7年間の空白は予想以上に大きかった。2007年を締めくくる格闘技最大のイベント、「K-1 PREMIUM 2007 Dynamite!!」が31日、47,918人の観衆を集め、京セラドーム大阪で開催された。注目のメインイベント、桜庭和志と船木誠勝の一戦は、桜庭がチキンウィングアームロックで船木からギブアップを奪い、1本勝ちを収めた。山本"KID"徳郁は、寝技世界一のハニ・ヤヒーラをパンチで一蹴、KO勝利を奪い、魔裟斗は元プロボクシング世界王者、チェ・ヨンスに圧倒的な実力差を見せつけTKO勝利を飾った。また蘇ったビースト、ボブ・サップはボビー・オロゴンをパワーで粉砕、マウントパンチでKO勝利を収めた。
(写真:船木に勝利した桜庭)
【第13試合/HERO′Sルール/1R・10分、2R・5分、延長5分/85キロ契約】
○ 桜庭和志(日本/チーム桜畑)
1本勝 1R 6分25秒 チキンウィングアームロック
× 船木誠勝(日本/ARMS)

 打撃戦を仕掛ける船木を桜庭が冷静に捌き、グラウンドでのチャンスをうかがう展開で試合は始まる。桜庭がテイクダウンを取りグラウンドに持ち込むと、試合は桜庭のペースとなる。
 桜庭がサイドポジションを取り、船木の腕に絡みつくと一気に決着がついた。チキンウィングアームロックが決まると、船木はたまらずギブアップし、注目のカードは桜庭の1本勝ちで幕を閉じた。
7年間の空白は、単に桜庭と船木の実力差というものではなかった。
(写真:7年ぶりにリング復帰を果たした船木だったがブランクは大きかった)
「7年間で総合格闘技はレベルアップしている。1回バランスを崩すと相手のペースにはまってしまうので、気が抜けない戦いだった」
 船木は試合後にこう語った。今から14年前の1993年、総合格闘技というジャンルすらなかった時代に、船木はパンクラスを立ち上げた。新日本プロレスから真剣勝負を目指して独立したUWFはリングス、Uインターと分離して行ったが、プロレス色が完全に抜け切れていなかった。しかしその中でパンクラスの一瞬で勝敗が決まる“秒殺”での真剣勝負は、当時の格闘技界では衝撃であった。時を同じくして、アメリカでは第1回UFCが開催される。
 そして2000年、大きなターニングポイントを迎える。桜庭がUFC王者のホイス・グレイシーに歴史的な勝利を挙げ、日本の総合格闘技は世界のレベルに追いついた。そしてその後、総合格闘技の人気は急上昇し、須藤元気、高阪剛、宇野薫らが本場UFCのリングに上がることとなる。
 この7年間、実戦から遠ざかっていた船木は、自らが蒔いた種である総合格闘技の成長を肌で感じただろう。「再びリングに戻って来れて、本当に嬉しかった」、試合後、船木は目にうっすら涙を浮かべた。そして試合後のリングで桜庭は船木を労い、「僕らも年ですけど、もうちょっと頑張りましょうよ」、と語りかけた。
「ヒクソン戦で一度死んだ自分は、今日の試合で、もう一度生まれ変わるための切符をもらった。今後はやるかやられるか、後先のことを考えずに攻めるような気持ちで試合がしたい」
 生まれ変わった船木の今年の戦いに注目したい。

桜庭和志選手のコメント
「ギブスをはずしたら、体が軽かった。船木さんはパンチが上手くて驚いた。想像していた以上にローキックが強かったので、身が引き締まった。グラウンドの展開で顔面を殴ろうとしたが、船木さんはディフェンスが上手かったので、届かなかった。ヒクソンとの対戦は、やってみたいとは思うが、今の時点では次の試合のことは考えられない。今年は大きな怪我もなく、順調に試合ができた。来年も体に気をつけて、試合が続けられればと思います」

船木誠勝選手のコメント
「7年間、潰し合いの戦いをしてこなかったので、アームロックのとり方を忘れてしまった。やられた瞬間、もうだめだ、逃げられないと思った。自分にできたのは、ジャブと膝十字に行くか行かないか、というところしかなかった」


【第12試合/HERO′Sルール/5分3R/135ポンド契約】
○ 山本“KID”徳郁(日本/KRAZY BEE)
× ハニ・ヤヒーラ(ブラジル/アタイジジュニア柔術)
KO 2R 3分11秒 パンチ連打

