(写真:RIZIN王者・斎藤<左>とDEEP王者・牛久のフェザー級王者対決だ ⓒRIZIN FF)

 朝倉未来が、予想外の寝技勝負に出て萩原京平を破った10・2『RIZIN LANDMARK vol.1』の余韻が残る中、次大会が目前に迫る。

 10月24日、神奈川・ぴあアリーナMM『RIZIN.31』─―。

 メインイベントはRIZINフェザー級タイトルマッチ、王者・斎藤裕vs.挑戦者・牛久絢太郎だ。

 

 大方のファンは、この大会で、6・13東京ドーム大会で朝倉未来を破ったクレベル・コイケが斎藤に挑戦すると思っていた。それが順当だろう。実際、RIZINサイドも、その流れを作ろうとしていた。

 しかし、クレベルは足の負傷を理由にオファーを受けず。そのため、斎藤の対戦相手選びは難航した。斎藤vs.牛久の決定が発表されたのは、決戦20日前の今月4日である。

 

 牛久はDEEPフェザー級王者だが、RIZINには初参戦。そのため当初はノンタイトル戦となる予定だったが、斎藤は「対戦相手が誰でもベルトをかけてやりたい」と直訴。これを主催者が受け入れる形でタイトルマッチとなった。

 

(写真:牛久はRIZIN初参戦でタイトルマッチというチャンスを掴めるか ⓒRIZIN FF)

 挑戦者・牛久を少し紹介しておこう。

 斎藤よりも8歳年下の26歳。小学1年から柔道を始め、中学生の時に総合格闘家になることを決意。高校2年で和術慧舟會に入門し2012年、パンクラスでプロデビュー、これまでのプロ戦績は22勝(6KO)8敗1分け。現K-Clann所属。

 20年9月、弥益ドミネーター聡志に勝利し、DEEPフェザー級王座に就いている。グラップラータイプで堅実、粘り強さが持ち味の成長株だ。

 

 対戦発表会見で牛久は言った。

「初参戦でタイトルマッチの相手に選んでいただき、ありがとうございます。格闘家人生のすべてをかけてぶっ壊しにいきます」

 迎え撃つ斎藤もこう話した。

「これまでに牛久選手と似た相手との対戦は何度も経験しています。苦しい展開はもちろん想定しているし、最後は衝撃の結末、KOを目指して頑張りたい」

 

 斎藤裕に託された大会

 

 互いに相手を挑発するような言葉は発しない。だが、静かな雰囲気のまま会見が終わったわけではなかった。

 

(写真:朝倉未来に斎藤との再戦を直訴されたことを明かしたRIZIN榊原COO<中央> ⓒRIZIN FF)

 斎藤にメディアから質問が飛ぶ。

「朝倉未来選手が、斎藤選手に関して『華がない。チャンピオン失格だ』と発言している。どう思うか?」と。

 顔色を変えずに斎藤は答えた。

「(『RIZIN LANDMARK』での)朝倉選手よりは、いい試合をしたいと思います」

 

 その言葉には熱がこもっていた。

 今大会は、朝倉兄弟、那須川天心、堀口恭司が不在。斎藤裕に、すべてが託されている。大会ポスターも斎藤のピン。勝って王座を防衛することは勿論だが、勝ち方も問われることになるのか─―。

 これまで、地味な印象を拭えぬ観があった斎藤だが、覚醒の刻を迎えるのかもしれない。

 約1年2カ月前、RIZINに初参戦した時と同じ会場、ぴあアリーナMMでの王者の闘いぶりに注目したい。

 

 ちなみに今日10月8日は、斎藤裕の誕生日。Happy Birthday!

 

近藤隆夫(こんどう・たかお)

1967年1月26日、三重県松阪市出身。上智大学文学部在学中から専門誌の記者となる。タイ・インド他アジア諸国を1年余り放浪した後に格闘技専門誌をはじめスポーツ誌の編集長を歴任。91年から2年間、米国で生活。帰国後にスポーツジャーナリストとして独立。格闘技をはじめ野球、バスケットボール、自転車競技等々、幅広いフィールドで精力的に取材・執筆活動を展開する。テレビ、ラジオ等のスポーツ番組でもコメンテーターとして活躍中。著書には『グレイシー一族の真実 ~すべては敬愛するエリオのために~』(文春文庫PLUS)『情熱のサイドスロー ~小林繁物語~』(竹書房)『プロレスが死んだ日。』(集英社インターナショナル)『ジャッキー・ロビンソン ~人種差別をのりこえたメジャーリーガー~』『伝説のオリンピックランナー“いだてん”金栗四三』『柔道の父、体育の父 嘉納治五郎』(いずれも汐文社)ほか多数。

連絡先=SLAM JAM(03-3912-8857)


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