9月19日の広島戦で、東京ヤクルトの村上宗隆選手がプロ通算100号となるメモリアルアーチを放ちました。21歳7カ月での100本塁打達成は、1989年の清原和博さん(西武)の21歳9カ月を抜き、史上最年少記録です。


 村上選手は18年、熊本・九州学院高からドラフト1位でヤクルトに入りました。2年目の19年に36本塁打、20年には28本塁打をマークしました。そして今季は38本塁打(26日時点)です。高卒選手がプロ入り後にぶち当たる「木製バットの壁」は、村上選手には無縁だったようです。

 

 木製バットの壁で思い出すのが、17年9月にカナダで行われた「第28回WBSC U-18ベースボールワールドカップ」です。この大会、日本代表のメンバーには高校通算65本塁打の安田尚憲選手(履正社・大阪、千葉ロッテ)、同109本塁打の清宮幸太郎選手(早実・東京、北海道日本ハム)、そして同年夏の甲子園で1大会個人最多となる6本塁打を記録した中村奨成選手(広陵・広島、広島)と超高校級のスラッガーが揃いました。

 

 彼らは村上選手と同世代です。だが、世界の壁の厚さは想定していた以上でした。安田選手はスーパーラウンド初戦のオーストラリア戦でサヨナラ打を放つなど気を吐きましたがホームランはゼロ。清宮選手は2本のホームランを放ったものの、9試合で32打数7安打、2割1分9厘。中村選手は打率1割2分と低迷しました。チーム打率も2割5分1厘でした。

 

 打撃不振の原因は木製バットへの対応力不足につきます。04年、第21回大会にU-18日本代表を率いて出場した渡辺元智さん(横浜高校前監督)は、打てないU18代表について、スポーツニッポン紙で、こう持論を述べていました。一部を引用しましょう。

 

<金属なら当てれば飛ぶが、木製では飛距離が5メートル以上変わる。加えて、特に米国や韓国の投手は動く球を操る。攻略には、より見極めを徹底する必要がある。最近の日本の高校野球全体に言えることだが「楽しくやる」ことが前提となり、初球からフルスイングする流れに変わってきた。打者の体力が向上して、金属なら簡単に本塁打を打てる。一方で粘って甘い球を待ったり、見極める力が全体に落ちてきてはいないだろうか>(スポーツニッポン17年9月11日付紙面)

 

 さて、高野連では2年前の9月から打球速度の低減による選手の安全確保を理由に、金属バットの性能見直しに着手しています。5日には新基準金属バットのテストが行われました。

 

 新バットは最大径が従来の67ミリから64ミリに縮小し、ミートスポットを肉厚にして従来より打球が飛ばなくなっています。反発性能が抑えられ、木製バットに近い新バットは、試験に参加した高校生によれば「打球に伸びがなく、インパクトの感じは木のバットの近かった」とのことです。

 

 安全確保が最大の理由ですが、こうした"飛ばないバット"が導入されることで、高校生の打撃にも変化が出てくることでしょう。ひいてはプロ入り後、木製バットの壁にぶち当たる高卒ルーキーも少なくなります。

 

 新基準金属バットは22年シーズンから使用開始となり、完全移行は24年からとされています。新基準金属バットが、超高校級スラッガーがそのままプロでも活躍できる一因となることを期待しましょう。

 

 

(文・まとめ/SC編集部・西崎)


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