した。今季よりマイケル・パーカーと共同キャプテンを務める。身長175cm、体重76kg。ポジションはPG。背番号13。

 昨季は57試合に出場したPG笠井康平は、群馬のB2優勝に貢献した。チーム在籍2年目となる今季からPFマイケル・パーカーと共同キャプテンを務め、B1初挑戦の群馬を牽引する。28歳の新キャプテンはどうリーダーシップを発揮していくのか。

 

――チームとしては初のB1となりますが、笠井選手自身は名古屋ダイヤモンドドルフィンズで18年からの3シーズン、B1を経験しています。

笠井康平: 昨季、チームに加入して自分たちの力でB1昇格を果たしました。今季は共同キャプテンを任されています。過去3シーズンとは違った気持ちで開幕を迎えています。

 

――チーム在籍2年目でのキャプテン就任に対して、驚きはありましたか?

笠井: 実はキャプテンになる前、チームメイトから冷やかし半分で「キャプテンになるんじゃないの?」と言われていたんです。だから「キャプテンをやってほしい」とチームから頼まれる前から気持ちの準備はできていました。“自分ができることを頑張ろう”と思い、引き受けました。

 

――キャプテンとして、どうチームをまとめていきたいですか?

笠井: コートの中でたくさんコミュニケーションを取りながら、自分が身体を張ってチームを鼓舞することは昨季以上に意識していきたいと思っています。その上でコート外でも積極的にコミュニケーションを取り、チームがひとつになれる手助けができたらと考えています。

 

――共同キャプテンのパーカー選手は、昨季期限付き移籍で加わり、今季から完全移籍となりました。

笠井: コートの中でリーダーシップが取れる選手です。接戦になった時や大事な試合には、周りを巻き込んで良い雰囲気をつくれる。プレーヤーとしてはもちろんのこと、メンタル的な部分でチームに欠かせない存在ですね。

 

 数字に表れない部分も

 

――今季はHCが代わり、選手も入れ替わりました。

笠井: 個々の能力が昨季に比べてパワーアップしたと感じます。チームの強みは全員が走れること、そしてアップテンポなバスケットができることです。ポテンシャルの高い選手が揃っているので、それぞれの長所がうまく噛み合っていけば、勝ちも増えていくはずです。個の力に頼るのではなく、お互いを助け合うプレーが増やし、強いチームになっていければと思っています。

 

(写真:自身の攻撃力アップのためシュートだけでなく、より実戦形式のトレーニングを積んでいる)

――新加入は五十嵐選手をはじめ、経験豊富な選手が多いですね。

笠井: (五十嵐)圭さんは自分で得点ができ、ラストパスも出せるスキルが高いプレーヤーです。同じポジションではありますが、自分はチームのバランスを見ながら周りを生かすタイプのPGなので、一緒に練習して学べることはたくさんあると感じています。

 

――昨季53試合で先発しましたが、元日本代表PGというライバルが入ってきたことは刺激になっていますか?

笠井: もちろん長い時間、試合に出ていたいという気持ちはあります。まずはチームが勝つことが一番。自分とは違うタイプの圭さんが入ってきたことで、チームとして戦術の幅も広がる。競争する気持ちは忘れませんが、ベンチに座る時間が長くなったとしてもチームの勝利のために自分ができることを尽くしたいと思います。

 

――PGとしてのこだわりは?

笠井: うまく試合をコントロールし、選手それぞれの強みを生かしていくことが大事だと思っています。自分たちのリズムをつくれるように考えてプレーしています。

 

――ご自身の課題は?

笠井: 得点力ですね。数よりは、ここぞという場面で決め切れる力。相手にダメージを与えられる得点を奪える決定力が必要だと感じています。

 

――今季の目標は?

笠井: チームとしては優勝を頭に置きながら、まずCSに出場することを目指します。昨季はケガもなく全試合に出場できました。今季も全試合出場し、チームに貢献したい。いい成績を残せればいいですが、数字に表れない部分も大事にして頑張りたいと思います。

 

(写真:ⓒGUNMA CRANE THUNDERS)

 

 BS11では今季も「マイナビBe a booster! B.LEAGUEウィークリーハイライト」(毎週木曜22時~22時30分)を放送します。今季の初回放送日は10月7日(木)。メインコーナーであるピックアップリポートは、宇都宮ブレックス×群馬クレインサンダーズ戦(予定)を突撃取材! 是非ご視聴ください。


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