6季目を迎える男子プロバスケットボールリーグ「B.LEAGUE」が9月30日の琉球ゴールデンキングスvs.アルバルク東京戦(沖縄アリーナ)を皮切りに開幕する。昨季は入れ替え戦を行わなかったB1は、群馬クレインサンダーズと茨城ロボッツの2チームを加え、過去最多の22チームで争われる。昨季に続き東西2地区制を敷き、各カンファレンス上位3チーム+ワイルドカード(各カンファレンス上位3チームを除く上位2チーム)の計8チームがチャンピオンシップ(CS)に進出する。
 

 例年以上にストーブリーグが賑やかだった。昨季王者の千葉ジェッツふなばしは、インサイドの柱セバスチャン・サイズがA東京に移籍した。昨季CSのMVPに輝いたサイズはレギュラーシーズン1試合平均18.2得点、11.9リバウンドを記録。その穴はそう簡単に埋められるものではないだろう。さらにシックスマンないし、スタメンとしても機能していたシャノン・ショーターがトルコのリーグへと旅立ち、控えガードのコー・フリッピンも琉球に移籍。シューターの田口成浩は秋田ノーザンハピネッツに復帰した。戦力ダウンは否めない。

 

 一方でジョン・ムーニーとクリストファー・スミスという2人の新外国人が加入した。特に富樫勇樹、ギャビン・エドワーズらは残留しただけに、骨格の部分までは削がれたわけではない。大野篤HC体制で6季目を迎える。新加入の選手、成長してきた赤穂雷太ら若手が穴をどう埋めるかがカギを握りそうだ。キャプテンの富樫は「トランジションが千葉の強み。PGの僕がボールをプッシュする」と意気込む。悲願のリーグ制覇を果たし、今季は2連覇が懸かるが「チャレンジャーの気持ちで戦っていきたい」と語った。

 

 今回積極的な補強が目立つのは島根スサノオマジック、広島ドラゴンフライズ、群馬、A東京だ。島根はA東京の司令塔・安藤誓哉、昨季MVPの三河シーホースのシューター金丸晃輔を獲得。「環境が変わって刺激的なシーズン。今まで以上に濃い1年になりそう」と金丸。広島はレバンガ北海道から昨季得点王のニック・メイヨ、川崎ブレイブサンダースからシューターの辻直人、京都ハンナリーズから司令塔の寺嶋良が加わった。島根、広島の2チームは西地区の台風の目となりそうだ。

 

 昇格組の群馬は、過去4シーズン(19-20シーズンはCSを行わなかった)の王者が揃う東地区に入った。経験豊富なベテラン五十嵐圭と、攻守に貢献度の高いアキ・チェンバースをそれぞれアルビレックス新潟BB、横浜ビー・コルセアーズから獲得した。チェコ代表で2m17cmのオンドレイ・バルヴィンが加入し、インサイドも強化された。昨季B2MVPトレイ・ジョーンズと帰化選手マイケル・パーカーらと形成されるユニットはB1の強豪と比べても遜色ないように映る。「目指すところは優勝だが、これまでの5シーズン(新潟でB1を経験)でその難しさは分かっている。まずはCSを目標に戦いたい」と五十嵐。宇都宮を初代王者に導いたジョン・ウィスマンHCの下、B1で雷鳴を轟かせることができるか。

 

 A東京は安藤と竹内譲次がチームを去ったが、前述したサイズに加え、宇都宮ブレックスからライアン・ロシターとビッグマン2人を手にいれた。名古屋レッドドルフィンズからはシューターの安藤周人、レバンガ北海道から司令塔のジョーダン・テイラーを獲得。3連覇をかけて臨んだシーズンでまさかのCS進出すらも逃した名門クラブが、なりふり構わずの補強で巨大戦力を有する。この新戦力がルカ・パヴィチェヴィッチHCのバスケットに適応できるかがポイントとなるだろう。

 

 その意味で今季からキャプテンに就いた田中大貴に求められる役割は例年以上に大きくなる。日本を代表するオールラウンダーがコート外でもリーダーシップを発揮していく必要がある。

「メンバーだけ見れば充実しているかもしれないが、ルカHCのバスケットに慣れるのには時間がかかる。最強のチームになりたいので、自分はどんな時もブレずにいきたい」

 

 そのA東京と9月30日に先出し開幕戦で対戦するのが琉球だ。フリッピンのほか、東京オリンピックの代表に選ばれた渡邉飛勇を獲得。西地区優勝を果たした昨季の戦力をさらに充実させた。岸本隆一は「アルバルクはB.LEAGUEが開幕する以前から全チームが意識するチーム」と語り、こう続ける。

「みんなが注目する開幕カード。観ていただいた方に“いいゲームだったな”と思ってもらえる試合をしたい」

 

 2016年9月22日、記念すべきB.LEAGUE旗揚げ戦のコートに立ったのがA東京と琉球だ。5年前は中立地である東京・国立代々木競技場第一体育館で開催したが、今季は琉球の本拠地沖縄アリーナで対戦する。最大1万人の収容人数を誇る新アリーナについて、岸本は「不思議な力の湧いてくる場所」と表現する。ハードワークを厭わない両チーム。今季の幕開けにふさわしい好ゲームを期待したい。移籍が活発した6季目のB.LEAGUE。これまでファイナルには全て東地区のチームが出場している。“東高西低”の勢力図は塗り替えられるのか。その点にも注目したい。

 

(文/杉浦泰介)