都市対抗総括・獣王、サクラ大戦に乗って決勝まであと一歩…
1月はお休みをいただき、当コラム2カ月ぶりの更新となります。今季のセガサミー野球部は2月10日、宮崎キャンプから本格始動です。さてその前に、途中となっていた都市対抗の総括から語らしていただきます。
奇策の先発を打ち崩せず
前回のコラムでは都市対抗初戦・北海道ガスとの試合を勝ったところまでを書きました。10対1で初戦を突破したセガサミーは2回戦で日本製鐵かずさマジックを8対0、準々決勝でJR東日本東北を7対2で破り、準決勝へ。打線は好調で、3試合で27安打とセガサミーらしい打ち勝つ野球を披露しました。投手陣はエース草海光貴を中心に盤石。悲願の決勝進出に向け、対するのはホンダ熊本でした。
迎えた準決勝当日。メンバー表を交換すると、相手の先発はまさかの片山雄貴投手。抑え投手を先発させるホンダ熊本の奇策でした。相手の渡辺正健監督が試合後に語ったところによると、「フォアボールを出すとセガサミーの強力打線の餌食になる。だから信頼できる片山を先発させた」とのこと。まったく片山先発は想定していなかっただけに、まんまと向こうの術中にはまった格好でした。
毎回ランナーを出しながらもホームが遠く、1点が入らない。こちらの先発・草海は5回に内野ゴロで1点を失ったものの、重要な試合をよく投げてくれました。だからこそ、先取点を取れずに、相手を調子に乗せてしまったことが悔やまれます。
試合は9回表2アウトから中川智裕がまさかの同点ホームランを放ち、土壇場で追いつきました。そして9回裏、陶久亮太をマウンドに送ったら、その陶久もまさかまさかの初球をスタンドに運ばれ、サヨナラ負け。2年連続でホンダグループに決勝進出を阻まれました。
中川は予選では不調でしたが、本戦になって調子が出て、劇的な同点ホームランまで放ってくれました。初球、ど真ん中にきたボールをしっかりと捉えた、見事な集中力でした。まあ、相手もその裏、陶久のフォークボールが浮いたところを見逃さずにガツーン。陶久には2年連続で悔しい思いをさせてしまい、本当に監督として申し訳ないという気持ちでいっぱいです。
先制点をとれなかったり、9回に同点になった後、ランナーを出しながら勝ち越せなかった。今大会、セガサミーは打撃好調で、打線に勢いがありました。でも、それだけでは準決勝、ましてや決勝では勝てないということを改めて知りました。
新聞的には「ベスト4の壁は高い」というところでしょうが、当事者の我々としては壁というよりも目の前の一試合ですから、そこを突破するのに足りないものを再確認できたし、また次回に向け、強くなっていくだけです。
私がセガサミーの監督になって2年連続で都市対抗ベスト4。日本選手権もベスト8で、いいチームになってきています。全国ランキングでいえば5位になるのかな(笑)。でも、優勝させられなかったのは私の責任です。選手たちに決勝の舞台を踏ませたかったし、そして会社に黒獅子旗を持って帰りたかった。
決勝に進出していたら舘和弥を先発させる予定だったんですよ。それで後は継投でつないでいくという作戦もできていたんですが……。まあ、たらればを言っても仕方ありません。また次、頑張ります。
今大会で優勝したのは同じ東京都の東京ガスで、第一代表をとった勢いのまま決勝まで強さを発揮しましたね。東京勢は3チームがベスト4に入り、地区としてのレベルの高さを示しました。
優勝した東京ガスは次回大会は優先出場なので、東京の出場枠4はセガサミー、NTT東日本、JR東日本、明治安田生命、鷺宮製作所、JPアセット証券で争います。少しだけ門戸が広がりましたが、それでも激戦であることに変わりはありません。また気を引き締めて「頂戦」です。
大一番の都市対抗を終え、年明けに練習始めで選手と顔を合わせたとき、彼らの目の色が違っていることに気づきました。常勝軍団とはまだ言いませんけど(笑)、勝っているチームの雰囲気になってきています。
2月10日から宮崎キャンプを張り、今年は3月のスポニチ大会から始動します。というのも新人が5人入ってくるのですが、彼らが4月は研修で試合に参加できないため、前倒しして公式戦スタートです。スポニチ大会、企業春季大会、JABA大会。そして5月末からは都市対抗予選が始まります。夏の風物詩として7月開催に戻る都市対抗出場が絶対の目標です。
新人選手と既存の選手がどう融合し、そしてどんなチームに変化していくのか。監督の私としても楽しみにしています。
外野は本間諒、市根井隆成が勇退し、そこに誰がフィットしてくるのか。内野では中川や北川智也がプロを目指して仕切り直すシーズンにもなります。
あと昨年末の社会人表彰式で中川と捕手の須田凌平が社会人ベストナインに選出されました。社会人ベストナインに2名選出されるのはチーム初のことだとか。須田は都市対抗だけでなく、レギュラー捕手として頑張っていたので、この受賞は監督としてもとても嬉しく思います。本人たちは自信になり、他の選手の励みにもなることでしょう。
さて、NPBの話題にも触れておきましょう。四国アイランドリーグ香川時代の教え子・又吉克樹が中日からFA権を行使し、福岡ソフトバンクに移籍しました。FA前に本人から連絡があり、いろいろと話しをしました。「どうしようか考えています」という又吉に対し、私個人としてはPL学園の後輩・立浪和義監督の下、中日でプレーしてほしかった。でも又吉の年齢を考えれば、プロでやれる年数は少なくなっています。だから「どう決断するにしても悔いのないようにな」と声をかけました。
あれだけの評価を受けての移籍ですから、胸を張って福岡に行ってもらいたい。又吉はロングリリーフもいけるので、藤本博史監督がどう使うのか楽しみです。
独立リーグ出身者として初のFA権行使ですから、後輩たちの励みになることでしょう。ただ、独立リーグができて10数年の歴史の中で行使したのが又吉だけというのが寂しい。取得者も三輪正義(香川-東京ヤクルト)、角中勝也(高知-千葉ロッテ)、そして又吉の3人だけですからね。独立出身でもFA権を獲得するような活躍する選手がもっと出てきてもらいたいものです。
最後に改めて言わせてもらえば、都市対抗というのは本当に素晴らしい大会でした。特に今年は応援団が復活したこともあり、セガサミーのウルトラセブン、獣王、そしてサクラ大戦などの名物応援歌がドームに響き渡りました。私もベンチで采配をふるいながら、「すごいもんだな」と楽しませてもらいましたよ。それだけに尚更、決勝に行きたかったという思いがあります。
今季は夏のドームに何度もサクラ大戦が響き渡るような活躍をして、会社の皆さんの期待に応えたいと思っています。選手たちは早く試合がしたくてウズウズしています。今季も応援をよろしくお願いします。
<このコーナーは毎月1日更新です>