北京五輪予選を兼ねた「アサヒスーパードライチャレンジアジア野球選手権2007」は3日、台湾・台中市インターコンチネンタル球場で決勝リーグ最終日を迎え、日本は台湾に10−2と逆転勝ち。決勝リーグ3戦全勝で、野球が公開競技だったロサンゼルス五輪も含め、7大会連続の五輪出場が決定した。
 7回を迎えて1−2。1点を追う苦境で、日本野球が本領を発揮した。5本の単打と送りバント、そしてスクイズ。つなぎの野球で日本はビックイニングをつくり、試合をひっくり返した。

 先発は日本がダルビッシュ有(北海道日本ハム)、台湾が右腕のヤン・ジェンブ。予想通りの起用でゲームは始まる。初回、先頭の西岡剛(千葉ロッテ)の打球はショートへのゴロだったが、バウンドが変わってラッキーな内野安打となる。このランナーをバントできっちり2塁に送り、2試合ヒットのない青木宣親(東京ヤクルト)もファーストゴロで西岡を3塁に進めて最低限の役割を果たした。

 ここで打席に入った主砲・新井貴浩への5球目は内角にくいこみ、ヒジに当たったかに見えた。ところが、球審の判定はファール。星野仙一監督も抗議を行うが認められない。日本にとっては不運なジャッジだったが、新井は自らのバットで幸運に変える。フルカウントとなった7球目、外角のボールにくらいつくと、打球は三遊間を破り、3塁走者を迎え入れた。4番の執念の一打で日本は1点を先制する。

 一方、先発・ダルビッシュは先頭打者にヒットを許す不安定な立ち上がり。2回以降も微妙な制球が定まらず、たびたび四死球で走者を出すが、力のある速球で相手バッターをねじ伏せていく。5回までわずか1安打に封じ、台湾に得点を与えない。

 日本はこの間に早く追加点をとりたいところだ。しかし、2つの併殺でチャンスをつぶすなど、なかなかヤンのボールをとらえきることができない。1点リードながら、流れは徐々に日本から離れていった。

 イヤな予感は6回に的中する。ダルビッシュは2死を簡単にとりながら、3番ペン・チェンミンにヒットを打たれ、打順は最も警戒すべき主砲のチン・キンポウに回る。ボールが先行し、カウントは1−3。次に投じた外角ストレートは、ストライクをとりにきた分だけ甘く入った。

 次の瞬間、鋭い打球が右中間へ。白球はグングン伸び、右中間の最深部を越え、スタンドまで届いた。まさかの逆転2ラン。とうとう台湾が試合の主導権を握り、スタジアムの盛り上がりは最高潮に達した。

 この試合、日本は敗れても1−2のスコアなら、韓国、台湾との失点率の差で五輪出場が決定する。ただ、ここまで来れば負けるわけにはいかない。逆転を許した直後の7回、選手たちの思いは1つにまとまった。

 まず先頭の村田修一(横浜)が死球を受けて出塁すると、稲葉篤紀(北海道日本ハム)がヒットでつなぐ。ここで星野監督は2塁走者の代走に、1塁コーチとして選手たちに走塁の指示を出していた宮本慎也(東京ヤクルト)を起用。8番の里崎智也(千葉ロッテ)には送りバントを命じた。

 そのバントは投手の正面に転がり、3塁は微妙なタイミング。だが、代走の宮本が3塁に勢いよくスライディングし、相手サードのブロックをはねのける。オールセーフで無死満塁。宮本の必死の走塁が光り、日本には絶好のチャンスがやってきた。

 バッターは9番・大村三郎(千葉ロッテ)だ。台湾も投手を2番手ゲン・バイシャンにスイッチし、勝負をかける。その4球目、大村はなんとスクイズを敢行。奇襲が鮮やかに決まり、日本は同点に追いつく。

 このビッグプレーで試合は一気に日本へ傾いた。1番にかえって西岡は糸を引くような打球をライトへ放ち、3−2と逆転すれば、川崎宗則(福岡ソフトバンク)が三遊間へ、新井がライトへ、阿部慎之助(巨人)がレフトへ――。来た球に逆らわず、逆方向に各バッターがはじき返す。ジャパンのユニホームを着た選手たちは次々と塁上を駆け巡った。気がつけば、打者12人の攻撃で6得点。スコアは7−2となり、日本は試合をほぼモノにした。

 結局、ダルビッシュは7回まで投げ切り、あとは藤川球児(阪神)、上原浩治(巨人)が各1イニングずつをゼロに抑えた。打線も最後まで気を緩めることなく、9回にも新井の2ランなどで3点を追加。ホスト国を圧倒する強さをみせ、五輪切符をがっちりとつかんだ。

 なお、もう1試合は韓国がフィリピンに13−1と大勝。2勝1敗で2位に入り、3位・台湾(1勝2敗)とともに、来春の世界最終予選で五輪出場権を目指す。

◇決勝リーグ(インターコンチネンタル球場)
日本代表(3勝)   10 = 100000603 
台湾代表(1勝2敗) 2 = 000002000
勝利投手 ダルビッシュ
敗戦投手 ヤン・ジェンブ
本塁打   (日)新井1号2ラン
       (台)チン・キンポウ2号2ラン

フィリピン代表(3敗) 1 = 0000100
韓国代表(2勝1敗) 13 = 020074× (7回規定によりコールド)
勝利投手 リュ・ジェグク
敗戦投手 ロブレス
本塁打   (韓)コ・ヨンミン2号2ラン