若者の間で「親ガチャ」という言葉がはやっている。ちなみに「ガチャ」はカプセル玩具の販売機に由来する。

 

 

<この原稿は2021年11月8号『週刊大衆』に掲載されたものです>

 

 要するに子供は親を選ぶことができない。カネ持ちの親もいれば、そうでない親もいる。子供に理解のある親もいれば、そうでない親もいる。親に外れると進学や就職、結婚などで苦労し、「下級国民」としての人生を歩まざるを得なくなる――。それを「親ガチャに外れた」というらしい。

 

 昔、親に向かって、こんなことを言おうものなら、「自分の努力不足を親のせいにするな!」と、間違いなく一喝されたものだが、収入面などで“家庭間格差”が開いた今、若者の間では「それが現実だよ」と、冷静に受け止める傾向が強いという。

 

 その伝でいえば、10月11日に行われたプロ野球のドラフト会議は「球団ガチャ」か。高校生も大学生も社会人も、あるいは独立リーグの選手たちも、自らの意思で球団を選ぶことはできない。自らの進路は、全て球団の意思に委ねられるのだ。指名が競合すればクジ引きが待っている。

 

 運よく行きたい球団に入ることができたとしても、監督やコーチとソリが合わないこともある。ドラフト上位で指名された選手なら、ある程度、自らの主張を通すこともできるだろうが、下位指名選手や高校生は、そうはいかない。まだ体ができていないうちから酷使されたり、フォームをいじられたりしたことが原因で、早々と球界を去っていった選手は山のようにいる。

 

 一方で、望んだ指名ではなかったものの、球団やコーチの指導法、育成法が功を奏し、“ダイヤモンドの原石”が、本物のダイヤモンドになった選手もたくさんいる。こういう場合は「球団ガチャに当たった」ということになるのだろう。

 

 いずれにしても、どの球団が勝者で、どこが敗者か。ドラフトの結果は、すぐには分からない。収支が判明するのは最低でも5年、いや10年は先だろう。ともあれ、ルーキーたちの前途に幸多からんことを祈りたい。

 


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