11月、サッカー日本代表はベトナム代表戦、オマーン代表戦とアウェー連戦でした。2試合ともMF伊東純也(ゲンク)のゴールで1-0、2連勝を飾りました。ここ最近の代表の傾向を語りたいと思います。

 

 オーストラリア代表が中国代表に1-1で引き分けました。日本はグループBの2位に浮上したことは嬉しいニュースです。しかしながら、複数得点を期待できたベトナム相手に1得点……。FW大迫勇也(ヴィッセル神戸)が中央で起点になり、左サイドのFW南野拓実(リバプール)がクロスを入れて、ファーサイドで伊東が合わせたかたちは良かったですが、その後が続きませんでした。もっとサイドを深くえぐるシーンが見たかったですね。

 

 ホームで黒星を喫したオマーン相手には借りを返せたことは良かった。この試合ではFW三笘薫(ユニオン)がA代表デビューを飾り、見事後半から流れを変えました。積極的に左サイドから仕掛け、伊東のゴールをアシストしましたね。

 

 ここ最近、日本は4-3-3を採用しています。これは悪いことではないですが、もっと流れの中で2トップに変更しても良い気がします。元々、南野のメインポジションはトップ下。彼が思い切って内側にポジションを絞っても面白い。相手のDFのズレを生じさせることも可能になります。監督の指示でのシステム変更ではなく、ピッチ内でどんどん選手が自分で判断し、システムを変えても問題ないのではないか、と思いますね。

 

 伊東は代えがきかない存在になってきましたね。爆発的なスピードはドリブルだけでなく、ペナルティーエリア内に入る時にも生かされています。左サイドでゲームを作り、右から伊東が迫力をもってペナルティーエリアに入るのは相手の脅威になっています。プレースタイルは全く違いますが、あの瞬間だけゴン(中山雅史・現ジュビロ磐田コーチ)を彷彿させますね。

 

 ジョルジーニョのストレートキック

 

 ファーサイドにもクロスに合わせられるポイントがあるとクロスを上げる方は随分と楽になるはずです。僕がプレーしていた鹿島アントラーズではクロスに対し、ニア、真ん中、ファーと3人がペナルティーエリアに入ることが基本でした。3人がエリア内に入れば、点で合わせる必要がない。線で合わせればいいので得点の確率が上がるんです。ジョルジーニョがライナー性のストレートキックでクロスを入れて、あとはボールの軌道上に選手がいればしめたものでした。”ピンポイントクロス”など聞こえはいいですが、チームとして得点する確率を上げる作業は必要だと強く感じます。

 

 ここで生きるのが伊東のスピード。通常なら、クロスに間に合いそうもない場面でも彼の場合、ナイスタイミングでファーサイドに入れます。今後、伊東がクロスから得点する場面が増えることを期待しましょう。

 

 さて、この時期になると引退のニュースが入ってきます。代表経験者でいうと、FW大久保嘉人(セレッソ大阪)、MF阿部勇樹(浦和レッズ)、FW玉田圭司(V・ファーレン長崎)が引退を発表しました。個人的なことで言えば、玉田は習志野高校の後輩なので感慨深いものがあります。ひとまず、「お疲れ様です」と伝えたい。彼らはワールドカップ経験者です。ぜひ、貴重な経験を子どもたちに伝えて欲しいですね。

 

●大野俊三(おおの・しゅんぞう)

<PROFILE> 元プロサッカー選手。1965年3月29日生まれ、千葉県船橋市出身。1983年に市立習志野高校を卒業後、住友金属工業に入社。1992年鹿島アントラーズ設立とともにプロ契約を結び、屈強のディフェンダーとして初期のアントラーズ黄金時代を支えた。京都パープルサンガに移籍したのち96年末に現役引退。その後の2年間を同クラブの指導スタッフ、普及スタッフとして過ごす。現在、鹿島ハイツスポーツプラザの総支配人としてソフト、ハード両面でのスポーツ拠点作りに励む傍ら、サッカー教室やTV解説等で多忙な日々を過ごしている。93年Jリーグベストイレブン、元日本代表。

*ZAGUEIRO(ザゲイロ)…ポルトガル語でディフェンダーの意。このコラムでは現役時代、センターバックとして最終ラインに強固な壁を作った大野氏が独自の視点でサッカー界の森羅万象について語ります。


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