 山本"KID"徳郁は、寝技世界一のハニ・ヤヒーラにグラウンドに持ち込む隙を与えず、打撃で一蹴した。1Rからタックルに来るヤヒーラにカウンターでパンチを打ち込み、ペースをつかむ。山本が右フックの好打を重ねると、ヤヒーラは打ち合いに応じ、試合は打撃戦となり、山本の望んだ展開となった。2ラウンド、山本の強打を浴び続け、ダメージの大きいヤヒーラがダウンしたところに、山本は駄目押しの蹴りを顔面に叩き込み、KO勝利を収めた。

山本“KID”徳郁選手のコメント
「攻め込みすぎるとタックルをもらうので、あの間合いでよかったのかな。ヤヒーラ選手はパンチの軌道がわからないので、リズムが取れなかった。2ラウンドでパンチを目に受け、二重に見えたが、パンチを当てることができたのでよかった」


【第10試合/K-1ルール/3分3R、延長2R/70キロ契約】
○ 魔裟斗(日本/シルバーウルフ)
TKO 3R 0分51秒 タオル投入
× チェ・ヨンス(韓国/KHAN GYM)

 魔裟斗は、元プロボクシング世界王者のチェ・ヨンスに、圧倒的な強さを見せ付けた。1ラウンドに左ハイキックでチェからダウンを奪うと、試合は魔裟斗の一方的なペースとなる。2ラウンドにはチェのパンチを空転させると、右フックをチェのテンプルに打ち込み、パンチでも打ち勝つ。3ラウンド、チェは苦し紛れにバックハンド・ブローで反撃するのがやっとの状態で、ローキックの連打でバランスを崩したところでセコンドからタオルが投入され、魔裟斗のTKO勝利となった。

魔裟斗選手のコメント
「余裕でした。パンチで倒してもよかったかな。チェ選手のパンチはぜんぜん効かなかった。本当はスカッと倒したかったので、タオルは投げて欲しくなかった。終わってほっとした。やっとクリスマスと年越しが一緒にできるかな。ちょっと前までは、格闘技以外にもいろんなことをやっていましたが、それじゃチャンピオンになれない。今は格闘技にはまっています。今しかできないことだから、自分が納得するまで思い切りやりたい」

【第7試合/K-1甲子園 U-18日本一決定トーナメント決勝戦/K-1ルール/3分3R/60キロ契約】
○ 雄大(日本/治政館)
判定 延長R 2−1 
× HIROYA(日本/フリー)

 今大会で誕生した「K-1甲子園 U-18日本一決定トーナメント」は、優勝候補のHIROYAを破り、雄大が初代王者となった。1回戦ではパンチ、蹴りのバランスのよい攻めで久保賢司を判定で破ると、決勝でもリズムよくHIROYAを攻める。コンビネーションに前蹴りを加え、HIROYAを突き放す。しかしハイレベルの展開の中で両者とも決め手に欠け、勝負は延長戦にもつれ込んだ。両者一歩も譲らぬ互角の展開となったが、手数でやや上回った雄大の手が挙がった。ハイレベルな技術戦となったが、魔裟斗は苦言を呈した。
「全然だめ! 若さがない。テクニックに走りすぎ。若いんだから、もっとがむしゃらに行かなきゃ。殴られるより殴りたい、鼻が折れても関係ない。K-1MAXが始まった時、俺はそんな気持ちで戦っていた」
 次回はリベンジを賭け、がむしゃらに戦うHIROYAの姿を期待したい。

雄大選手のコメント
「絶対にベルトが欲しかったので、優勝できて嬉しいです。大きな会場でしたが、アマチュアの試合よりも緊張しなかった。HIROYA選手は、以前に戦ったときよりも強くなっていた。HIROYA選手はムキになり、カッとなっているのがわかったので、それを見て冷静に戦おうと思った。今後は強い人と戦い、もっと自分の力を高めたい。僕はフェザー級がベストなので、70キロまで体重が増えるかわからないので、K−1MAXに出ることができるかは、まだわかりません」

<その他の試合結果と勝者のコメント>

【第11試合/HERO′Sルール/5分3R】
○ ボブ・サップ(USA/チームビースト)
KO 1R 4分10秒 マウントパンチ連打
× ボビー・オロゴン(ナイジェリア/チーム・オロゴン)

ボブ・サップ選手のコメント
「久しぶりの試合だったので、動きが鈍かったが、結果として勝てたので、全体としてはよかった。しかしビーストらしさを出せなかったので、今後はもっとビーストらしさを出して、お客さんを喜ばせたい。来年もK-1のリングに上がりたいと思う」

