北京五輪予選を兼ねた「アサヒスーパードライチャレンジアジア野球選手権2007」は2日、台湾・台中市インターコンチネンタル球場で決勝リーグ2日目を迎え、日本は宿敵・韓国と対戦した。負ければ今予選での五輪出場決定を逃す状況の中、日本は4投手の継投で4−3と接戦を制した。日本は五輪出場に王手をかけ、最終日となる3日は台湾と対戦する。
 両国の一投一打に息が詰まりそうなゲームだった。最終回、上原浩治が最後のバッターを仕留めた瞬間、激戦を制した喜びと安堵感が日本ベンチ、応援席に広がった。

 スタートは波乱含みだった。韓国の先発は右腕のリュ・ジェグクと発表されたが、試合直前になってスタメンを変更。ベテラン左腕のチョン・ビョンホがマウンドに上がった。日本では通常、認められない交代だが、国際大会では問題ないという。星野仙一監督は抗議に出たものの、試合はそのままプレーボールがかかった。

 日本の先発は当初、予想されていたダルビッシュ有(北海道日本ハム)ではなく、成瀬善久(千葉ロッテ)。今シーズンはリーグトップの防御率1.82と抜群の安定感を誇った左腕だ。ところが初回、いきなり痛打を浴びる。1死後、2番コ・ヨンミンに外角のチェンジアップをうまく打ち返され、打球は無情にも左中間スタンドに飛び込んだ。1−0。韓国が1点を先制する。

 この試合、日本は敗れると今予選で五輪出場権を得られなくなる。日本が残る台湾戦に勝ち、韓国がフィリピンに敗れて勝敗で並んでも、直接対決で敗れているため、1位は韓国となるからだ。絶対に負けられない日本は2回、すぐさま反撃に転じる。

 まず、先頭の4番・新井貴浩が変化球を多投するチョンのボールを見極め、レフトオーバーの2塁打で同点のチャンスをつくる。その後、2死はとられたが、1、3塁で大村三郎(千葉ロッテ)がチャンジアップを引っ張って三遊間を突破。日本が1−1の同点に追いつく。なおも、この日9番に入った森野将彦(中日)が放ったセカンドへの打球を相手がはじくタイムリーエラー。ミスに乗じて二塁走者が生還し、日本は逆転に成功した。

 流れを取り戻した日本は3回も得点を追加する。川崎宗則(福岡ソフトバンク)のヒットを足がかりに犠打で確実に得点圏に進め、打撃好調の阿部慎之助(巨人)がレフトへきれいな流し打ちをみせた。タイムリーでスコアは3−1。成瀬も2回、3回と3人で相手の攻撃を片付け、リズムをつかむ。

 ところが4回、前の打席で本塁打を浴びているコ・ヨンミンにセカンド後方へヒットを打たれ、成瀬は先頭打者の出塁を許す。続く3番イ・テックンに甘く入ったチェンジアップをとらえられ、打球は左中間を抜けた。一塁走者が還って3−2。なおも同点のランナーを2塁に背負う。

 ここで打席に入ったのは4番キム・ドンジュ。しかし、成瀬は打たれたチェンジアップを決め球に使い、うまく外角に沈めて空振り三振に打ち取った。さらに5番イ・デホは外から曲げるスライダーで見逃しの三振。踏ん張りどころで22歳の左腕は最高の投球をみせ、2番手の川上憲伸(中日)に後を譲る。川上にとっては慣れないリリーフ登板だったが、きっちり残りの1アウトをとり、日本は最小失点でピンチを切り抜けた。

 だが、粘る韓国は5回もチョ・インソンの2塁打で同点のランナーを出す。2死1、2塁となって迎えるはこの日2安打のコ・ヨンミン。川上は強気にインサイドを攻め、最後も内へ渾身のストレートを投げ込んだ。これには好調のバッターもさすがに手が出ず、ストラックアウト。その瞬間、川上は大きくガッツボーズをみせた。

 さらに日本は6回もピンチを招く。エラーと死球でランナーを2人出し、星野仙一監督は川上から早くも岩瀬仁紀を投入。岩瀬は四球で満塁にしたものの、前の打席で2塁打を放っているチョを得意のスライダーで三振に仕留めた。

 苦しい状況が続く中、待望の追加点が生まれたのは8回だ。先頭の阿部が右中間を破り、2試合連続の3安打で出塁する。前日のフィリピン戦で死球を受けて負傷した井端弘和(中日)が代打で犠打を確実に決め、1死3塁。続く稲葉篤紀がファウルで粘った末に執念で10球目をライト前に運んだ。貴重なタイムリーにクールな稲葉からも思わずガッツポーズが飛び出した。

 4−2。逃げ切り態勢に入った日本だが、韓国も楽には勝たせてくれない。3イニングス目のマウンドに上がった岩瀬をヒットと死球で無死1、2塁と攻め立てる。送りバントで1死2、3塁とし、イ・ジョンウクがレフトへの犠飛。1点差となって藤川球児(阪神)の投入も考えられたものの、星野監督は続投を選択した。

 岩瀬は指揮官の信頼に見事に応える。続くチョに三遊間を破られたが、一発のある代打パク・キョンワンに対し、カウント2−2からインサイドを厳しく突いた。球審の手がすばやくあがり、見逃し三振。これで勝負は決まった。

 なお、日韓戦に先立って行われた台湾−フィリピン戦は台湾が9−0と大勝した。日本は3日の台湾戦に勝てば、五輪出場が決まる。敗れた場合は、韓国、台湾と3チームが2勝1敗で並ぶことが予想され、その場合は当該チーム同士の勝敗で決着がつかないため、直接対決での失点率(失点÷守備イニング数)の勝負となる。現時点での失点は日本が3、台湾5、韓国6。このため、日本は台湾に0−1、1−2での敗戦(延長戦突入なら2−3でも可)なら、失点率で他の2カ国を上回り、予選突破となる。

 星野監督は台湾戦の先発をダルビッシュ有と明言した。ホスト国への大声援が大きなプレッシャーとなる一戦、星野ジャパンは若きエースにすべてを託す。

◇決勝リーグ(インターコンチネンタル球場)
日本代表(2勝)    4 = 021000010 
韓国代表(1勝1敗) 3 = 100100010
勝利投手 川上
敗戦投手 チョン・ビョンホ
セーブ   上原
本塁打   (韓)コ・ヨンミン1号ソロ

台湾代表(1勝1敗)  9 = 300210012
フィリピン代表(2敗) 0 = 000000000
勝利投手 リン・インチェ
敗戦投手 ビナラオ
本塁打   (台)チェン・キンフォン1号3ラン