動画を通じて伝えたい“野球の楽しさ” ~YouTuberトクサンインタビュー~
ユーチューブ(YouTube)で大人気の「トクサンTV」。子どもから大人まで楽しめる番組構成で、今や野球チャンネルとして不動の地位を築いた。その主宰者であるトクサンと当HP編集長・二宮清純が野球談議に花を咲かせる。
二宮清純: 「トクサンTV」の人気はすごいですね。チャンネル登録者数が約64万人で、総再生回数は6億1000万回を(共に8月16日時点)突破しています。とはいえ、本誌で初めてその存在を知った人もいると思うので、どんな動画をアップしているのか教えてください。
トクサン: ご紹介、ありがとうございます。トクサンTVでは、野球技術の研究や用具の紹介、プロ野球選手への取材、有名人とのコラボ企画、自分が所属する草野球チーム「天あっ 晴ぱれ 」の試合動画など、野球に関する幅広い情報を発信しています。
二宮: 野球映像を作るようになったきっかけは?
トクサン: 創価大学卒業後に一般企業で働き、その後教員免許取得を目指して筑波大学に通ったのですが、その傍らで「天晴」に、所属していました。そこでチームメートのライパチ(大塚卓さん)に「自分の動画に参加して、野球技術を教えてほしい」と頼まれたんです。その動画が好評で、やがてコンビで動画を作るようになりました。
二宮: お二人の軽妙なやり取りも魅力の一つですよね。映像を見ると、撮影の仕方や演出がしっかりしていて驚きます。
トクサン: 私自身ユーチューバーですが、実は映像制作会社の社員でもあります。その会社の社長(アニキこと平山勝雄さん)がもともとテレビのプロデューサーで、カメラワークなど撮影技術を一から教えてもらいました。
二宮: もう一つ驚いたのは、トクサンが所属している「天晴」のレベルの高さです。
トクサン: 恐縮です。「天晴」は東京都を中心に活動しています。これまで「PRIDE JAPAN甲子園大会」や「第二回グランドスラム大会東京都大会」で優勝し、昨年も「PRIDE ドリームカップ東京都予選」で優勝しました。
二宮: ほう、それはすごい。昔から強かったのですか。
トクサン: いえ、もとは野球掲示板で知り合った仲間でスタートしました。それが、試合を経るにつれて徐々に仲間が増えて戦力が整っていった感じです。草野球ですけど、みんな一生懸命やっています。
二宮: 草野球は楽しいですよね。私も昔、草野球チームを主宰していました。練習や試合が終わった後に、いつもみんなでビールを飲んでワイワイやっていた。野球というより、飲み会のために来ていた人のほうが多かった気もしますけど(笑)。
トクサン: それはすごくわかります。今はなかなか難しいですけど、草野球の楽しみは居酒屋とセットですよね。
二宮: 野球はいつごろ始められたのですか。
トクサン: 小学3年生からソフトボールを始めて、中学校で軟式野球のクラブチームに入りました。
二宮: それから帝京高校の野球部に入部するわけですが、簡単には入れないでしょう?
トクサン: そうですね。入試とは別にセレクションがあって、そこで合格しなければ、高校に受かっても基本的に入部できません。
二宮: 何と言っても強豪校ですからね。周りの選手たちもすごかったのでは?
トクサン: みんな私より背が高く、パワーもスピードも段違いで、初日の練習から圧倒されました。「3年間、補欠のままでもよければ来たら」と言われて入ったのですが、少しだけあった自信も見事に砕け散りました。
二宮: 実際に甲子園でプレーした経験は?
トクサン: 懸命に練習に励んで3年の夏にベンチ入りできましたが、出場機会はありませんでした。
二宮: 卒業後は創価大に進学されますが、見事な成績を残していますね。4年時には主将を任され、リーグ戦(東京新大学野球連盟)でMVP、首位打者、盗塁王、ベストナインに輝き、全日本大学選手権ベスト4進出の原動力となりました。
トクサン: ありがとうございます。でも、私たちの世代はいわゆる“谷間の世代”で、優秀な後輩たちの力があったからこその結果です。
二宮: ちなみに、ベスト4に進出した全日本大学選手権では、犠打の大会記録を作っていますね。
トクサン: とにかくバントをしまくった大会でした。私の一つ上の学年はすごい選手が多くて、そのなかで生き残っていくために堀内尊法コーチ(現監督)がつきっきりで小技を教えてくれたんです。それが生かされました。
二宮: 創価大は小川泰弘投手(東京ヤクルト)や石川柊太投手(福岡ソフトバンク)をはじめ、近年、多くのプロ野球選手を輩出しています。トクサンの学生時代にも、小谷野栄一さんなどが活躍していましたが、プロに行きたいという願望はあったのですか。
トクサン: 小さいころから夢は持っていて、実際、大学4年のときには複数の球団がリストアップしてくれていたんです。夢のプロ野球まであと一歩というところでしたが、結局、指名はされませんでした。たぶん、バッティングの非力さがネックになったんだと思います。でも、やり切ったので悔いはありませんでした。
(詳しいインタビューは9月1日発売の『第三文明』2021年10月号をぜひご覧ください)
<トクサンプロフィール>
本名・徳田正憲。1985年、東京都大田区出身。小学3年でソフトボールを始め、中学では軟式野球クラブチームに所属した。その後、帝京高校硬式野球部のセレクションに合格して入学。甲子園には3年夏に、控え選手として出場した。創価大学進学後は、野球部に所属。主将として臨んだ4年のリーグ戦(東京新大学野球連盟)ではMVP、首位打者、盗塁王、ベストナインに輝き、続く全日本大学選手権ではベスト4に進出した。卒業後は一般企業などを経て、2016年8月、YouTubeに「トクサンTV」を開設。日本一の野球チャンネルへと成長させた。著書に『トクサンTVが教える超守備講座』『トクサンTVが教える超ピッチング講座』などがある