【第9試合/K-1ルール/3分3R、延長2R】
○ ニコラス・ぺタス(デンマーク/チーム・スピリットAE)
TKO 2R 0’41 タオル投入
× キム・ヨンヒョン(韓国/テウン会館)

ニコラス・ぺタス選手のコメント
「キム選手は本当に大きかった。チェ・ホンマン選手とスパーリングをやったことはあるが、スパーリングと実戦では迫力が違う。ハイキックは気分が乗っていたので、出すことができた。キム選手はまだ2戦目で、まだ慣れていない。これから伸びる要注意の選手だ。早い目に戦っていてよかったかな」

【第8試合/K-1ルール/3分3R、延長2R】
○ 武蔵(日本/正道会館)
KO 3R 1分26秒 左フック
× ベルナール・アッカ(コートジボアール/フリー)

武蔵選手のコメント
「アッカ選手がいいファイトをしてくれたので、僕もかき立てられた。楽しい試合だった。アッパーの連打をもらい、痛いじゃないかと思いながらも、ここは耐えようと思った。トリッキーに来るなと思ったので、1ラウンドは様子を見ようと思った。いきなりラッシュしてきたので、ここは付き合わずに冷静に戦おうと思った」

【第6試合/HERO′Sルール/5分3R】
○ 田村潔司(日本/U−FILE CAMP)
1本勝 3R 3分08秒 アームバー
× 所英男(日本/チームゼスト)

田村潔司選手のコメント
「もっと2人の持っている技術を見せたかった。所選手は思った以上に力のある選手で、やりがいがあった。これをバネに、もっと伸びて欲しい。試合前にビンタをされ、気合いが入った。でも冷静に考えたらゴングが鳴る前なんで、反則じゃないのかな…」

【第5試合/HERO′Sルール/5分3R】
○ ズール(ブラジル/B−TOUGH)
TKO 3R 2分13秒 タオル投入
× ミノワマン(日本/フリー)

ズール選手のコメント
「3ラウンドまで行くだろうと思っていたので、十分に準備をしていた。スタミナは問題なかった。ミノワ選手の作戦は予想がついたので、落ち着いて戦うことができた。このような大きな大会に出場ができ、私の価値を見出してくれたことには、たいへん感謝している」

【第4試合/HERO′Sルール/1R・10分、2R・5分、延長5分/85キロ契約】
○ メルヴィン・マヌーフ(オランダ/ショータイム)
KO 1R 1分49秒 マウントパンチ
× 西島洋介(日本/高田道場)

メルヴィン・マヌーフ選手のコメント
「西島選手は試合前に、私のパンチのテクニックは6回戦レベルと言っていたが、彼に勝った今、皆さんはどう思いますか? MMA(ミクスド・マーシャルアーツ)はボクシング、空手、キック、柔術などすべてをミックスした競技なので、その中でパンチの技術を向上させた。西島選手はすばらしいボクサーだと思う。リングに上がり、人生のすべてをかけて戦うファイターには、私は常に敬意を表している」

【第3試合/HERO′Sルール/5分3R/70キロ契約】
○ヨアキム・ハンセン(ノルウェー/フロントライン・アカデミー)
1本勝 2R 1分33秒 チョークスリーパー×宮田和幸(日本/フリー)

ヨアキム・ハンセン選手のコメント
「勝ててほっとしています。宮田選手はレスラーらしいバランスのよい選手でした。前の試合では負けはしたが、レスラー相手にいい試合ができたので、それがいい経験になった。この試合に勝たなければ、という力みがあったが、1ラウンドにパンチでダウンを奪い、自分らしさを取り戻すことができた」

【第2試合/K-1甲子園1回戦 U-18日本一決定トーナメント1回戦�/K-1ルール/3分3R/60キロ契約】
○ 雄大(日本/治政館)
判定 3−0
× 久保賢司(日本/立川キックボクシングアカデミー)

【第1試合/K-1甲子園U-18日本一決定トーナメント1回戦�/K-1ルール/3分3R/60キロ契約】
○ HIROYA(日本/フリー)
判定 3−0
× 才賀紀左衛門(日本/大誠塾)

【オープニングファイト/K-1ルール/3分3R】
○立川隆史(日本/TRYOUT)
KO 1R 1分43秒 右ローキック
×井上由久(日本/武勇会・四国中央支部)

【K-1甲子園U-18日本一決定トーナメントリザーブファイト/K-1ルール/3分3R/60キロ契約】
○村越凌(日本/湘南格闘倶楽部)
KO 1R 2’00 右膝蹴り
×藤本新(日本/大月道場)
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